778a0aの日記

戦略シミュレーションゲーム開発、本の感想、ソフトウェア技術についてなど

『キャリアデザイン入門』Ⅰ・Ⅱ読書メモ

新年の気付けに読んだ。

この本で冒頭に示されている三十代頃までの「筏下り」とその後の「山登り」というキャリアモデルは、自分の身を振り返っても確かにその通りだなという内容がうまくまとめられていて、この部分を読めただけでもこの本を手に取った価値はあったなと思った。

Ⅰの基礎力編では、高校生あたりから40代ぐらいまでのキャリアの一般的な流れや知っておくべきことが解説されつつ、専門力を身に着けはじめていく年代である30代頃までに身に着けておくべき基礎力について解説されていた。

Ⅱの専門力編では、30代以降のこれから専門力を身に着けていこうとする人に向けて、専門力の身につけ方や持つべき意識について解説されていた。すでに専門力を身に着けてバリバリやっている人に対するアドバイスというよりは、まだどういう専門性を持とうか決めかねている人に対して、色々な方向性や取りうる手段をざっくりと紹介したものだった。

どちらの本も良い内容は多くありつつも、割とぼんやりとした感じの印象論や、やや雑に感じる放言めいた投げかけも多く(「◯◯してみてはどうだろう」とか「◯◯してみるのも面白い」とか)、そのあたりが若い人にどのくらい響くのだろうかとは思った。(まあ、つい視野の狭くなりがちなキャリアに対する考えについて、色んな考え方・方向性があるんだよというのを示すための発想の参考として挙げているだけであって、関西人が話の最後に「知らんけど」を付けるのと同じノリなのだろうなとは思う)

とはいえどの話も極論は避けて、多くの場合に従っておいて間違いはない基本的な考え方が解説されているので、あんまり響かないとしてもそれらの内容をしっかりと胸に留め置いて、基本を疎かにせず、しかしときには敢えて基本から逸れてみるというスタンスが大事だと思った。(この「敢えて」というのも重要なポイントだと思う。基本を知らないまま基本から逸れるのは形無しとはいうけど、まあそれで上手くいくこともある。大切なのは、上手くいかないことも多い人生のなかで、前もって知っていればそんな逸れ方しなかったのにという形のやらかし・頓死を防ぐことにあり、それがキャリアデザインを考えることの意義のひとつだと思う)

本の感想は以上。

個人的にはこういった概論・総論的な話も大事にしつつ、一方でより個別具体的な、偉人や尊敬できる人の話に触れるのもキャリアの大きな助けになると思う。

良きキャリアの形成、にかぎらず人生においては、どれだけ多くの本当に尊敬できる人と出会えて、影響を受けられたかも大事なポイントになる思う。それは何も実際に会って話した人である必要はなく、本を通して知った人物や、物語の中の人物でも構わない。

そういった素晴らしい人物に憧れを抱き模範とし私淑する。何かの決断のたびにあの人ならどう行動するだろうかと考え、あるいはやがてそんな考えが血肉と化していき、意識せずともその人と似通ったような行動になっていく。そういうことが、難しい選択を迫られ続ける人生のなかで、易きに流れることなく、自分が本当に大切にしたいことを大切にし、自分でも思ってもいなかったような高みにまで登っていくための助けになると思う。

というわけでここでそういう素晴らしい人物やら本やらでも挙げられたら良かったけど、今ぱっと思いつかなかったのでこれで終わる。

『脳のワーキングメモリを鍛える!』読書メモ

運動中に聴いていた。

前半あたりの章

とにかくワーキングメモリは色んな能力だけでなく、前向きな思考みたいなものにすら関わっているという感じだった。

運動の章

ワーキングメモリ回路?と小脳運動皮質ループがあって、動作を覚えるにはワーキングメモリ回路をすっ飛ばさないといけないあたりが印象に残った(適当)。

これは運動以外にも言えることだと思った。運動的なことであれ知的作業的なことであれ、何かを習得しようとするとき、頭がいっぱいいっぱいになるような難易度(=ワーキングメモリをフルに使わないといけないような難しさ)で取り組むのは却って覚えが悪い。ある程度は考えなくてもできるぐらいの塩梅の難易度が一番学習効率が高い気がする。

子供から老人までのワーキングメモリの変遷の章

子供の成績の予測はIQよりもワーキングメモリのほうが精度が高いという話が印象に残った。ほんとにそれワーキングメモリの研究か?というような話もあったけど、とにかくワーキングメモリは色んな能力を身につけるのに大事な感じだった。

最後のあたりの章

ワーキングメモリに良い習慣と、ワーキングメモリの大切さが意識された未来の社会について。最後は総まとめ的なアドバイス。最後以外はとても薄っぺらい内容だった。

訳者あとがき

最後の章は冗長な内容が長々とあったのでばっさり切った、他にも重複した内容がいくつもあったので切った、著者の一人が開発したと紹介しているメソッドについて調べたけど有料?会員限定だったのでよく分からなかった、みたいなことが書かれていて笑った。とても誠実で良い訳者あとがきだったと思う。

まとめ

話題が非常に幅広い分野に渡っていて、大筋として書かれている内容はどれも大切そうで良い感じの本ではあった。

ただところどころの話の展開が強引だったり、怪しい適当な内容があったりで不信感が募った。本当はそういう先入観はいったん脇に置いて、まっさらな感覚で読み進めるのが良いとは思いつつ、いったん胡散臭いなと思ってしまうとなかなか難しい。

良い内容も多いので、胡散臭いな、どうでもいいなと思うところは軽く飛ばしながらまた読み返したい。丁寧に読み返す必要はない。

小脳運動皮質ループ周りの話は、物事の習得について何らかの示唆を得られる良い内容だった。

『マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書』読書メモ

運動のお供に聴いていた。2013年出版の本。

第1講義 マッキンゼー流プロフェッショナルの流儀

仕事人として持つべきプロ意識について。どれも大事なことだけど、なによりも入社1年目からこういう考え方を叩き込まれて、なおかつ周りの同僚や上司もそんな人達ばっかりという環境なのが素晴らしいなと思った。

社内に強い人材が揃っているのもいい。資料の作り方について社内の達人にアドバイスを貰いに行ったとか、調査のプロからやり方を教えてもらったとか、さらっと書かれているけど地味にすごいことで、実際はそんな人材がいないとか、そんな有機的な連携体制がうまくできていないとかが多い。

第2講義 マッキンゼー流問題解決の基本プロセス

月並みで当たり前の話にも見えるけど、この地道な段取りをちゃんと実践するのはとても大切だと思った。問題の整理もせずに手当たり次第に取り組んでいくことがどれほど多いことか。また読み返したい。

また、あくまでツールやフレームワークに使われることはなく...、みたいな話もあってバランス感覚をきちんと押さえられていて良いと思った。

意外と感性やセンスが先にあって、それを誰もが納得できるロジックに落としていくという流れであることも多いというのもその通りだと思った。

少し話がずれる。ちょうどネットで論理的思考が話題になっていたけど、ある集団・社会のメンバーみんなが納得できるような話の筋立て、みたいなものが論理・ロジックだと思ううぐらいがちょうど良いと思う。論理という言葉について、論理学とかの流れで、なんらかの数学的・演繹的に求められる絶対の真理・定理みたいな印象を持ちがちだけど、それよりはもっと緩く、もっとふわっとした納得感、社会的な合意感、コモン・センスみたいなものが大事だと思う。

実社会の問題については、形式論理的な筋立てだけでは多くの納得は得られない。論理だけが先行して組み立てられた話が人の胸を打つことは少ない。(純粋な意味で)論理的であることと、説得力のあること・納得のいくことは必ずしもイコールではない。現代では論理的という言葉が「説得力のあること」の代名詞のように使われがちだけど、それ以外にも多くの理はある。それらの総体が説得力を成していて、その中での論理の重要性は社会や時代によっても変わってくる。

さらに余談だけど、大昔では呪術や怪力乱神の類いすら大きな説得力を持っていた。それらは今となっては顧みられることも少なく、時代遅れの無価値な迷信と切り捨てることもできるけど、むしろそこに人間の思考の変えがたい傾向や本質みたいなものも読み取れるように思う。それに、知識の蓄積に乏しく情報の穴だらけで不確実性の大きな世界では割合優れた意思決定の基準だったんじゃないかとも思う。そうでなければ古代にあれほど呪術や卜占に頼った勢力ばかりが栄えることもなかったはず。(ということを宮城谷昌光の古代中国の小説を読んでいるとよく思う)


あとの章はそんなには印象に残らなかった。良いことは書かれていて、それらを愚直に実践していける人間が強いんだろうなあとは思った。

ひとつ前に読んだ本が学生向けだったので、こういうバリバリのビジネスマン向けの本はプラクティカルで心が洗われた。

『馬上の星 小説・馬援伝』読書メモ

前半は妙な牧場物語が始まったかと思えば拠点を転々としたりと展開がせわしく、めぼしい人物も出てこなくて退屈な感じだった。

本の終盤になってようやく馬援の歴史上の活躍が描かれるようになった。ただ淡白な描写に留まっていた。

一通り読んでみて、単調で人物の掘り下げも少なく、それほどおもしろいものではなかった。大勢の人が登場したものの、それらの人がうまく活躍することもなく終わってしまった。

前漢末期~後漢初期という分かりにくい時代で、中央とは離れた地が舞台だったのも退屈さに拍車をかけていたかもしれない。『奇貨居くべし』のような絢爛さはなかった。ただ地味ではあるものの、平凡な人には到底真似できない立派な考えを貫き続ける馬援の(一見して分かりづらい)凄みみたいなものは伝わった。

忙しい連載スケジュールのなか強引に書き上げた感じかなと思った。売れた作家のこういう作品を見るのはやるせない。やっぱりもっとちゃんと人生を掛けて作られたような物語を見たいと思った。

ただ、やっぱり著者がところどころに散りばめた「とっておき」は良かった。そういうのはまた見返したい。

『知的複眼思考法』読書メモ

運動のお供に聴いていた。たまにいくつかの本で複眼思考がどうたらと出てくることがあり、おそらくこの本が源流だと思うので読んでみることにした。

序章 知的複眼思考法とは何か

1996年出版の本なので地獄のような古臭いステレオタイプの話がいくつも出てきた(そういうステレオタイプについて立ち止まって考えるよう促す文脈で)。今の時代にも、後から見たらありえないと思うような思考や常識や偏見(偏見とすら思っていない)が当たり前のように受け入れられているものもあるんだろうなあと思った。

第1章 創造的読書で思考力を鍛える

読書について。本に書かれた文章も、出版されるまでに色々書き直されたものであるという視点は確かに無かった。別の可能性があったこと、著者がどういう思いでその文章を選びとったのかを考えてみると良いとのこと。

第2章 考えるための作文技法

書くことで考えを深めていくことについて。本筋ではないけど書き出すことで考えをまとめるのはとても大事。たびたび出てくる地獄のようなステレオタイプに対するコメントがハラハラする。

全体的に、高校生から大学生ぐらい向けの内容な感じがしている。

第3章 問いの立てかたと展開のしかた―考える筋道としての問い

前半は、疑似相関を見分ける具体的な方法とか、ロジカルシンキングの基礎的な考え方とかの説明。やっぱり今となっては高校生・大学生1・2年生向けな内容な感じ。良く言えば基本的なことがしっかり解説されている。

後半は何気なく使っている概念の定義に意識的になることについて。基本的なことではあるけどそれをここまで丁寧に言語化しているのはとてもいいと思った。

残念ながらもうこの本が対象としている読者層には、この本に書かれている具体例はピンとこないものになっていそうだけど。(受験戦争、偏差値教育、男女差別、オウム真理教などなど)

第4章 複眼思考を身につける

前半は複眼思考を身につけるための方法論。着目する事柄そのものだけでなく関係論にも目を配る。『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を例に逆説的に関係を見る。施策の思わぬ副産物について考える。色々な着眼点が説明されている。

後半は問題の「作られ方」・提起のされ方によって扱われ方も違ってくることについて。いじめと呼ぶか傷害と呼ぶかみたいな。いわゆるフレーミングについて自覚的になろうみたいな感じ。

まとめ

高校生・大学生向けに、色々な着眼点で物事をみることについて丁寧に言語化して解説した本という感じだった。

著者の専門分野(社会学・教育学)と時代性から、受験戦争や就職難や男女差別やその他昔のステレオタイプの話などを引き合いに出した多く、実社会や仕事や経済周りの話は薄めだった。そういう意味でもバリバリのビジネスマン向けというよりは学生向けな感じだった。

今となってはこのぐらい注意深い物の見方は当たり前じゃないかとつい思ってしまうものの、そんな見方をきちんと若い人に向けて解説してくれている本というのも少ないので、そういう意味で貴重な良い本だと思った。

とはいえ上でも書いたけど、今どきの学生にこの本で引き合いに出されていることがどのくらいピンとくるのかと思う。それほど時代が変わってしまったことが印象に残った。そして今、当たり前にある考え方で二十年後、三十年後に見返して古臭すぎると思われるような考えもまたたくさんあるんだろうなあと思った。

そういった、もっともらしいように見えても一時の流行り廃りでしかない考え方に惑わされずに、何千年と経っても変わらず朽ちないようなものを追い求めていきたいと思った。

『北天に楽土あり: 最上義光伝』読書メモ

山形あたりの地理に詳しくなった。

全体的に小気味よく軽快に進んでいって良い感じだった。余計な創作がなくサクサク読めた。

前半はまあまあスケールの小さい話で、かつての羽州探題の小領主の家が生き残りを賭けて戦い、成り上がっていく話。戦略ゲームの弱小勢力の序盤のおもむき。

後半の豊臣政権下のいざこざ、政治闘争、軋轢がとても良い感じだった。(特に奥州の)ごちゃごちゃと分かりにくい水面下の動きが綺麗に整理されていて分かりやすかった。

まとめとして、最上家周りの史実の流れや人間関係を効率よく学べるタイパの良い小説だった。歴史書のように無味乾燥でもなく、創作多めな娯楽小説のように冗長なオリジナル展開があるわけでもなく、適切な分量で綺麗に話がまとまっていた。

Blazor Hybridの雑メモ(Blazor + Windows Forms or WPF)

さくっとデスクトップアプリを作るのにBlazor Hybrid(Blazor + Windows Forms or WPF or MAUI)が思ったより良い感じだったので、雑メモを残しておきます。

セットアップ方法など

プロジェクトテンプレートないのか...という感じですが、一度セットアップしてしまえばRazorコンポーネントのホットリロードもデフォルトで普通に動いて開発者体験は良い感じでした。

ホットリロードはWPFのそれに比べるとちょっと遅い(数百ms程度の遅延)ですが個人的には許容範囲でした。今後の高速化に期待です。

画面をHTMLで書きつつ、ボタンクリック時の動作などをC#で書けて、自由に.NETのAPIでスレッドを作れるしファイルも読み書きできるしで快適です。軽く触っただけではどこまでがWebAssemblyで動いていて、どこまでがSignalRを通してサーバープロセス側?で実行されているのかよく分からない(≒意識しなくて良い)感じでよくできているなと思いました。(未だによく分かっていません)

とてもいい出来なので、Windows向けデスクトップアプリ作りにおいては、ElectronもTauriもFlutterもWPFもWinUIもいらない感じになるかもと思いました。(少なくともXAML系のUIフレームワークよりは遥かに開発生産性が良いです

Blazor向けUIライブラリについて

参考リンク:

以下は、Blazor Hybrid(Windows Forms)で適当にいくつかのBlazor向けUIライブラリを使って、1アイテムに多数のボタンやチェックボックスが含まれた、数千個のリストアイテムを表示するまあまあ重めの画面を作ってみたときの雑メモです。重さについて色々書いていますが、極端な例での話なので普通に作る分にはどのUIライブラリも十分に高速だと思います。

  • MudBlazor: いまのところ一番人気。マテリアルデザインベースなのが好みが分かれそう。コンポーネントをカスタマイズしやすいのは◯。あとやや重い気がする。Tailwind風の機能は便利でいい。ただ、素のHTML要素には反映してくれない?のがMudBlazorのコンポーネントとHTML要素を併用する場合に面倒そう
  • Fluent UI Blazor: MS謹製。Fluent UIのWeb Components版のBlazor用ラッパー?。見た目はシンプルで良い感じ。だけどWeb Components化されていたり、アクセシビリティ対応していたりする影響からかMudBlazorより大分重い。あとFluentStackにflexが設定されないバグ?がある(Blazor Hybridで使っているせい?)。書き方もやや冗長で面倒。フォーム系のコンポーネントが重いので、それを使わず必要なところだけ使う形にすればいいかも。かといってレイアウト系が他と比べて優れているわけでもないし、上記のflexにならないバグなど根本的なところの信頼性・品質がまだ不安
  • Ant Design Blazor: AntグループのUIライブラリのBlazor版。チャートとかも揃っていてFluent UI Blazorより人気がある。見た目はシンプル寄り。書き味はいい感じ。重さはFluent UI BlazorほどではないけどMudBlazorよりは重い気がする
  • Radzen: Redditでなんか評判が高かった。MudBlazorと同じくマテリアルデザインチックなリップル効果やアニメーションがついている
  • 素のHTML: やっぱりダントツで速い。スタイル付けにTailwind等を使うとホットリロードの動作がrazorファイル更新反映→少し遅れてcssファイル更新反映、という感じになるのが微妙といえば微妙だけどそこまでは気にならない

まとめとしては、マテリアルデザインで問題ないならMudBlazorが良い、そうでないならAntBlazorが良さそう、アクセシビリティ対応が必要かWeb ComponentsやMS謹製が好きならFluent UI Blazorでもまあなんとかなるかも、高度なカスタマイズが必要なら素のHTMLもあり、という感じでした。

次は時間があればBlazor + MAUIでモバイルアプリを作るのがどんな感じなのか調べてみたいと思います。

その他参考記事

以上です。