南禅寺へ紅葉を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。
混めば混むほどある種の面白さが増す寺社、というのが確実に存在します。
京都に於ける典型例といえば、京都観光のキング・オブ・キングである清水寺でしょう。
混めば混むほど、もっと言えば俗化すれば俗化するほど何故か聖性を増す、清水寺マジック。
中年の中二病の如き混雑忌避の段階を越えて、新たなる智性に拓かれた眼で清水寺を見た者は、
「観光」 の文字そのままに光を求めて群れ集う人間の姿にこそ、確かな浄土の光を見い出し、
路地の奥に 「本物」 を追うような乞食根性を忘れて、京都の真の面白さをもきっと見い出すはずです。
いや、無論そのマジックは、群れ集う人間を余裕で傍観できるスペースの確保が可能な寺社、
即ち、清水寺の如く境内が馬鹿デカい大バコ級寺社だからこそ成立する類のものではありますが、
逆に言えば、境内が馬鹿デカい寺社なら、清水寺のマジックに似た面白味が出ないとも限りません。
紅葉シーズンの南禅寺は私にとって、正にそんな面白味を感じさせてくれるスポットです。
南禅寺。無論、臨済宗南禅寺派の大本山であり、五山の上に立つ日本最高峰の禅寺であります。
創建された鎌倉期から中世に至るまでも、日本初の勅願禅寺としての風格に足る寺領を誇り、
江戸期には家康のブレーンを務める黒衣の宰相・金地院崇伝の入寺で、その権勢はさらに巨大化。
石川五右衛門が 「絶景かな」 と傾く巨大三門も建立するなど、調子に乗って乗って乗りまくり、
明治以降はその乗りっぷりが祟って水路閣を建てられたりしますが、境内の広大さは何とか維持。
現在は、京都観光における超メジャー級&超大バコ級スポットとしての地位を確立してます。
そんな南禅寺、五右衛門が愛でた桜も無論見事ですが、紅葉もまた見事であり、観光的にも大人気。
というか、山門・方丈・塔頭以外は無料でうろつき可能+大型バスも境内に停車可能なため、
大量の客を乗せたバスが大量&エンドレスで境内へ雪崩れ込むという、最悪の事態が大量発生。
で、その様が何かもう度を超してしまってるため、却って面白く見えなくもないというわけです。
その面白さを堪能すべく、私も乞食の如く無料区域だけうろついてきました。
南禅寺の最寄駅は、市営地下鉄東西線の蹴上駅。ちょうど、インクラインの辺に出ます。
が、おけいはんの民たる私は地下鉄代が惜しいので、三条京阪からは徒歩で向かうこと、しばし。
ずっと仁王門通を東進しましたが、平安神宮前の神宮道との交差点を過ぎた辺から、混雑は本格化。
南禅寺へ近付くごとに歩みが牛歩化するのを楽しみつつ、岡崎一帯の紅葉も愛でること、しばし。
バスと人間が渦巻く仁王門通+白川通の合流点を越えると、混雑は笑えるくらい、激化。
南禅寺名物たる湯どうふ順正も、激混み状態。雅な豆腐に雅ならぬ混雑が大量発生しています。
道路の牛歩加減も無論、激化。大型バスがバンバカ通るため歩道を歩かざるを得ず、むしろ蝸歩化。
バスに腕を巻き込まれそうになりながら、そして赤の他人の体温を感じながら、蝸歩ること、しばし。
で、エンドレスの 「バス通りま━━━す」 絶叫の中を通った、中門。
勅使門あたりに行けば、紅葉。
振り向けば、さらに紅葉。
三門への道を進むと、紅葉とバス。
そして、人間と紅葉で埋め尽くされたような、三門。
三門に挑みかかる炎のような、紅葉。
しかし、やはり炎ではなく紅葉の色をしている、紅葉。
三門から振り向けば、人間の渦の向こうに勅使門。
逆に振り返れば、三門の奥の紅葉へ吸引されるかのような、人間。
三門をくぐれば、三門拝観客の行列と見物人が生み出す、人間の渦。
キャパが小さいため全然回転しない三門行列客と、見物人が生み出す、人間の渦。
裏側から見たら、やはり紅葉に包まれていた、三門。
またしても三門に挑みかかる炎のような、紅葉。
三門を覆い尽くす炎のような、紅葉。
三門を離れても、そこら中で燃え盛る炎のように、紅葉。
これまた、人間と紅葉で埋め尽くされたような、法堂。
正に燃えているかのような紅葉に包まれた、法堂。
紅葉を見て、明治に燃えたことを思い出してるに違いない、法堂。
明治に無理矢理作られたものの、今はいい観光資源の水路閣と、紅葉。
大半が日影ながら、時折はっとする表情を見せる、水路閣の紅葉。
紅葉だけ陽が当たってるのがいい照明になってる、本坊の何ちゃら碑。
何とかタダ見で済まそうと、方丈の前に集まった大量の人間。
で、疲れて帰ろうかと思ったら、その先にもチラっと紅葉。
横を向いたら、法堂の裏にも絶妙に、紅葉。
法堂の裏の、さらに絶妙なる紅葉。
夜はやたら行列が出来る天授庵で、おこぼれ紅葉を見る大量の人間とバス。
窓に紅葉を鮮やかに映す、琴参バス aka 琴平参宮電鉄の鮮やかなバス。
そんなバスと一緒に中門をくぐり、帰りましたとさ。面白いかったけど、疲れた・・・。
客層は、基本、烏合。無論、その大半は観光客ですが。
大型バスから吐き出されるツアー客、ベタで古典的な中高年が大勢を占め、
そこへ和服のスカした奴やリーマン接待風などを足したような、とにかく烏合の衆です。
カップルは少なからずいますが、その他の連中が少なからずどころではない勢いでいるし、
ツアー中高年の存在感が過大なため、色気のプレッシャーはかなり相殺されてるかと。
若者は若者でベタな観光客であり、修学旅行のやり直しのような連中だらけですが、
この連中の存在感もまた、ツアー中高年の過大な存在感により中和されてる感じでした。
あと、紅葉自体がベストに近い状態だったため、普通に見とれてる人間が多く、
面白くないものを無理矢理ありがたがろうとする薄ら寒い観光ハイなども、かなり希薄。
単独は、カメのおっさんがいる程度ですが、このおっさんもまた観光客風が多し。
女は、普通の観光風がほんの少しいる程度。
そんな南禅寺の、紅葉。
好きな人と見たら、より絶景かなでしょう。
でも、ひとりで見ても、絶景かなです。
【客層】 (客層表記について) カップル:2 女性グループ:1 男性グループ:若干 混成グループ:1(中国人若干) 子供:若干 中高年夫婦:1 中高年女性グループ:1 中高年団体 or グループ:4 単身女性:超微 単身男性:微 |
【ひとりに向いてる度】 ★★ 客層的には、かなりのアウェー。混雑も酷い。 ただ、面積が広いため、うろつく分には地獄という程でもない。 色気のプレッシャーも、烏合が過ぎて、中和されている。 あと、案外バスマニアにも、おすすめ。 【条件】 |
南禅寺
京都市左京区南禅寺福地町
3/11~11/30 8:40~17:00
12/1~2/28 8:40~16:30
市営地下鉄蹴上駅下車 徒歩10分
京都市バス 東天王町下車 or
南禅寺・永観堂道下車 徒歩10分
臨済宗大本山 南禅寺 – 公式
南禅寺 – Wikipedia