北陸新幹線は、延伸開業(長野-金沢間)から間もなく1カ月を迎える。11日には安倍晋三首相が初めて乗車し、石川、福井両県に入った。ところが、東京まで最速2時間8分で結ばれた富山県と富山市が、職員の出張には航空機の利用を呼びかけていたことが分かった。整備計画決定から40年以上を経てようやく実現した延伸開業は北陸の悲願だったはず。そこにはある事情が関係していた。
ビッグチャンスと言ったのに…
《首都圏方面の出張は、北陸新幹線よりも『特割』を活用した航空機を利用する方が経済的に利用できる場合がある》
富山県の職員にこんな通達が出たのは、新幹線開業を2日後に控えた3月12日だった。石井隆一知事が年頭に「開業は県民の悲願。富山県にとって50年、100年に一度のビッグチャンス」と語っていたのとは対照的な内容だ。
富山から東京までの北陸新幹線の運賃・特急料金は1万2730円(通常期指定席)。これに対し、富山-東京(羽田)間の航空運賃は、搭乗前日まで購入できる「特割」で1万700円(最安値)と2千円以上安い。県の人事担当者は「新幹線開業は待ち望んでいたが、それと出張旅費は別問題だ」と言い切る。自治体職員の出張旅費は条例に基づき「最も経済的な経路」で支払われるためだ。
運賃、時間との戦い
全日本空輸(ANA)によると、富山-東京間の正規運賃は2万4600円。半値以下の特割運賃は「競合する北陸新幹線を横目に見ながら工夫した対抗運賃」(担当者)だという。