ロックは常に反逆者であり続けた。
体制は伝統を押し付け、旧態依然とした価値観を押し付け、不平等を押し付け、大衆の言葉には耳を貸さなかった。
そんな父権を振りかざす体制に敢然と異を唱えるのがロックの役割だった。
しかし今、体制は大衆の言葉に耳を傾け、不平等を是正し、新しい価値観への脱皮を促すようになった。
体制は、妙に聞き分けのいい、子供に優しい大人になってしまった。
敵対する父権というエディプス・コンプレックスが失われた時、ロックは何に対して反逆し、何に楯突けばいいのだろう。
日本のロックは今や何かに楯突くことをやめ、愛の歓びや美しい努力や出逢えたキセキばかりを唄うようになってしまった。
拓郎や尾崎が魂を振り絞って呻いた、切実な訴えはそこにはない。