45歳から5億円を稼ぐ勉強法』(植田統著、阪急コミュニケーションズ)の著者は、48歳から勉強を始め、50歳のとき司法試験に一発合格。独立2年目で年収3000万円を突破したという弁護士。そして本書では、そんな自らの経験に基づいて、人生の第2ステージである45歳から70歳までの間に稼ぐための勉強方を伝授しているわけです。

しかも「最初から最後まで読む必要はなく、自分にとってヒントになるものを見つけてもらえればそれでいい」という本書の言葉からもわかるように、とても実用的な構成になっています。きょうは第3章「70歳まで現役を続けるための5つの発想転換」に目を向けてみましょう。

自己完結力を備える

45歳は、第一の会社人生を終え、第二の会社人生へ向けての出発点。会社という大きな傘の下、多くの人と手分けしてやってきたことを、すべて自分でやらなければならなくなる。つまり、なんでもひととおり自分でこなす力が求められるわけで、それが「自己完結力」であると著者は説明しています。

しかし、自己完結力よりも先に必要なのは、すべて自分でやるという意識である「自己完結マインド」。他人に頼らず、自分でなんでもやっていこうという意識を持たないと、何事も前に進まないということです。

最初は面倒だと思うかもしれないけれど、全部自分でやることには、自分でやってこなかったことを学べるというメリットがあります。そして何にでも取り組んでいけば、古くなっていた自分の知識がリセットされたり、新しい知識を身につけられたりするようになる。70歳まで現役を続けるための素地がつくられるわけです。(84ページより)

自頭力を鍛える

著者は自分の頭で考える力を「自頭力」と呼びます。他人の意見を気にするのではなく、自分の頭で考えるということです。たとえば、参考にできる他人の意見が見つかったとしても、それを自身のケースにあてはめて修正することが大切。そこで自頭を鍛えることが必要となりますが、それは簡単。資料や情報を最小限だけ集め、あとは自分の頭だけで考える習慣を身につければいいそうです。

そして自分の意見を持つために、「仮説構築力」をつくり出すようにする。たとえば著者は、同じようなことを2つ見たら、そこから仮説をつくって3つ目で検証するのだそうです。見たら、聞いたら、なんでも自分の頭で仮説をつくってみる。そして最後はデータを調べ、自分の意見を固めるという流れです。(88ページより)

新しい人脈を構築する

自己完結力を維持していくため、いちばん重要なのが「人脈力」。ただし45歳からの人脈力は、45歳までの人脈力とはちょっと違うと著者は言います。最大の誤解は、多くの人がこれまでの人脈を活かせると思っていることだとか。

第二の問題は、多くの人が人脈のつくり方について誤解していること。そういう人は、異業種交流会のようなところに行けば、すぐに人脈ができると思っていると著者は指摘しています。しかし人脈づくりの大前提は、人間関係、信頼関係をつくること。「クライアントを紹介してほしい」といきなり結果を求めても、それは「いつも『テイク』するだけの嫌な人」になってしまうだけだということです。

大切なのは、まず自分の「ギブ」から入ること。ギブを何回かすれば相手も恩義を感じ、テイクできる案件を持ってきてくれるものだといいます。(96ページより)

プライドを捨てる

45歳で人生の再スタートを切るにあたり大切なのは、妙なプライドを捨てること。そして、まっさらな気持ちで、何事も貪欲に吸収していくこと。なぜなら変な先入観がなければ、若い人のアドバイスも素直に受け入れられるから。つまりは謙虚に学ぶ気持ちを持ち、時流に遅れないように精一杯の努力をしていくことが必要だということです。この考え方は、先の「自己完結力」に結びつくもの。「なんでも自分でやるマインド」を持つことが必要だというわけです。

スタートラインに並ぶ前、どこにいたかは無関係。「勝つためには、なんでもやる」「知らないことは身につける」「事務的で面倒なことでも、自分でやる」という気概を持ってやらないと、競争に打ち勝つことはできないという考え方です。(101ページより)

自分自身のグローバル化を図る

今後、人とモノの国際間の移動が活性化し、ビジネスの国際化が進み、外国人観光客が増えることは確実。一方、日本の人口もマーケットも縮小していくため、日本企業の海外進出は急速に進む。そんななか、グローバルな視点を持つことは必須。

そのために重要なのは、1.外国人アレルギーをなくす、2.片言でいいから英語をしゃべる、3.外国で起きていることに興味を持つことだといいます。いまは外国のことを旅行の対象としてだけでなく、「外国で起きていることがどう自分の生活に跳ね返ってくるか」を考えなければならない時代。

ましてや45歳から70歳までは25年もあるのだから、時流に合わせていかなければ生き残ることは不可能。グローバル化する経済のなかで「私は英語がわかりません」「外国のことに興味がありません」では太刀打ちできないということです。(105ページより)

「まだまだ先のこと」という印象をお持ちの方もいるかもしれませんが、第2の仕事人生を45歳から70歳というスパンで区切った著者の考え方はとても実践的であり、早く準備しておくことの重要性を実感させてもくれます。ページをめくるごとに、多くの気づきを得ることができるでしょう。

(印南敦史)