青森・下北半島にある霊場・恐山。そこで深い苦悩や悲しみを抱えた人々に向き合うのが、恐山菩提(ぼだい)寺院代(住職代理)の南直哉さんだ。著書で、今までの倫理や道徳とは違う行いをする人が出てくる時代、仏教はやり過ごすわけにはいかない、と書いている。鋭い語りで知られる破格の禅僧に、この世界と個人の不確かさについて、当地へ赴いて聞いてきた。 百の失敗があるから ――不確かさ。それは現代のどのような断面に現れているでしょうか。 「見知らぬ女性から、会いたいと電話がありました。ここ恐山まで来るからには切実な悩みがあるはず。会ってみると、きゃしゃな若い人で金髪、耳にピアスをしていました」 「『きょうは、どういった悩みで来たの?』と問うと『どうなんでしょうね』。『でも、何かないとここまで来ないでしょ』と言っても『別に……』。やがてふと、2度自殺未遂をしたと打ち明けました。『こんなふうに生きているんだったら