令和6年度(第38期)事業計画書


公益財団法人一ツ橋綜合財団の、令和6年度(第38期)事業計画は、定款に基づいた次の4つの公益目的事業を柱として18件を予定する。

公益目的事業1
文化の創造に関わる創作活動(詩・短歌・俳句)を行っている個人に対する顕彰
    
 ○「詩歌文学館賞」の主催 ―1件
公益目的事業2
文化の創造に関わる創作活動を行っている個人を顕彰すること、及び顕彰する団体への助成、後援
    
 ○文学賞など顕彰事業の実施、後援 ―5件
公益目的事業3
科学及び文化の普及発展に関する講演会等の実施、及び研究活動を行っている団体に対する助成、後援
    
 ○文化講演会の実施、学術研究の助成 ―7件
公益目的事業4
社会生活の充実及び国際交流に関わる福祉活動、実践活動を行っている団体に対する助成
    
 ○社会福祉事業の助成 ― 5件
公1 「詩歌文学館賞」の主催
岩手県北上市の日本現代詩歌文学館

岩手県北上市「詩歌の森公園」の一角に建つ日本現代詩歌文学館

第39回詩歌文学館賞選考会は令和6年3月6日に東京・一ツ橋の如水会館で開催。詩、短歌、俳句3部門の受賞作を決定した。その贈賞式を5月25日に岩手県北上市の日本現代詩歌文学館で行う。第40回の選考会は令和7年3月5日を予定している。

(賞の概要―要項より)
この賞は、現代詩歌を総合的、専門的に収集保存、また諸研究に資するための日本現代詩歌文学館創設を記念して、初代名誉館長井上靖の創意によって設けられた。本賞は現代詩歌文学の振興に寄与することを目的とする(賞の概要―要項より)

公2 文学賞など顕彰事業の実施、後援
2-1 第9回「渡辺淳一文学賞」の共催

(賞の概要―要項より)
この賞は「豊富で多彩な作品世界を多岐にわたり生み出した渡辺淳一氏の功績をたたえ、純文学・大衆文学の枠を超えた、人間心理に深く迫る豊潤な物語性を持った小説作品を顕彰する」ため創設された。
選考会は3月29日。贈賞式は5月17日に東京會舘にて開催。

2-2 第37回「柴田錬三郎賞」の共催

(賞の概要―要項より)
この賞は、「傑作『眠狂四郎無頼控』をはじめ、不羈の想像力を駆使した数々の作品でひろく大衆の心をうち、ロマンの新しい地平を切り拓いた柴田錬三郎氏の業績を称えて、氏の名を冠した賞を設け、現代小説、時代小説を問わず、真に広汎な読者を魅了しうる作家と作品を顕彰する」ために創設された。
選考会は10月4日、贈賞式は11月15日に帝国ホテルにて開催。

2-3 第22回「開高健ノンフィクション賞」の共催

(賞の概要―募集要項より)
この賞は、「行動する作家として、旺盛な探究心と人間洞察の結晶を作品に昇華し続けた開高健氏の功績を称えるために政治、経済、科学、歴史、スポーツなど、あらゆるジャンルにわたる作品を募り、21世紀にふさわしいノンフィクションを推賞する」ために創設。
より広く応募を募るために今回からオンラインでの応募受付も開始する。選考会は7月13日、贈賞式は11月15日。ともに帝国ホテルにて開催する。

 ※2-1、2、3は集英社と共催。

2-4 第30回「劇作家協会新人戯曲賞」の後援

この賞は、日本劇作家協会が、演劇界の未来を担う新しい才能の発掘のために設けたもので、新作戯曲を公募して、劇作家による審査のうえ、優秀作品を顕彰する。この賞の運営に対して後援する。

2-5 第69回「岸田國士戯曲賞」の後援

劇作家・岸田國士の遺志を顕彰すべく、白水社が主催する戯曲賞。演劇界に新たなる風を吹き込む新人劇作家の奨励と育成が目的。1955年に新劇戯曲賞として設置、79年に岸田國士戯曲賞と改称され現在に至る。新人劇作家の登竜門とされる。選考対象は、前年1年間(1~12月)に執筆、発表、上演(オンラインも可)された作品とする。この賞の運営に対して後援する。


公3 文化講演会の実施、学術研究の助成
3-1 世界の音楽に親しむ「音楽でめぐる世界タイムトラベル」

令和5年秋に刊行されて好評の『小学館の図鑑NEO音楽』にちなみ、世界各地の音楽を「体験」できるコンサートを、8月3日(土)サントリーホール・ブルーローズホール(東京都港区)にて開催。親子180組・合計360人を招待する。アラブ、ヨーロッパ、インド、日本、ラテンアメリカ、など世界5地域の音楽の演奏者10~15名による世界の音楽の生の演奏を間近で鑑賞できる。また、楽器に触れられるコーナーなども設け、質問コーナーやクイズなどを通じて、知識も得られる機会をつくる。会場でのリアル参加に加え、オンライン開催や、映像のアーカイブ化(後日)も予定している。

3-2 「ミッケ」シリーズ作者、ウォルター・ウィックを囲んで

世界的に人気を博す、かくれんぼ絵本の『ミッケ!』は、1992年の日本刊行以来シリーズ計50冊、累計988万部を誇る大ヒット作。その作者で写真家の、ウォルター・ウィック氏が来日して登壇。同シリーズ翻訳者の糸井重里氏も登壇(予定)し、子どもたちが夢中になる本づくりのアイディアの源泉や、撮影方法、制作方法などをトーク形式で紹介する。開催日は令和6年11月4日。時事通信ホール(東京都中央区)に220人を招待して行う。当日の模様は後日オンラインにて公開予定。

3-3 姜尚中×三浦徹×村田雄二郎鼎談講演会
「陸の世界」と「海の世界」で広がる交流/17世紀のグローバリゼーション

令和6年4月26日発売にて最終巻を迎え、全12巻で完結する「アジア人物史」(集英社)。なかでも特にダイナミックなうねりをみせた16〜17世紀のアジアに注目し、姜尚中(総監修者・政治学者)×三浦徹(お茶の水女子大名誉教授)×村田雄二郎(同志社大学教授)の3氏鼎談で、シリーズ完結記念講演会を実施。近代アジアにいくつもの「帝国」が出現したこの時代について、特筆すべき人物を紹介しながら話を進める。6月にベルサール九段(予定)にて150人を招いて行う。イベントは動画収録し、後日オンラインで公開予定。

3-4 氷室冴子『銀の海 金の大地』復刊の今、「少女小説と私」を語る! 

女性向けライトノベル・レーベルとして人気シリーズを輩出してきた集英社オレンジ文庫が令和7年1月に創刊10周年を迎えるのを記念して、同文庫では往時の大人気作家、氷室冴子の長編『銀の海 金の大地』を復刊する。そのタイミングに合わせ、「少女小説とオレンジ文庫と私」をテーマに、11月(予定)に都内ホールに150名を招待してお茶会形式のトークショーを開催。人気作家・我鳥彩子氏、谷瑞恵氏、松田志乃ぶ氏の3名と、ライターの嵯峨景子氏、女優の明日海りお氏の5名が登壇。創作において影響を受けた過去の少女小説作品や作家について語りあう。後日の動画配信も検討中。


(3-1~3-2は小学館と、3-3、3-4は集英社と共催。いずれも参加費無料。新聞や雑誌、ホームページ、SNS等で講演会実施を告知、抽選の場合は応募申込後、抽選のうえ、当選者に招待状を送る。)


3-5 公益財団法人・日本学術協力財団の助成

日本学術協力財団は、「学術」の向上発展を図り学術的風土を醸成させるために国民生活に関連する諸問題について研究する日本学術会議の活動に全面協力する形で、「学術会議叢書」の制作を中心に事業を行っている。同財団は、日本学術会議が開く、公開講演会、シンポジウムを後援。その成果を多くの人に周知するため刊行しているのが「学術会議叢書」である。令和6年度は『生殖補助医療のこれから(仮題)』を刊行予定。生殖補助医療をめぐる法律の問題は、ドナーによる人工授精などが普及し始めた1950年代以来問われ続けてきた。個人にとって生命や親子関係に関わる重要な問題であると同時に、人類の歴史と未来に深く関わる問題でもある。本来、アカデミアのみに委ねられるべき問題ではないが、本書の刊行により、広く一般の方々に、その検討の基礎となる正確な学問的情報を伝えたいと考える。昨年8月26日に開催された、日本学術会議法学委員会生殖補助医療と法分科会主催のシンポジウム「生殖補助医療のこれから―社会の合意に至るために考えること―」を基礎としてまとめる。叢書は全国約1500の国公立図書館等に寄贈予定。この事業に助成する。

3-6 東洋文化研究会の活動を助成

東洋文化研究会は、作家の岩下寿之氏を会長とする民間任意団体で、現在会員数330名。1988年3月に設立。中国、台湾、モンゴルなどアジア全体を研究対象に、著作、フィールドワークなどの活動を行っている。令和6年度の事業では、国際情勢の緊張度が高まりを見せている中、バランスのとれた国際情報の発信を目指し、講演会などにおける研究テーマを、中国以外のアジア各国にも広げてグローバル化を図る。中でも人口世界一となり、経済交流における日本との関わりが深まっているインドをテーマに講演会を予定。インドの歴史や文化、イギリスの植民地経営の特色と歴史、そして仏教の聖地としてのインドと日本との文化的な交流など多角的に掘り下げる。この活動を支援する。

3-7 一般社団法人K-BOOK振興会「日本語で読みたい韓国の本翻訳コンクール」への助成

本(K-BOOK・韓国の書籍)を通じて日韓の文化交流の拡充をすすめるK-BOOK振興会。2011年に設立され、20年に一般社団法人となった。小説家の中沢けい氏が代表理事を務める。出版関係者向けに「日本語で読みたい韓国の本」、読者向けに「日本語で読める韓国の本」の情報をホームぺージやSNSで発信。さらに優秀な新人翻訳家の発掘を行う「日本語で読みたい韓国の本翻訳コンクール」(令和6年度の第7回は2~4月に募集、5月に選考結果発表、11月に受賞作刊行予定)。また、K-BOOKを愛する読者、書店、出版社、韓国作家などが集い、イベントなども通じて交流する「K―BOOKフェスティバル」を開催している。これらの事業のうち、第7回「日本語で読みたい韓国の本翻訳コンクール」に助成する。


公4 社会福祉事業の助成
4-1 社会福祉法人・全国手話研修センターの支援

ろうあ者への手話指導、手話通訳者養成や手話のできる人材の確保を目的とした全国手話研修センター。今年度は全国手話検定試験事業において、5回目を迎えるインターネット試験は受験者1500名を目指して周知に務め、一般試験、ZOOM面接を取り入れた団体試験と合わせて年間受験者10500名を目標に実施する。また、Web視聴ができる在宅学習教材の「Let’s手話 Web学習5級編、および4級編」の広報宣伝を強化し、団体および個人での利用者拡大を目指し、同3級、2級教材の制作準備も進める。また手話資料室では「手話綜合資料室ウェブサイト」の公開や、ろう教育、ろう運動、聴覚障害福祉当に関する文献・映像・写真などの収集、提供資料のデータベース化(今年度目標1万点)および著作権・肖像権等の処理強化、などに取り組み、年間閲覧アクセス数4万回を目指す。この活動に助成する。

4-2 社会福祉法人・日本ライトハウスの支援

全国の視覚障害者等に対する情報提供サービス事業の充実・発展に取り組む日本ライトハウス情報文化センター。令和6年度は、視覚障害者等の人々も読める電子書籍の出版に向け、「アクセシビリティと著作権保護を両立させながら、健常者と同じコンテンツを提供するインクルーシブな出版」について研究する事業を、日本デイジーコンソーシアムと連携して行う。具体的には、これまで培ってきたアクセシブル書籍制作ノウハウを元に、EPUB(端末を選ばない電子書籍のファイル形式)のフォーマットで作成された電子書籍をアクセシブル化するマニュアルを作成。また「買う権利」とともに「借りる権利」も含めて広めるべく、視覚障害者と出版社がWinWinな関係になる仕組みづくりを目指す。従来からの事業である、マルチメディアデイジー(音声と共に文字や画像が表示される)教科書や図書やテキストデイジー図書(文字の拡大や合成音声での読み上げが可能な電子書籍)、シネマ・デイジー(映画やDVD本編の音声の中に、音として伝わらない人物や風景の様子を解説する副音声を一緒に編集したもの)などの製作・提供、バリアフリー映画会、児童向け点字雑誌「アミ・ドゥ・ブライユ」の発行と普及、点字・音訳・電子書籍等の各種講習会・研修会の開催、指導事業などを行う。これらの活動へ助成する。

4-3 社会福祉法人・日本点字図書館の支援

録音図書(音声デイジー=文字表示がなく音声だけの図書)の「一ツ橋文庫」では、令和6年度も定評ある作家の新作などを中心に、10タイトルを制作・提供。テキストデイジー図書(文字の拡大や合成音声での読み上げが可能な電子書籍)では200タイトル以上の制作・提供を目標にしている。また、インターネットを使用し自宅で録音図書を制作する「びぶりお工房」も続けて運用する。さらに前年度からの継続事業として今年度も、シネマ・デイジー(映画やDVD本編の音声の中に、音として伝わらない人物や風景の様子を解説する副音声を一緒に編集したもの)で「NHKスペシャル映像の世紀」(全11作品のうち残りの6作品)の製作・提供を行う。これらの事業に助成する。

4-4 認定NPO法人 日本・雲南聯誼協会の支援

日本と中国の友好を願う人々に向けて中国の教育の推進を図るため、学校建設とその後のコミュニティ形成を支援する協会。「25の小さな夢基金」では、雲南省昆明市女子中学(日本の高等学校に相当)の生徒に対して、今年度も約460名への就学サポートを行い、同中学校の卒業式実施にも支援する。また、令和7年に迎える設立25周年記念事業のため、記念式典および記念誌、映像の準備を継続して行う。このほか、協会の活動および雲南の広報のためイベントを開催する。これらの活動に助成する。

4-5 公益社団法人・日本図書館協会への助成

協会内の図書館災害対策委員会では、災害等で被災した図書館の調査を行い、必要な場合には支援を行う。令和6年元日の能登半島地震に対しては、復旧・復興のため年初より稼働を続け、多岐にわたる支援を続けてきた。今年度は継続して、被災図書館の支援策や災害時に図書館が果たす役割についての学習会の実施、図書館の災害対策などについての研修会への講師派遣、図書館における災害被害の情報共有などの災害対策事業を行う。また、寄付金の募集を通じ、物心両面での支援を行う。そのための情報収集や連絡体制の整備など、図書館支援を総合的に構築する体制について調査研究も進める。この活動に助成する。


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