米Googleのソーシャルチャットサービス「Google Buzz」は2011年2月9日で始動から1年を迎えたが、よほど詳しく同社の動きを追っているのでもない限り、ほとんどのユーザーはそのことを知らずにいるだろう。
BuzzはいっときGoogleのソーシャルソフトウェア戦略の最前線に置かれていたが、「一連のWebサービスに共通するソーシャル機能を追加する」という難しい取り組みが進められる中、どうやら後回しにされているようだ。
Google Buzzは昨年2月9日、ステータス更新、リンク、動画、写真などのコンテンツをGmailの連絡先に送信できる期待のソーシャルサービスとして始動した。
だがサービス始動から24時間も経たないうちに、Buzzを利用すると自分がフォローしている相手や自分をフォローしている相手のメールやチャットの連絡先がGoogleプロフィールページで公開されることに気付いたユーザーから、批判の声が上がり始めた。
これを受けてGoogleはこのサービスを自動フォロー方式から自動サジェスト方式に変更したが、同社は結局、このプライバシー侵害に関連する集団訴訟で850万ドルの和解金を支払うことになった。
プライバシー問題を除けば、Buzzは初めは成功していた。始動から最初の1週間で、数千万人のGmailユーザーが同サービスを試し、900万件以上の投稿やコメントが行われ、多くのユーザーがBuzzの広まりやすい性質に注目してFacebookやTwitterと比較した。そして同社はその後数カ月の間、Buzzの使い勝手の向上に精力的に取り組んだ。
それから1年が経った今、Buzzはまだ死んでこそいないが、終局に向かいつつあるサービスの悲しげな匂いを漂わせている。Google Buzzチームのプロフィールを追跡すれば、昨年12月によりリッチな写真のサポートがBuzz APIに追加されたことが確認できる。
だがBuzzに関するニュースが最後に大きく発表されたのは昨年9月のことだ。その際、BuzzにはPicasa Web Albumsを共有したり、特定のソースをミュートにしたり、各種のモバイル端末から投稿やコメントを編集したりといった機能が追加された。
eWEEK編集部はGoogleに連絡を取り、関心の低さが原因でBuzzが棚上げにされているのかどうかをBuzzチームのメンバーに確認したいと考えた。だがBuzzチームのメンバーへの取り次ぎは断られ、広報担当者には「Buzzは全くの健在で、世界に何百万人ものユーザーがいる」と説明された。
そこで、「始動直後から夏までの間は新機能が幾つも発表されたが、その後改良はすっかりペースダウンしたようだ」と指摘したところ、広報担当者は次のように返答した。
「ユーザーに当社の複数のサービスにわたって情報のやり取りや共有を行ってもらえるよう、われわれは目下、機能の追加を続けている。そうした新機能を開発するにあたっては、Google Buzzも含め、当社の既存製品とうまく統合できることを重視している」
これは、目下Googleで何か大きなソーシャル機能の改造計画が進行中であることを認める発言だ。そして、同社がこれまでソーシャルゲーム開発大手Zyngaへの出資のほか、SlideやAngstro、SocialDeck、Jamboolといったソーシャル関連各社の買収に数億ドルを投じてきたことを考えると、これは安心させられる発言でもある。
Google SearchからGoogle News、そしてBuzz自身も含め、サイロ化されたGoogleの何十種類ものWebサービスに橋をかけるというのは、技術的にかなり難しい作業となるはずだ。Buzzなどは、まるでソーシャルソフトウェアの亡霊のようにGmailの上をさまよっている。
非常に遠回しであいまいなやり方ではあるが、わたしが今ここで話題にしているのは、Googleが計画しているソーシャルレイヤー「Google +1」のことだ。
Googleのエリック・シュミットCEOは同社がソーシャルレイヤーを通じたソーシャル戦略の見直しを進めていることをほのめかしているが、その取り組みにおいて、Buzzは――もし少しでもあるとすれば――どのような役割を果たすことになるのだろうか。その答えはまだ定かではない。ただしAltimter Groupのアナリスト、ジェレミー・オーヤン氏には考えがあるようだ。
同氏によると、ZyngaなどFacebookの人気のパートナー各社がFacebookから離れつつあり、またTwitterのデータの再利用や手直しが可能になっていることは、Googleにとって何か新しい興味深い使用事例を構築するためのチャンスだという。
「Googleは既存の戦略にソーシャルメディアをどのように統合するかについて、まだ妙案を思い付かずにいる。同社は一連の革新的な試みを実施し、幾つか買収も行っているが、まだホームランと言えるようなヒットは飛ばせずにいる」と同氏は言う。
どうぞ引き続きご注目いただきたい。確かにGoogle Buzzは静かかもしれないが、Googleではまだブンブンと元気な音が鳴り響いている。
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