官僚に学ぶ読書術』(久保田崇著、マイナビ新書)の著者は、元内閣府参事官補佐で、現在は岩手県陸前高田市副市長を務める人物。つまり本書では、キャリア官僚としての多忙な日常のなかで身につけた、独自の読書術や速読術などが明かされているわけです。

各章ごとに多くの書籍が紹介されていますが、そのジャンルは歴史、伝記、国際政治、精神世界、NPO、自己啓発、災害・復興、地方再生、ビジネスなど多種多様。そんなこともあり、読むべき未知の書籍を見つけるためにも有効な内容だといえるでしょう。きょうは第七章「官僚の速読術」から、いくつかを引き出してみたいと思います。

多読か精読か

本を速く読むために重要なのは、多読と精読を組み合わせること。それは多読によって精読すべき本をスクリーニングするという感覚で、具体的には本を次の3つに分類しようと著者は促しています。(188ページより)

A:最初から最後まで読む本(精読する)

B:つまみ食いすべき本(気になったところだけ読む)

C:読まない本(「はじめに」と目次だけ読んで終わりとする)

(189ページより)

まず、どの本も「はじめに」と目次だけには必ず目を通す。その結果、ワクワクするほどの気持ちがわいてきたら「A」に、目次のうちのいくつかの項目だけに興味がわいたら「B」に、少しも興味を惹かれない本は「C」に分類する。

大胆にも思えるこの手段が有効なのは、本は「はじめに」の部分と目次に最大のエネルギーが注ぎ込まれているものだから。そしてそれは書店で立ち読みして「買うかどうか」を決める際の判断材料になるため、本文の構成や内容を把握しやすいということです。(188ページより)

最初から最後まで読むな

ただし、「はじめに」と目次だけを読んだら終わりというわけにはいかないのが、「否応なしに読まなければならない本」。たとえば業務上読む必要がある専門書の場合は、目次を見て必要な章のなかから必要な事項を拾って読んでいく。この場合は、必要なキーワードが出てくる記述をつまみ食いする方法が基本だといいます。

ただし業界の基礎知識を身につけるために専門書を通読するような場合は、最初から最後まで精読することが必要。したがって業務上の専門書は、「つまみ食い」的に読む場合と精読する場合の2つが考えられるそうです。

一方、「試験対策」などの場合は、試験範囲の基本書、参考書や問題集を精読する(あるいは問題を解く)ことが基本。また、それらとはまったくタイプの異なる「小説」については、個人的な楽しみなので速読を意識することも不要。最初から最後まで普通のスピードで読むのが基本。

A:最初から最後まで読む本(精読する)

・ ビジネス書の一部

・ 業務上の専門書の一部

・ 試験対策書籍

・ 小説(個人的な楽しみとして)

B:つまみ食いすべき本(気になったところだけ読む)

・ ビジネス書の一部

・ 業務上の専門書の一部

C:読まない本(「はじめに」と目次だけ読んで終わりとする)

・ ビジネス書の一部

(193ページより)

つまり、このように整理できるということ。(191ページより)

フォトリーディング速読法

キーワードが明確に示されていない、あるいは自分でキーワードを探す必要がある場合に、著者が活用しているのが「フォトリーディング」。毎秒1ページを超えるスピードでページをめくり、写真を撮るように本の情報を脳に送り込む速読法です。

神経言語プログラミング(NLP)および加速学習分野のエキスパートである米国のポール・R・シーリィ博士によって生み出されたもので、カリスマコンサルタントの神田昌典氏が日本に持ち込んだもの。経済評論家の勝間和代氏も勧めていましたので、ご存知の方もいらっしゃると思います。

ステップ1:準備(1分)

本を読む「目的」を決める。

ステップ2:予習(1分)

「目次」をチェックして読み進めるかどうかを確認する。

ステップ3:フォトリーディング(4分程度)

「フォトフォーカス」によりページを一定のペースでめくりながら、本の内容を潜在意識に送る。

ステップ4:復習(8分)

本の中身を簡単に調査し、気になる言葉(トリガーワード)を抜き出す。本に対する質問を数個つくる。

5分〜24時間のインターバルをおく。

ステップ5:活性化(15〜60分ほど)

潜在意識に送り込まれた本の情報を、質問によって意識に引き上げて読む。

(198ページより)

『超一流の人がやっているフォトリーディング速読勉強法』(山口佐貴子著、かんき出版)から引用したというこの流れが、フォトリーディングの手順だとか。その他、著者がおすすめする『[新版]あなたもいままでの10倍速く本が読める』(ポール・R・シーリィ著、神田昌典監修、井上久美訳、フォレスト出版)など、フォトリーディングについてはさまざまな本が出ていますので、興味のある方は、本書を出発点として何冊か読んでみてはいかがでしょう。(195ページより)

ここで紹介されている速読術の多くは、1日1冊以上のペースで本を読んでいる私自身が実践していることでもあったため、親近感をおぼえました。

また第五章「『災害』と『地方』から現在ニッポンを考える」も、陸前高田市副市長という立場だからこそ書けたに違いない説得力を感じさせてくれます。ぜひ一度、手にとってみてください。

(印南敦史)