その1、その2、その3と掲載してきた、WWDC総括インタビュー。最終回となるその4は、iPhone用ソフトと、その販売サイトである「App Store」がテーマだ。
初代iPhoneはもともとサードパーティーにはアプリが解放されておらず、アップル純正のものしか利用できない仕様だったが、ユーザー側でこのプロテクトをかいくぐって自作アプリをインストールするハックも生み出されていた(「Jailbreak」と呼ばれるツールを用いる)。こうした経緯を経て、アップルが自らサードパーティーにソフト開発の扉を開いたことはどんな影響をもたらすのだろうか? ジャーナリストの林信行氏に話を聞いた。
過去のiPhone記事
・iPhoneは大きな森を生み出す「最初の木」(前編、中編、後編)
・なぜiPhoneは人々を熱狂させるのか?(前編、中編、後編)
・林信行に聞く、iPhone日本発売はいつ?(記事)
iPhoneで「一気に世界に打って出れられる」
── ケータイ用のアプリやコンテンツといえば、世界のどの国よりも日本のほうが充実しているイメージがあります。実際どうなんでしょうか?
林 その通りですが、ただし、日本におけるケータイのコンテンツビジネスは、せまいところに多くの会社がひしめきあい過ぎている状況で、最近では業界内で閉塞感が出始めてきたところもあります。
目玉として新しい端末にプレインストールされたり、ケータイ事業者のカタログで紹介してもらえるようなコンテンツはいいとして、それ以外は、なかなか顧客獲得のチャンスが巡ってこなかった。
ユーザーにしてみれば、端末のメモリー制限があったり、月々に支払う料金のことが気になって、ゲームをインストールするとしてもせいぜい1、2個だったという人も多いでしょう。
── 新規に買わずに、端末にプレインストールされていたソフトやコンテンツで満足してしまっている人も少なくないと思います。
林 そうでうね。もちろんその中でもヒットするものもありますが、ほとんどのソフトやコンテンツは携帯のメニューに名を連ねて、ただそこにあるだけという状態で、顧客獲得も望めなかったわけです。これがiPhoneに対応して、App Storeでの販売が可能になると、そこに出荷実績ベースだけで600万人の市場が開けることになります。顧客獲得の機会が増えるという意味で、こういった新しいチャネルの登場は歓迎すべきことでしょう。
しかも、今後は世界68カ国でApp Storeを展開するということなので、一気に世界に打って出れられる。日本では飽きられてしまっているゲームでも、違う国に行けば、まだまだ人気のゲームかもしれないし、多様な世界市場に進出するということは、そういう意味でも大きなチャンスだと思います。