こんにちは、Wantedlyの梅内です。2014年も、楽しく働くための環境作りに取り組んでいる企業を訪問して、「より良い働き方(=ココロオドル働き方)」に対する気付きをお届けできればと思います。第1回ではオーダーメイドのウェディングを提供する「crazy wedding」運営の株式会社CRAZYを訪問しました。

第2回は株式会社ベアーズへ!

Wantedlyでは週に1回、家事代行サービス「ベアーズ」にオフィスの掃除をお願いしています。Wantedlyを担当していただいている有山さんは、オフィスをぴかぴかにしてくれるだけではなく、メンバーと会話をしつつ、心のケアをしながら仕事をしてくださいます。

「おはようございます。今日は寒いですよね、風邪引かないようにしてくださいね!」

このコミュニケーションで、"お掃除をしてくれる方"から、"有山さん"としてパーソナルな関係を築けました。そして有山さんは、私から見てココロオドル働きをしていると感じました。「家事代行サービス」と名のつくものはさまざまあっても、何がちがいとして表れてくるのでしょうか。有山さんとの出会いもあり、連載2回目はベアーズを訪問することにしました。

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家事代行以外でも、ハウスクリーニング、ベビーシッターなどのサービスを提供しているベアーズには、社員への"ありがとうの気持ち"を大切にする制度がいくつもありました。今回はいくつかの制度のうち、「リボン賞」と「愛と感謝の祭典」を中心に、専務取締役の高橋ゆきさんにお話を伺いました。

心が美しくないと昇進はできない

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株式会社ベアーズ 専務取締役 高橋ゆきさん

── Wantedlyでもベアーズを利用しており、有山さんにご担当いただいているのですが、現場で働かれている有山さんに「ココロオドル」を感じたんです。ベアーズではコーポレートオフィスと現場、合わせて4500人近くの方がいらっしゃるそうですが、何か特別な制度などがあるのですか?

高橋:梅内さんは、上司に「あなたの心は美しいですか?」と問われたことはありますか。私は朝礼で社員に対して「あなたは何%、心が美しいですか?」と聞くことがよくあります。私が言う「心が美しい」とは、優しくて、キラキラしていて、愛と笑顔で満ち溢れている...ことだけではありません。ベアーズの「心が美しい」とは、透き通り、本質を見抜く、"研ぎ澄まされた鋭い美しさ"も持っているという意味です。

特に上司という立場にある方は、この"研ぎ澄まされた鋭い美しさ"を持っていないと、間違ったリーダーシップで部下をマネジメントしてしまったり、誤った判断をしてしまったり、本質的な理由や目的を見抜くことができなくなってしまうため、とても必要です。

ベアーズでは、どんなに数値目標を達成して、どんなに売り上げや利益に貢献をしている社員でも心が美しくないと昇進はできません。心が美しくなければ、感謝がわからない人間になり、いたわりの気持ちなども芽生えないからです。

── 心の美しさを保つにはどうしたらいいんですか?

高橋:日本人は恵まれている環境にいる方が多いせいか、感謝の気持ちを忘れがちだったり、言葉にして伝えられなかったことが誰しもあると思います。気忙しさから「ありがとう」と言うことを忘れてしまったりね。たとえば、私が帰社しても下を向いて「お疲れ様」と小さく言うのもそうです。

心の美しさを保つには、小さなことに感動できる心を養うことです。1日1個、自分が嬉しかったことや感動したことを書き留めておくようにするといいですよ。

4500人で「フィロソフィのバトン」をつなぐために大切なこと

── コーポレートスタッフと現場でお掃除をしている方々、合わせてかなりの数の従業員がいらっしゃいます。このような大人数に対して、どのように自分たちの思いや理念、「ベアーズとしてのフィロソフィ」を提唱していくのですか?

高橋:ベアーズでは、現場でお掃除をされている方々を「ベアーズレディ」と呼んでいます。フィロソフィを提唱するには、コーポレートスタッフとベアーズレディに同じことを、ブレずに、諦めずに伝え続けることだけだと思うんです。ずっと同じことを伝え続けるのは、機械じゃないので、難しい。でも、お経を唱えるように、毎日同じことを伝えるのが習慣になると、フィロソフィが少しずつ確実に、コーポレートスタッフとベアーズレディに伝わるのだと思います。

ベアーズの代表取締役である髙橋健志は、もともとホテルマンで、そのサービスマインドがベアーズフィロソフィの基礎をつくっています。高橋はよく、「人の心の中にしかルールブックはない」と言っています。これは、「お掃除をすること」が私たちのサービスではなく、「お客様の心の中を的確に読み取り、ご要望にお応えし、癒しをお届けすること」が私たちのサービスだと定義づけているからです。そういうことを、しっかり伝えていくのが重要なのです。

── 従業員の過半数がベアーズレディさんで構成されていますが、それだけの人数に日々伝えるのは難しいのではないでしょうか?

高橋:現在、アクティブスタッフとして登録しているベアーズレディは4300名ほどいます。でも実は、入社してから1~2回しかフィロソフィについての講座は受けていないんです。直接、一人ずつにフィロソフィを伝えるより、"ベアーズらしい"という雰囲気に所属させるのが大事。フィロソフィを持ったコーポレートスタッフが発するマグマのような社内の雰囲気が、現場で働いているベアーズレディにも届いていると思うんです。

── コーポレートスタッフとベアーズレディがお仕事で直接関わる機会はありますか?

高橋:ベアーズでは、お問い合わせから契約、実務に至るまで12段階ほどのフローがあります。大まかにお伝えしますと、「お問い合わせを受けるコールセンター → 営業部 → 現場でのファーストヒアリング → ヒアリングの社内共有 → お客様のニーズとベアーズレディのマッチング → ベアーズレディのプロフィールを管理しているBL(ベアーズレディ)サポート部との共有 → 実務」と分かれています。マッチング部隊とBLサポート部は、ベアーズレディのことを理解していないと仕事が成り立ちません。また、マッチングした後に、営業部がベアーズレディと一緒にお客様のもとを訪問するので、そこでも関わり合いがあります。

ちなみに、最高齢のベアーズレディは83歳です。人生の先輩にあたる年齢の方と接する機会があるのも、この仕事の醍醐味だと思います。営業先の道のりの中で、ベアーズレディからの叱咤激励を多々いただきます。「ちゃんと野菜を食べていないとダメじゃない!」「今度、お菓子を持ってきてあげるね」など、親心になって接していただけることを、ベアーズのコーポレートスタッフは大変ありがたく思っています。

── ベアーズレディにフィロソフィのエジュケーションをしているのではなく、コーポレートスタッフがきちんと理解しているからこそ、ベアーズレディにも伝わっていく。言うなれば「4500人のフィロソフィ・リレー」ということでしょうか?

高橋:そうです。だからこそ、自分がきちんと走りきらないと、次の人にバトンを渡せないんです。前走者が仕事を怠けていたり、魂が入っていないと、バトンを渡された次の人が困ってしまいます。全てのフローにおいて、最初の走者でリレーの善し悪しが決まるのです。

"ありがとう"の気持ちを向上させる「リボン賞」

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── 感謝の気持ちを大事にされているとのことですが、それを向上させるような制度はありますか?

高橋:社内に「ありがとう」がちゃんと行き交うような「リボン賞」という制度があります。リボン賞は、ささいな感謝の気持ちを恥ずかしがらずに表現するために、毎朝の朝礼時に行われる、社風の下地作りの制度です。「つらい時に声をかけてくれてありがとう」「疲れている時にチョコをくれてありがとう」など、本当に小さな感謝の気持ちを発表するんです。発表する側もされる側も、すごく恥ずかしいのですが、感謝の気持ちをきちんと伝えて、受け取ることが大事なのだと思います。この発表は朝礼の議事録に記載されますが、始めた当初は、発表した感謝の気持ちを名刺サイズの紙に書いて発表相手に渡していました。

この紙は、発表された人だけに送られる「自分だけのありがとう」です。この「ありがとう」を名刺フォルダにまとめる社員もいたりして、仕事でつらい時や悲しい時に見ることで、支えられている社員もいると思います。

── 発表は当番制ですか?

高橋:いえ、強制的な当番制ではないです。伝えることがある人のみ発表します。深い話ではなく、本当に小さな気づき、小さな感謝で構いません。

── 素敵なお取り組みです。どのぐらい続いている賞なのでしょうか?

高橋:もう6年ぐらい続いています。他にも、ベアーズでは月に1回「マンスリーアワード」も開催して、いろんなトロフィーを渡しているのですが、リボン賞のトロフィーが一番大きいですね(笑)。リボン賞のトロフィーは、個人ではなく所属している部門に贈呈します。

今日食べたランチを忘れるぐらい、ベアーズは本当に忙しい企業です。忙しくても、他の社員のことを考えて、思いやりいたわった人、そんな人たちが多く所属している部門は、企業が苦しい時に踏ん張ってくれた縁の下の力持ちなので、「マンスリーアワード」で最も感謝されたチームとしてリボン賞を受賞するのです。

── 部門同士の相乗効果が生まれると言いますか、切磋琢磨されそうですね!

高橋:誰かのために良いことをするだけではダメです。良いことを与えるだけではなく、感謝をされる人間になることが重要です。他人の痛みに気づき、いたわり、相手がそれに気づき、感謝をして、それを表現して、感謝を受け取るまでに意味があります。

"ありがとう"をスタッフに伝える「愛と感謝の祭典」

── リボン賞はコーポレートスタッフ同士で行われると思いますが、ベアーズレディに対する「ありがとう」の気持ちはどのように表現するのでしょうか?

高橋:ベアーズレディに対しては、「愛と感謝の祭典」という大イベントを毎年1回開催しています。ベアーズレディあってのベアーズなので、社員全員が企画・運営をするんです。2014年は、ホテルの宴会会場にお招きし、食事を楽しんでいる最中に、マイケル・ジャクソンの「ビート・イット」に合わせてフラッシュモブを行う企画を立てています。突然1人が踊り始めて、広がっていくんです(笑)。コーポレートスタッフは100人ぐらい参加するので、大規模なフラッシュモブになると思います。

── すごく楽しそうですね! ちなみに去年は何をされましたか?

高橋:去年のテーマは「ホストクラブ」です! 実際にコーポレートスタッフがホストになって、ベアーズレディたちをもてなしました。人間力と洞察力が優れている職種を考えた時に、ある社員が「ホスト!」と言って実現にいたりました(笑)。

── 「愛と感謝の祭典」はどのぐらい続いているイベントですか?

高橋:6年目になりました。紙皿や紙コップ、軽食を用意して公民館からはじまったイベントも、ホテルで開催できるまでになりました。

── では最後に、今後行いたいと思っている取り組みはありますか?

高橋:実施したい取り組みはたくさんあります。すでにひとつ、ずっとやりたかった夢が叶いましたが、去年行われた「ベアーズ大運動会」には本当に感動しました。改めて、ベアーズの可能性を肌で感じられました。ベアーズのコーポレートスタッフは日々忙しく、昨日の余韻を楽しむことなどできず、目の前にあることを必死に行うことでいっぱいです。そんな中でも、運動会を行える精神力と体力があり、なにより、楽しめるだけの余力があるチームに感銘を受けました。

当たり前の影には、誰かの「いたわる気持ち」がある

お話を伺った後で、今回のきっかけになった有山さんのことを思い出しました。有山さんがココロがオドッている理由は、コーポレートスタッフからはじめる「ありがとうの気持ち」を大切にする精神が、現場のベアーズレディまできちんとリレーされているからなのでしょう。

私が当たり前に仕事が出来ている理由は、「誰かのいたわる気持ち」があるからだと思うのです。当たり前こそ、一番大切にすべきであり、感謝すべきこと。ベアーズを通して有山さんから「ありがとうの気持ち」のバトンを受け取ったいま、今度は私が誰かにバトンをつなぐ番だと気づきました。

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(梅内望未/Wantedly