新年の気付けに読んだ。
この本で冒頭に示されている三十代頃までの「筏下り」とその後の「山登り」というキャリアモデルは、自分の身を振り返っても確かにその通りだなという内容がうまくまとめられていて、この部分を読めただけでもこの本を手に取った価値はあったなと思った。
Ⅰの基礎力編では、高校生あたりから40代ぐらいまでのキャリアの一般的な流れや知っておくべきことが解説されつつ、専門力を身に着けはじめていく年代である30代頃までに身に着けておくべき基礎力について解説されていた。
Ⅱの専門力編では、30代以降のこれから専門力を身に着けていこうとする人に向けて、専門力の身につけ方や持つべき意識について解説されていた。すでに専門力を身に着けてバリバリやっている人に対するアドバイスというよりは、まだどういう専門性を持とうか決めかねている人に対して、色々な方向性や取りうる手段をざっくりと紹介したものだった。
どちらの本も良い内容は多くありつつも、割とぼんやりとした感じの印象論や、やや雑に感じる放言めいた投げかけも多く(「◯◯してみてはどうだろう」とか「◯◯してみるのも面白い」とか)、そのあたりが若い人にどのくらい響くのだろうかとは思った。(まあ、つい視野の狭くなりがちなキャリアに対する考えについて、色んな考え方・方向性があるんだよというのを示すための発想の参考として挙げているだけであって、関西人が話の最後に「知らんけど」を付けるのと同じノリなのだろうなとは思う)
とはいえどの話も極論は避けて、多くの場合に従っておいて間違いはない基本的な考え方が解説されているので、あんまり響かないとしてもそれらの内容をしっかりと胸に留め置いて、基本を疎かにせず、しかしときには敢えて基本から逸れてみるというスタンスが大事だと思った。(この「敢えて」というのも重要なポイントだと思う。基本を知らないまま基本から逸れるのは形無しとはいうけど、まあそれで上手くいくこともある。大切なのは、上手くいかないことも多い人生のなかで、前もって知っていればそんな逸れ方しなかったのにという形のやらかし・頓死を防ぐことにあり、それがキャリアデザインを考えることの意義のひとつだと思う)
本の感想は以上。
個人的にはこういった概論・総論的な話も大事にしつつ、一方でより個別具体的な、偉人や尊敬できる人の話に触れるのもキャリアの大きな助けになると思う。
良きキャリアの形成、にかぎらず人生においては、どれだけ多くの本当に尊敬できる人と出会えて、影響を受けられたかも大事なポイントになる思う。それは何も実際に会って話した人である必要はなく、本を通して知った人物や、物語の中の人物でも構わない。
そういった素晴らしい人物に憧れを抱き模範とし私淑する。何かの決断のたびにあの人ならどう行動するだろうかと考え、あるいはやがてそんな考えが血肉と化していき、意識せずともその人と似通ったような行動になっていく。そういうことが、難しい選択を迫られ続ける人生のなかで、易きに流れることなく、自分が本当に大切にしたいことを大切にし、自分でも思ってもいなかったような高みにまで登っていくための助けになると思う。
というわけでここでそういう素晴らしい人物やら本やらでも挙げられたら良かったけど、今ぱっと思いつかなかったのでこれで終わる。