――日本のSNSは、人生に必要なインフラになっていない、という意味でしょうか。
なってないんじゃないんですか? 職を探すとか……。人生のインフラ、学習、生計を立てる、キャリアを構築する、みたいな。
――上に上がるためのインフラにはなっていない、と。
上に上がるため、自分を高めていくため、という流れがあるかというと、部分的にはあるかもしれないけれど、比較論で言えば英語圏と日本語圏とずいぶん違うと思いますけどね。
――英語圏のそういったあり方が方が好き、という、好き嫌いの問題だということでしょうか。どっちが優劣、といった意識はあるんでしょうか。
好きだというのはあるよ。人間だからね。ただ、客観的に見て違うよね。ここはどうだろう。そこについて「事実認識が間違っている」という論は立たないんじゃないかな。
――その「違い」に対して、日本のネット空間にはある種、がっかりしたと。
アメリカにだってダメなところはいっぱいあるけれど。
ネットはすごくニュートラルなものでしょ。道具だから。上から下まで正規分布みたいになるよね、普通。ニュートラルなものって。
ニュートラルなものって相対化されるじゃない。いいことから悪いことまで全部出てきて、悪いところは相対化されるじゃない。いいとこもあれば悪いところもあるよね。
日本のネット空間もそうなんだけど。その比率がずいぶん違う感じがするなあ。
――日本のネット空間の「悪いところ」って例えばどういうところでしょう。
(15秒間沈黙)
――はてブコメントの問題(Twitterで、「はてな取締役であるという立場を離れて言う。はてぶのコメントには、バカなものが本当に多すぎる」などと書き、炎上した件)とか?
ああ、あれ? うーん、そうですねぇ……。
こういう話はしにくいんですよ。何でしにくいかというとね、僕はいま、個人としてインタビューを受けているけれど、はてブコメントについて言うとね、「僕は日本語圏ネット空間について発言することを許されていないんだな」と思った。
僕はあのとき「はてなの取締役であることを離れて言う」と言ったんだよね。それで自分のブクマコメントの非常に限定されたことについて、Twitterでひとことつぶやいたというか、そういうことをしたわけだよね。はてブコメント事件、というのは。事件でも何でもない話で。
だけどやっぱり、日本語圏のネット空間において、ユーザーが100万人とかいるはてなの取締役であると。そうすると、日本語圏のネット空間について、何かネガティブなことを語るということは、「おまえは自分の利用者を批判するのか」というコメントがあったわけ。
それについてコメントすることも、僕はやめようと思ったんだよね。新聞なんかにも取材を受けたけど。「僕がはてなの取締役を辞めたらその質問に答えます」と。
僕自身がはてなの取締役でいる限り、「(ネットユーザーに対して)お前たち、こうしろよ」とか「こういうこと言ってるやつはよくない」と言うことは許されないんだなと思ったんです。
識者の人からすれば「はてなの制度設計がよくないからそういう発言があるんだ」と。そんなこと言う前に直せというふうに言うよね。
だから、分かりました、と。僕も近藤(社長)たちと一緒に努力してますよ。一般的に僕の考えというのは言えないんだなということを、すごく思ったんですよ。
――言えないんでしょうか。どう批判されても、言えばいいのでは。
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