今回は、原文の N. O. – Mais les pays asiatiques, eux, n’ont jamais oublié. で始まる段落からです。
『日本の英国人』
Un Anglais au Japon
par David Peace
(つづき)
N. O. – しかしアジア諸国は決して忘れませんでした。
D. Peace. – 今日でもなお、中国や韓国に対して憂慮すべき態度が日本では確認されています。2002年、サッカーのワールド・カップが韓国と日本の共同で開催されました。当初、日本の観客は試合の時に韓国チームを応援していました、韓国のサポーターの方では、全面的に日本の敵に喝采を送っていたことに気づくまでは。これは本当にショックでした!日本の若者のこのような(言葉の本来の意味での)ナイーブさは、歴史に対する無知の結果です。若者たちは、なぜ近隣諸国の人々が自分たちを愛さないのか、なぜ中国で日本人商店がデモ隊に襲撃されるのか、自問しました。それで、人間的な反応に至ります。君たちが我々を愛さないから、我々も君たちを愛さない、というわけです。こうして、韓国や中国に対する、信じられないほど人種差別的なマンガが花咲くことになります。およそ5年前から、ゼノフォビア的な態度の再流行を確認しています。
N. O. – あなたは何よりもまず推理小説を書いています。日本でも英国でも、あなたにとって犯罪とは社会の秘密を暴くものなのでしょうか?
D. Peace. – 私が取り上げる犯罪は、常に犯罪行為そのものを超える意味を帯びています。私は連続殺人犯に対して特別な幻惑を持ちません。英国四部作で、私が青春時代をすごした1970-1980年代のイングランドで、なぜあのような犯罪が起こったのかを理解したいと思いました。今日ではほとんど忘れられた物語について語られるのを聞いたのは、私が日本に到着して間もなくです。中国で殺人と強姦を犯したことで勲章を授与され、日本に帰還してからも、逮捕され絞首されるまで同じ犯罪を実行し続けた、帝国軍の元兵士に関する物語です。戦時と平和な時代の対照についての完璧なレジュメでした。このような人物は、戦争、敗戦、占領に言及するための、そして当時の東京の現実に近づくための理想的な手段でした。
N. O. – あなたの小説は常に敗北、日本の敗北または英国労働者階級の敗北を取り上げています。一つの国の現実は敗北の中に現れると考えますか?
D. Peace. – 全くその通り。私の本では、敗北しか語りません。歴史的にも文化的にも、ヨークシャーは敗北の場所です。ヨークシャーの切裂き魔の事件は、それと対決する術のなかった地域社会の敗北でした。そしてもちろん、サッチャーに潰された炭鉱夫のストライキは、労働者階級の敗北でした。我々の最もさえない日常では、我々の大部分にとって、敗者と自分を同一視するように仕向けられています。我々はみな、職業生活でも恋愛生活でも、敗者です。私はそこから何らかの教訓を引き出せると信じたい。敗北は人々をあからさまに、傷つきやすいままでさらけ出します。全てそぎ落とされて、人々にはその本質、深い真実しか残りません。
N. O. – しかしそこには苦味のある毒もあります。
D. Peace. – そう。敗北はまた苦さと復讐の欲求も生じさせます。人が敗北するとき、一つの選択しかありません。復讐か贖罪か、です。
N. O. – あなたにとって、文体は謀略と同じくらいの重要性があるようですが、それは推理小説作家には非常にまれなことです。
D. Peace. – それは私だけに限らないと思います。しかし、私はベケット、バロウズやバラードも、推理小説と同じようにたくさん読んで成長しました。だから、私は文体に関して二つの異なる概念に触れてきました。それらの良さを初めて見直したのは、ジェイムズ・エルロイの『ホワイト・ジャズ』を読んでです。その文体は、謀略を演じながらこのジャンルの慣習を破裂させるものでした。それが私にとって、セックス・ピストルズの発見と同じくらい、爆発的な啓示だったのです!
N. O. – 無人島に3冊の本を持っていくとしたら何を選びますか?
D. Peace. – それは絶えず変動するリストですが、あえて言えば、ダンテの『地獄篇』、ミルトンの『失楽園』、そして『羅生門』の作者である芥川(龍之介)の全集でしょう。
Propos recueillis par GILLES ANQUETIL et FRANÇOIS ARMANET
Shanghai, 27 novembre 1937. Incendies après le bombardement japonais et la conquête de la ville (1937年12月27日、上海。日本の爆撃と都市の占領後の火災)
出典
LE NOUVEL OBSERVATEUR 2259 21-27 FÉVRIER 2008
http://hebdo.nouvelobs.com/hebdo/parution/p2259/articles/a367057-un_anglais_au_japon_.html
今回は記事の引用だけにとどめておきます。
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