【土地管轄と裁判籍】
土地管轄とは、同一種類の第一審裁判所間の分配であり、一定区画に関係のある事件はどこの裁判所の管轄になるかということです。たとえば、第一審が地方裁判所と決まったとして、当該事件は日本中にあるどこの地方裁判所で裁判をすることになるのかということです。ここで重要になるのが裁判籍という概念です。裁判籍というのは、当該事件と裁判所の管轄区域との関係を決定するものであり、これは土地管轄を決める際に機能するキーワードです。この裁判籍については普通裁判籍と特別裁判籍があります。
【普通裁判籍】
普通裁判籍とは、事件がどの裁判所の管轄に属するのかを定めるものであり、事件の種類や内容に関わらず一般的に定められる被告の裁判籍です。訴えは、原則として、①被告の住所地において提起することを要します。②被告が日本に住所がないとき又は住所が知れないときは居所になります。③居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所になります。①がなければ②、②がなければ③というふうに段階的に決められていくことに注意が必要です。
被告が法人等団体であるときはどうなるかというと、①当該法人等団体の主たる事務所・営業所になります。②主たる事務所・営業所がないときは代表者その他の主たる業務担当者の住所になります。これも①がなかったら②というふうになります。
それでは外国の社団又は財団の場合どうなるか。①日本における主たる事務所又は営業所によります。②日本国内に事務所又は営業車がないときは日本における代表者その他の主たる業務担当者の住所になります。これも①がなかったら②というふうになります。
【特別裁判籍】
特別裁判籍というのは、特定の訴訟につき事件の特性に応じて、普通裁判籍に加えて認められる裁判籍です。普通裁判籍と競合するわけで、原告は競合する普通裁判籍、特別裁判籍、競合する数個の裁判籍のうち、いずれかを選択すればよいということになります(5条、6条)。
以下大まかにまとめます。
①財産上の訴え 義務履行地(5条1号)。もともと債務を履行するのが原告の住所地であれば、被告の住所地だけではなく原告の住所地で訴えることもできるということです。
②手形・小切手金支払請求 支払地(5条2号)。手形・小切手には振出地と支払地が載っていますが、義務履行地は支払地の方になるのはいうまでもないです。決して振出地でないことに注意を要します。よく試験で問われますね。
③日本に住所のない者・住所が知れない者に対する財産上の訴え 請求の目的物の所在地、請求の担保の目的物の所在地、差し押さえることができる被告の財産の所在地(5条4号)。結局、これは被告が日本に住所を有さなくても、財産のある場所で訴えることができるというだけですね。
④不法行為に関する訴え 不法行為地(5条9号)
⑤不動産に関する訴え 不動産所在地(5条12号)
⑥登記・登録に関する訴え 登記・登録をすべき地(5条13号)
⑦相続権、遺留分、遺贈等に関する訴え 相続開始時の被相続人の普通裁判籍の所在地(5条14号)
原告が一つの訴えで数個の請求をする場合、一個の請求につき管轄権があれば、当該裁判所は、その他の請求についても管轄権を有します(7条)。ただし、共同訴訟の場合は、数人について権利義務が共通又は同一の原因に基づくときにのみ適用があります。
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