1年の節目として、youtubeで動画を公開しました。
こんにちは。池袋暴走事故遺族の松永拓也です。
本来は記者会見を開く予定でしたが、コロナウイルスの影響により会見を断念し、youtubeで今の想いをお話させていただきました。
慣れていない作業でお見苦しい、お聞き苦しいところはあるかもしれませんが、
以下に動画を貼りますので、是非、ご覧いただけると幸いです。
動画の下に文字ベースでも記載しました。
以下は、動画内で喋っている内容を文書化したものです。
こんにちは。2019年4月19日に発生した、池袋自動車暴走事故 遺族の松永 拓也と申します。1年を節目に決意を込めて、下の名前も公開することにしました。
事故から間もなく1年が経ちます。本来は記者会見を行う予定でしたが、感染リスクを抑えるために、会見ではなくyoutubeでの配信を選択しました。
コロナウイルスによって世の中が混乱しています。犠牲となった方々には心からご冥福をお祈りし、感染された方の早期回復と、皆様のご健康を心から願います。
この非常時に、このような発信することに対し、抵抗はありました。
ですが、交通事故遺族として皆様にお伝えしたいことがあります。どうか、15分だけお時間をください。
今日は皆様に5つお伝えしたいことがあります。
1つ目は、「交通事故の犠牲者をひとりでも減らしたい」という願い
2つ目は、これから始まる刑事裁判について
3つ目は、被害者ノートに助けられた話
5つ目は、実名を公開することについて
です。
■1つ目の「交通事故の犠牲者をひとりでも減らしたい」という願いについて
痛ましい話ですが、交通事故は年間約38万件発生し、亡くなる人は約3200人います。1日約9人が命を落としています。今この瞬間も、愛する人を亡くし、絶望している人、後遺症で苦しんでいる人がいます。
そして一説では、人一人の人生で交通事故に巻き込まれる確率は、約50%と言われています。つまり、二人に一人が何かしらの交通事故に巻き込まれる計算です。皆様に恐怖や不安を与えるつもりはないのですが、この現実を知っていただき、一緒にこの現実を変えたいです。
今お話を聞いてくださっている皆様の命と、皆様の大切な人の命がひとつでも守られる社会にしたいと思い、この一年活動してきました。
そう思うきっかけになった、昨年4月19日、事故当日の話をします。
最愛の妻と娘は、暴走する高齢ドライバーの自動車にはねられ亡くなりました。
警察から連絡が来たときは、突然のことでパニックになりました。ついさっきビデオ通話で二人と話したばかりだったので、何かの間違いではないのかと思いました。
病院に向かう電車内で「池袋事故、30代女性と、3歳位の女児が心肺停止」というニュースが私のスマートフォンに飛んできました。体の震えが止まらなくなりました。
病院に到着し、二人の遺体を見た時、あまりの無残さに言葉を失いました。特に娘は顔の損傷があまりにもひどく、看護師に見ることを止められるほどでした。
「真菜、莉子」と声をかけ手を握ると、あんなに暖かかった手は、傷だらけで冷たくなっていました。
私にとって、最愛の妻と娘でしたし、愛していると伝えなかった日はありませんでした。
その二人ともう一緒に生きていけない。抱きしめることが出来ない。その現実を前に、その日から眠ることも食べることも出来ず、二人の遺体の横で「いっそのこと死んだ方がマシなのではないか」とずっと考えていました。
事故から3日ほど経った頃、ふたりの棺を交互にあけ、「愛しているよ。今までありがとう」と伝えました。返事が聞こえない静かな部屋の中で、「二人の命を無駄にしたくない」と思うようになりました。
私がなにか行動することにより、巡り巡って一人でも命を救うことが出来るかもしれない。それが、「二人の命を無駄にしない」ということに繋がるのではないかと思うようになりました。その考えから、最初の記者会見を開こうと思いました。夫として、父として、社会人として出来ることをやりたいと思うようになりました。
6月頃、関東交通犯罪遺族の会(通称:あいの会)という遺族団体に出会いました。あいの会の仲間と共に、国土交通省へ交通事故防止の為の要望書を提出し、内閣府の主催する会議にも参加しました。今までの活動については、私のブログでもあげていますので、是非ご一読願います。(ブログURL提示https://ameblo.jp/ma-nariko/)ブログやTwitterなどへのリンクは概要欄からアクセスできるように致します。
皆様は、自分自身が交通事故の加害者、被害者、遺族になることを想像したことがありますか?
わたしは遺族になるまで、交通事故はテレビの向こう側の話で、正直なところ他人事だと思っていました。しかし、それは間違いでした。誰しもが被害者にも、遺族にも、加害者にもなり得ます。だからこそ、運転に不安がある上での運転や、ながら運転、あおり運転、飲酒運転等はしないようにしていただければと思っています。
高齢ドライバー問題については、都内で免許返納が倍増したという報道を目にしました。
自分ごとと捉え、免許返納をしてくださった方々は、大変な勇気が必要だったと思います。ご本人と、親族の方々に心から感謝致します。
しかし一方で、地方は都内ほど公共交通機関が発達しておらず、現実問題として車がなくては生きていけない方が多いのが現実です。こういった点は、引き続きあいの会と共に、国に訴えかけていきたいと思っています。
■2つ目は、これから始まる刑事裁判について
今の所、刑事裁判がいつ始まるかはまだ分かりませんが、刑事裁判には「被害者参加制度」という制度を使って私も参加する予定です。
私は次に挙げる3つのことを念頭に、被害者参加します。
1つめは、妻と娘が何故亡くならなければならなかったのか。遺族として、加害者本人から直接、真意を聞きたいです。
2つめは、真実が明らかになることにより、同様の事故の再発防止への種にしたいです。
3つめは、軽い罪で終わる前例を作りたくないということです。2人死亡、10人怪我という大事故で、仮に軽い罪で終わってしまうと、それが前例となります。将来同じような事故が起きた時、「池袋の判例があるから軽い罪」となると、その時のご遺族を苦しめることになるからです。
今挙げた3つを念頭に刑事裁判に参加しますが、加害者が仮に裁かれても、二人の命は戻るわけでもなく、遺族や怪我をした方々の体と心が元に戻るわけでもありません。
本来は、何をしても償いきれるものでは無いと思います。
だからこそ加害者は、奪った命と向き合い、自身の行いと向き合う場所と時間が必要だと私は思います。
とはいえ、加害者がどういう心で生きていくのかを決めるのは、私でもなく、司法でもなく、加害者自身です。重ねて申し上げますが、私は加害者本人から直接、真意を聞きたいと思っています。
■3つ目は、被害者ノートに助けられた話
これからお話することは、主に被害者や遺族の方に向けてです。そうでない方も、万が一被害者になってしまった時のために是非聞いて頂ければ幸いです。
(被害者ノートを出す)
このノートは、被害者ノートというものです。事故から1ヶ月半後の6月、あいの会の小沢樹里代表が、この「被害者ノート」をくれました。このノートは、被害者に必要なことはほぼ網羅されており、何も知らなかった私はかなり救われました。
被害者の方には無料でお渡し出来ます。必要になった方は、あいの会までお問い合わせください。あいの会の連絡先は、こちらの警察庁ホームページに記載されています。https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/dantai/shosai1/j-29.html
こちらのURLは、この動画の概要欄からアクセス出来るようにします。
■4つ目は、1年で変わったこと、変わらなかったことについて
変わったことは憎しみという感情についてです。
今は、「憎しみ」と「処罰感情」を分けて考えるようになりました。
事故当初、加害者に対する憎しみが湧いてきました。しかし、「憎しみに囚われた自分を、真菜と莉子は望んでいるのだろうか。」と否定してみては、「憎しみに囚われるのは遺族としては当然の感情」とも考え、2ヶ月近く悩みました。
ふとした時に、「憎しみに囚われている時は加害者のことを考えている時間だ」と思うようになりました。それよりも、「妻と娘への愛と感謝の気持ちで心を満たしたい」と考えるようになりました。私の場合は、その方が私らしくいられる事に気が付きました。
妻子を奪われ、未来を奪われた。だからといって、自分らしさすら奪われる必要はないと思うようになりました。
結果、憎しみと処罰感情を分けて考えるようになりました。心は、愛と感謝で満たし、頭の中では処罰感情として、厳罰を求める。そう考えるようになりました。
事故当初からずっと変わらないこと、それは誰にもこのような思いはさせたくないという気持ちです。
■5つ目は、実名を公開することについて
私の名前は松永拓也です。事故当初から今まで、下の名前は公表しませんでした。
なぜかというと、事故の直前までただ家族3人で静かに生きていただけの私にとって、公の場に出ることだけで恐怖でした。
その上で、全部の名前を知られてしまうと、自分の生活が脅かされる危険性や、批判や非難そして好奇の目で見られるのではないかという恐怖心を感じていたからです。
今回実名公開をしたのは、1年という猶予があったからです。その猶予の間に、心の準備、戦う準備、交通事故防止への覚悟、沢山の支援者が出来たからだと思っています。
特に、交通事故防止の活動をしたいという気持ちが強くなったことが一番の要因です。今回実名報道をし、世の人たちの命が守られる交通社会にするという決意を新たに表明したいと思います。
実名報道には賛否両論があると思います。
犯罪被害のご遺族が実名を公表しないという選択があっても、私は間違いだと思いません。
自分や家族の生活を守るために、それが必要な人もいます。
実名を出しても、出さなくてもいいし、実名を出すのに時間がかかってもいいと思います。そのことを皆様に知っていただきたいと思います。
各報道機関は、これまで、私の「実名報道をしたくない」という意思を尊重し、協力をしてくださいました。心から感謝しています。
話は少し逸れますが、メディアスクラムということが時折社会問題となり、私も最初は報道機関に対して恐怖心や不安がありました。実際、メディアスクラムによって遺族にとって負担となることは間違いありません。
しかし時を追うごとに、被害者にとってメディアは決して攻撃するものではないということが分かり、自分の思いを世に伝えてくれる支援者にもなり得ます。つまり、実名報道するかどうかも、報道機関とどう付き合うかも、被害者が選べるのだということを皆様に知っていただきたいと思います。
私のお伝えしたい5つのことは以上です。
真菜と莉子は確実に私と生きていました。
しかし今はもうこの世に居ません。
これが交通事故の現実です。
どうか、身近な人を愛するように、車の外に向けても
愛のある、優しい運転をお願い致します。
私は二人の命を無駄にしないため、具体的行動を
人生を通して行っていきます。
最後にはなりますが、事故現場に献花してくださった皆様や、署名と一緒に皆様が送ってくださったお手紙に何度も救われました。本当にありがとうございました。
今回動画内で喋った内容は、ブログに文書としても投稿します。
お忙しい中最後までご覧下さり、誠にありがとうございました。
以下は私のSNSです。
Instagram:https://www.instagram.com/ma_nariko/
Twitter:https://mobile.twitter.com/ma_nariko/
Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100041754971061