7月29日の「Windows 10」一般公開を控え、ここ1週間はWindows OSにおいて完成形とみなされる「RTM」がいつ発表されるのかに注目が集まっていた。RTMとは「Release To Manufacturing」の略称で、製造工程向けリリースや量産出荷版などと呼ばれるものだ。MicrosoftがOSソフトウェアをOEMへと提供し、最終製品として出荷される準備が整ったことを意味する。
「Gold Master」などの名称でも呼ばれることのあるRTMだが、RTMへの到達はOSとして出荷できるレベルまで完成したということだ。RTMを提供されたOEMは、実際に自社製品へ導入して検証を行い、それが済んだらプリインストールPC製品として量産出荷、後は発売日を待つのみといった流れになる。
Windows 10以前のWindowsであれば、RTMの到達から搭載PCの発売日まではだいたい3カ月程度の猶予があったが、Windows 10ではこの期間が半月程度まで短縮されており、PCメーカーらにとっては非常に慌ただしいスケジュールとなっている。
そのため、動作検証からPCへのソフトウェア導入、大量出荷まで2週間程度では非常に厳しく、大手メーカーよりは中小規模のメーカーのほうがWindows 10プリインストールPCの早期出荷に対応しやすいというのが大方の予測だった。
しかし、Acer、Dell、Hewlett-Packard(HP)、Lenovoなど、大手メーカーらも出荷数やモデルの調整でこの突貫スケジュールでのプリインストールモデル出荷が可能との見通しを示しており、7月29日の段階である程度“タマ”がそろう見込みとなった。
気になるのは、Microsoftからは現時点で「RTMに到達した」という公式情報が出ていないことだ。Windows公式ブログ(Blogging Windows)にて、同社OSグループでエンジニアリンググループマネージャーを務めるガブリエル・オウル氏が、RTMではないかと言われるWindows 10最新プレビュー版「Windows 10 Insider Preview Build 10240」の提供開始を報告しているが、そこに「RTM」という言葉は見当たらない。
RTMに到達しなければ、PCメーカー各社はプリインストールモデルの出荷作業や、既存のWindows 8.1以前の自社製マシンを購入したユーザーに対するアップグレードサポートが行えない。しかし、米The Vergeや米ZDNetといった海外メディアが関係者の話として伝えるところによれば、このBuild 10240こそが「実質的なRTM」であり、メーカー各社はこれをベースに出荷作業を開始しているようだ。
実際、Windows 10 Insider PreviewのBuild 10240では、従来までデスクトップ右下の壁紙に表示されていたビルド番号や「評価コピー」の“透かし”が消えており、ソフトウェアライセンス条項から「プレリリース」の文字が省かれるなど、直前に配信されていたBuild 10166と比べても一線を画している。
さらにWindows 10 Insider Previewの旧ビルドからBuild 10240にアップグレードを行うと、そのアップデータの表記は筆者の環境で「TH1 Professional 10240」とあった。「TH1」はWindows 10の開発コード名である「Threshold」の「Update 1」の略称とみられ、以後はBuild 10240をベースに当面の間マイナーアップデートを繰り返していく形態になると予想される。
ここ2週間はBuild 10158、10159、10162、10166と小刻みに数字をカウントアップして提供が行われてきたWindows 10 Insider Previewだが、RTM相当と言われるBuild 10240では、一気にビルド番号を74も上げてきた。
Microsoftは従来より、RTMのリリースに伴ってOSのビルド番号を“年号”や“キリ番”など、見た目のよい数字へと切り上げてくる傾向があったが、Windows 10の「10240」は一見するとそれとは無縁の数字の羅列にも見える。
しかし、上位4桁の「1024」という数字は2の10乗倍であり、デジタル的に意味のある数字だ。これを10倍した「10240」という数字も「非常に切りがいい」のであり、「Build 10240がRTMなのだ」ということを示す、もう1つの理由付けとなっている。
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