予測を立てるのは常に難しい。わたしも、予測が数年後に的はずれで終わってしまったことが何度もある。
だが、数年前に立てた予測で、1つ当たりそうなものがある。2005年と2006年のコラムで、わたしは間もなく登場する(当時その予定だった)MicrosoftのVistaに消費者に不利な機能が盛り込まれ、そのせいで一部の人はVistaにアップグレードしたことを後悔するだろうと予測した。
この機能はMicrosoftの「Trusted Computing」構想の下で作られたもので、「PVP-OPM(Protected Video Path-Output Protection Management)」「COPP(Certified Output Protection Protocol)」という名称だ。これら「機能」の主な目的の1つは、ビデオDRM(デジタル権利管理)を、PCハードウェアからPCに接続したディスプレイにまで適用することだ。
わたしは以前のコラムで、VistaのPVP-OPMの用途について、ビデオコンテンツの所有者が、ユーザーが合法的に購入したコンテンツを新しいDRMプロトコルを導入していないディスプレイに送信した場合に、コンテンツの画質を落とす、あるいは視聴を防止するのに使うだろうと予測した。一部からは、わたしがFUD(恐怖・不安・疑念)を作り出しているという反応があった。これらのシステムが、違法行為をしない善良な顧客に不利益をもたらすために使われることは決してないという声もあった。
Vistaが登場してから1年経った今、Vistaにアップグレードしてたくさんの合法ビデオコンテンツを買ったけれど、それを視聴できなかったとか、低画質で見なければならなかったとか、合法的に購入したコンテンツを見る権利を失う危険を冒すことになったという話がますます多くのユーザーから聞こえてくるようになっている。
ある読者は最近、VistaでNetflixのWatch Now機能とAmazonの映画ダウンロードサービス「Unbox」を使っていたときに起きた問題についてブログで詳しく説明している。このブロガーは、高品質の機器をたくさん買い、最新の合法ビデオサービスを利用するという、IT企業にとっても映画会社にとっても理想の消費者のようだ。
だがそんな人が、DRMとそれを組み込んだ企業が――実質的に善良な顧客を痛い目に遭わせるために――作っている壁にぶつかった。このブロガーが購入した高画質のディスプレイが、映画会社が推進するDRMを導入していなかったため、NetflixがWatch Nowコンテンツを再生しなかったのだ。もっとひどいのは、Netflixが提案した解決策が、AmazonのUnboxから合法的にダウンロードした映画のライセンスを削除する危険があったことだ。
こっけいなことに、もしもこのブロガーがWindows XPを使っていたら、何の問題も起きなかっただろう(Vistaにアップグレードしない理由がまた1つ)。このブロガーの体験は例外的なものではなく、合法的にコンテンツを購入しようとしてこうした問題に遭遇した人の例は増えている。彼らはたぶん、BitTorrentから違法コンテンツをダウンロードすればよかったと思っているだろう。
では、このクールなVistaの新機能は一体何を遂行しているのだろうか? オンライン映画サービスから購入した映画は合法的に自分のものだと思っている人は、もう一度考えてみてほしい。合法的に購入したPCハード・ソフトを自分でコントロールできると思っている人は、考え直した方がいい。
わたしの予想が外れていたらよかったのだが、結果は明白なようだ。Trusted Computingに関して言えば、信頼されていないのは、皆さん消費者だ。
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