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IT産業の歴史は半導体の技術革新と重なり、最前線では半導体プロセッサーが活躍し、世の中を変えてきた。今は生成人工知能(AI)の登場で画像処理プロセッサー(GPU)が主役に躍り出た格好だが、AIの社会実装が進む中でデータセンター(DC)からエッジ(現場)まで、さまざまな形で多様な計算処理が求められるのは必須。これを見据え、国産の次世代プロセッサーの開発も進む。にっぽん・プラスXの先駆けとなりそうだ。(編集委員・斉藤実) 生成AIは大規模言語モデル(LLM)がカギとなり、その学習には膨大な計算パワーが必要となる。そこで一躍脚光を浴びたのは並列処理に強い米エヌビディアのGPUであり、当面、GPUの需要は揺るぎない。 一方で、米グーグルの「TPU(テンソル・プロセッシング・ユニット)」など、AIに特化した専用プロセッサーが続々と登場している。GPUを含め、これらAIの専用プロセッサーが担う役割は学
東北大学が国際卓越研究大学として認められた。卓越大の公募が始まったのは2022年の12月。2年かけてようやく出発点に立った。24年度内に154億円が振り込まれ、新しい大学像を作っていく。課題は極めて高いKPI(重要業績評価指標)設定だ。無理に達成しようとすると学術を歪(ゆが)める可能性さえある。卓越大は次回公募が始まった。丁寧な検証が必要になる。 「トップ10%論文に関しては本当に頭を悩ませている。ただ基本は良い論文を書くこと。本当に研究力を高めることが王道だと考えている」―。東北大の冨永悌二総長は説明する。KPIの一つに若手研究者のトップ10%論文割合を25%に引き上げるという目標がある。トップ10%論文とは被引用数の多い上位10%の論文を指し、この数が研究力を表すと考えられてきた。 世界と同水準で研究し、自然に任せていると10%になる。だが日本は5・1%。13・0%の英国や11・6%の
国際ロボット連盟(IFR)がまとめた調査によると、2023年のロボット密度(従業員1万人当たりの導入台数)で、中国がドイツと日本を追い抜いて世界3位になった。中国は約3700万人の製造業労働人口を持つが、自動化技術への大規模投資を継続している。また23年のロボット密度の世界平均は162台で、7年前の74台と比べて2倍以上に伸長した。 中国の従業員1万人当たりの産業用ロボット台数は470台で、この4年間でロボット密度は倍増した。 世界首位は韓国で同1012台だった。韓国のロボット密度は18年以降、年平均5%のペースで上昇。電子と自動車産業が産業用ロボット需要を支えている。 2位は同770台のシンガポール。4位はドイツの同429台で、日本は同419台で5位となった。自動化投資に期待がかかる米国は10位だった。今後も製造業における自動化の進展に期待がかかる。
東海理化はバッテリー容量が現行比2倍以上となる革新的なリチウムイオン電池(LiB)の社会実装を支援する。同技術を手がける名古屋大学発のベンチャー、NU―Rei(エヌユーレイ、名古屋市千種区)に出資した。電気自動車(EV)など向けに技術供与を狙う。東海理化が開発を進める家庭用蓄電池システムにも同技術を活用して小型化し、普及を加速する。 NU―Reiと名古屋大の低温プラズマ科学研究センターが共同開発したLiBは、従来のグラファイト負極材の代わりにプラズマで生成したナノグラフェンを使用。これにより容量を向上できる。 東海理化の長尾貴史技術開発センター長は「全固体電池よりも上を行く技術」と期待する。発火リスクが低い、充電が早い、自然放電が少ないなどの特徴がある。 バッテリーメーカーへの技術供与によりロイヤルティー(使用料)を得るビジネスモデルを検討。また東海理化が開発中の蓄電池システムに使用するこ
2024年の自動車業界はコロナ禍や半導体不足が緩和し総じて好調だった23年から一転し、厳しい環境となった。要因の一つが中国市場の苦境だ。新エネルギー車(NEV)が急伸し、ガソリン車中心の日系各社の販売は低迷。事業再構築も迫られた。中国メーカーの猛威はやまず、世界市場にも影響を及ぼしている。 中国市場は政府の消費振興策や自動車各社の新車投入などにより需要は堅調だ。けん引役は電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)などのNEV。中国メーカーが伸長する中、日系メーカーは苦戦した。 マークラインズによると日系各社の1―10月の中国累計販売台数はトヨタ自動車が前年同期比9・3%減、ホンダが同31・0%減、日産自動車が同10・0%減。トヨタとホンダは9カ月連続、日産は7カ月連続で減少し低迷が続いた。 一方で比亜迪(BYD)をはじめとする中国メーカーは躍進が続く。1―10月の市場シェアは中
大阪メトロと名古屋大学は、カーボンナノチューブ(CNT)電極を用いた有機薄膜太陽電池(OPV)の実証実験(写真)を大阪市城東区の未来モビリティー体験型テーマパーク「eMETROモビリティータウン」で始めた。主流のシリコン太陽電池に比べ軽量で柔軟性がある太陽電池の耐久性などを検証し、建物の壁面や乗り物の窓面への設置などを検討する。CNT電極の太陽電池の実証実験は世界初という。 同テーマパークに展示している地下鉄車両の窓面に、CNT薄膜透明電極を裏面電極に適用した10センチメートル角のモジュールを設置し、発電量などを記録する。実験期間は2025年10月下旬まで。 CNT電極のOPVは建物を補強せずに屋根や壁面に設置可能。両面受光でき、室内の蛍光灯なども活用できる。同じく次世代太陽電池として開発されているペロブスカイト太陽電池と比べ、エネルギー変換効率は劣るが耐久性は上回る。 【早くも4刷】次世
いすゞ自動車の普通自動車運転免許で運転可能な小型ディーゼルトラック「エルフミオ」の受注が好調だ。7月末に発売し4カ月間で約1500台を受注。従来、軽トラックやワンボックス車両など普通免許で運転できる別の車をやむを得ず使っていた事業者らの乗り換えに加え、一般向けのレンタカー用途など思わぬ需要が生まれているという。 いすゞは運転手の裾野拡大を目指し、最大積載量1・35トンを確保した上で、普通免許で運転できる車両総重量3・5トン未満の車としてエルフミオを発売した。ディーゼルエンジンを搭載した同様のトラックはエルフミオ以外にないため比較は難しいが、小型トラック「エルフ」の最大積載量1・5トン級モデルの2023年の販売台数は約1700台だった。GR国内事業推進部の宇野博部長は「エルフミオは4カ月で同等の受注をいただいた」と自信を見せる。 軽トラックユーザーらが普通免許でより多くの荷物を詰めるエルフミ
日産自動車は金型製作時の磨き作業を機械化する切削工具を開発した。北米向けの高級車ブランド「インフィニティ」の旗艦モデル「QX80」の外板部品用の金型製作で同工具を採用した。金型の高精度化・高品質化により意匠性を高められるほか、熟練作業者による重作業を削減し働きやすい環境づくりに貢献できる。 開発した「金型磨きレス加工用工具」は、切削加工と加工面を平滑にするバニシング加工を同時に行う立方晶窒化ホウ素(CBN)ボールエンドミル。刃先に特殊研磨を施し、切り粉の発熱と刃先の摩耗を抑制。刃先形状と最適な加工条件により、工具の回転数や送り速度を変えることなく面粗度を向上できる。 通常の切削加工に比べて加工時間はかかるものの、後工程の人による磨き作業を削減することで「全体としては加工時間の短縮が図れるほか加工品質を向上できる」(車両生産技術開発本部)という。今後は技術開発を進め、順次適用する車種を広げる
再建の切り札、協業模索 経営再建中のジャパン・ディスプレイ(JDI)にとって、独自技術による次世代有機ELパネル「eLEAP(イーリープ)」は、起死回生の切り札となる技術だ。2024年は大規模量産化をめぐる中国の地方政府との交渉が暗礁に乗り上げるなど、多難な年だった。 イーリープは従来型の有機ELと比べて輝度が2倍、寿命を3倍に延ばせる。さらに曲線を持つ自由な形状も作れるなどの特徴がある。25年3月期に11期連続で連結当期赤字を見込むJDIにとって、イーリープの事業化は死活問題になる。 JDIでは23年9月、中国・蕪湖市の技術開発区と基本合意書(MOU)を結び、将来的に現地で工場を稼働し、イーリープの量産に乗り出す方針だった。ところが最終契約の交渉は度々延期され、24年10月には計画が白紙撤回された。 JDIのスコット・キャロン会長兼最高経営責任者(CEO)は「地政学リスクが要因」と説明。
ヨコオは車載アンテナを顧客の求める理想の形に設計するために人工知能(AI)を用いる。従来、人が最適な形状を探していたが、長さなどの組み合わせが膨大で時間を要することが課題だった。AIの利用で複数の答えを得られるため、顧客の満足度向上にも寄与する。設計にAIを使うだけでなく、業務の効率化を目的に生成AIの活用も促す。製造現場に限らず幅広い部門でAIの利用を後押しする。 ヨコオが製造現場でAIを活用し始めたのは2020年ごろからだ。顧客の要求に応えるためには、複数の組み合わせから最適な答えを見つける必要がある。経験者と新人では探索に要する時間に差があることや「人間だとたどり着けない形状を見つけ出せる」(技術本部先行技術開発部の広木星也氏)ため、AIの導入を決めた。 具体的には、最適解を見つけるために設計者を支援するツール「モードフロンティア」を用いてアンテナの形状を設計する。モードフロンティア
丸紅が陸上養殖で生産されたサーモンの出荷を開始した。ノルウェーのプロキシマーシーフードが静岡県小山町の陸上養殖施設で育てたサーモンを、独占販売契約に基づき国内に供給する。陸上養殖は水を濾過して再利用するため餌や排せつ物による海洋汚染を防げるほか、サーモンの輸入に伴う二酸化炭素(CO2)排出量の削減にも寄与する。世界人口の増加に伴う食料需給の逼迫(ひっぱく)が懸念される中、環境に配慮しながら食料安全保障の確保を推進する。(編集委員・田中明夫) 丸紅とプロキシマーは国内の鮮魚店や量販店など向けに2025年末までに約4700トン、フル稼働となる27年には年間約5300トンのサーモンの出荷・販売を計画する。サケ類の陸上養殖施設としては現時点で日本最大級の規模となる。 サーモン生産は水温が低くフィヨルド(峡湾)によって波が穏やかなチリとノルウェーで海上養殖が盛んだが、排せつ物などによる汚染が問題とな
ホンダは21日、開発を進める全固体電池のパイロットラインを栃木県さくら市内に建設したと発表した。2025年1月の稼働開始を予定。投資額は約430億円。全固体電池は航続距離や価格、充電時間など電気自動車(EV)の課題を解決する「ゲームチェンジャー」として期待されている。量産化に向けた技術検証を行うとともにバッテリーセルの基本仕様を決定し、20年代後半に投入する電動車への搭載を目指す。 パイロットラインは本田技術研究所(埼玉県和光市)がさくら市に構える拠点の敷地内に建設した。延べ床面積は約2万7400平方メートル。電極材の秤量(ひょうりょう)・混練から塗工、ロールプレス、セルの組み立て、化成、モジュールの組み立てまで量産で必要な一連の生産工程を再現した。各工程の量産技術、量産コストなどを検証する。 従来のリチウムイオン電池(LiB)の製造プロセスを基に、全固体電池特有の工程となる固体電解質層の
幅広い視野の獲得に役立つ書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、10分で読めるダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、SERENDIP編集部が、とくにニュースイッチ読者にお勧めする書籍をご紹介しています。 「VTuber」とは何か? どこからきたのか? 「VTuber」と聞いてすぐにピンとくるだろうか。「Virtual YouTuber」のことで、ざっくり言うと、3DCGキャラクターに扮して実況動画を配信する人のことだ。2016年にキズナアイがYouTubeに最初の動画を投稿して、「バーチャルユーチューバー」と名乗ったのが始まりとされる。日本発のコンテンツであり、まだ誕生して8年しか経っていない。 当初、海のものとも山のものともつかなかった「VTuber」だが、いまや世界から注目を集める。ある調査会社によれば、世界のVTuberの市場規模は2028年に1
東京理科大学の関根紗綾大学院生と保坂知宙助教(現スウェーデン・チャルマース工科大学)、駒場慎一教授らは、ナトリウムイオン電池材料を機械学習で探索し、高エネルギー材料を開発した。エネルギー密度は1キログラム当たり549ワット時。実験の効率化と材料開発の高速化を達成した。リチウムに依存しない電池になり得る。 研究室で蓄えてきた層状酸化物68種類の100データを人工知能(AI)モデルに学習させた。AIモデルは遷移金属の組成と上限下限電圧から初回放電容量や平均放電電圧などを予測する。1万物質の性能を予測し、そのうち205物質が有望と示唆された。 実際にナトリウムにマンガンとニッケル、チタン、鉄を添加した酸化物「MNTF」を合成した。すると初期放電容量は1グラム当たり169ミリアンペア時で平均放電電圧は3・22ボルト、エネルギー密度は1キログラム当たり549ワット時となった。AIモデルの予測値とほぼ
法人向けに来春めど投入 京セラは法人向けのWi―Fi(ワイファイ)対応タブレット端末を2025年春をめどに発売する。NFCカードリーダー機能を端末に搭載したことで、飲食店などで注文から決済まで1台のタブレット端末で対応できるようにする。飲食業界の人手不足に対応し、業務の効率化に貢献するのが狙い。価格は非開示。日本国内の飲食業界を主な販売先として想定し、同業界向けに30年までに100億円の売り上げを目指す。 新製品は顧客の選択肢を増やすため、NFCカードリーダー機能を搭載した端末「KC―T305CN」と未搭載の端末「KC―T305C」の2機種をそろえた。京セラの従来品「KC―T304C」の後継機種。端末の画面の下にある板金を加工し、下部にアンテナを配置したことで、画面にカードをかざして決済をできるようにした。 また、端末裏面の塗装を無くして傷を目立ちにくくしたほか、最大充電容量を通常時の60
日本半導体製造装置協会(SEAJ)が24日発表した日本製半導体製造装置の9月の販売高(速報値、7―9月の3カ月移動平均ベース、輸出含む)は、前年同月比23・4%増の3695億9800万円で、9カ月連続のプラスだった。生成人工知能(AI)で使われる広帯域メモリー(HBM)の伸びや、中国の装置需要が寄与した。 中国向けは引き続き好調を維持しているものの、今後は需要が一巡し、販売高に占める割合が低下するとSEAJはみている。 代わりにDDR5など、最新世代メモリーの設備投資の活発化を予想する。現在はメモリーではHBM向けの投資が大きいが、より生産数が多いメモリーも投資が回復する。 【関連記事】 世界の半導体工場で、揺るぎない信頼を集めるクリーン搬送装置
提供責務負う地域を限定へ NTT法見直しを議論する情報通信審議会(総務相の諮問機関)の三つの作業部会で報告書案が出そろった。NTT法は自民党が2025年をめどに廃止を目指すとしていたが、今回の議論では一部の修正があるものの維持される可能性が高まった。ただ、携帯電話網を用いた固定電話をユニバーサル(全国一律)サービスにすることが適当とする文言が入った。時代に合った通信政策の実現に向け、さらなる議論の深掘りが求められる。(編集委員・水嶋真人) NTT法では電話を全国あまねく提供することをNTTの責務とする。22年の電気通信事業法の改正で固定電話と固定ブロードバンドがユニバーサルサービスを担っている。NTTは老朽化により銅線を用いた固定電話用メタル回線設備を35年に縮退する方針を示す一方、ユニバーサルサービスについて携帯通信を軸とした制度とするよう求めた。 これに対し、報告書案では、30年ごろで
欧州自動車メーカーが苦境に立たされている。最大市場のドイツでは新車需要が停滞し市場競争が激化。欧州最大手フォルクスワーゲン(VW)が国内工場の閉鎖を検討するなど各社が経営戦略の見直しを迫られている。環境規制に対応するためここ数年で急速な電気自動車(EV)化を進めてきた欧州メーカー。中国・比亜迪(BYD)など新興メーカーが台頭する中、世界の自動車産業をけん引してきた伝統企業は再び競争力を発揮できるか。(編集委員・村上毅) 中国台頭で苦戦、新車販売停滞 「欧州の自動車産業は非常に厳しく、深刻な状況だ。製造拠点としてのドイツは競争力で後れを取っており、断固として行動しなければいけない」。VWのオリバー・ブルーメ最高経営責任者(CEO)は9月に発表した声明の中でこう危機感を募らせた。 VWは1937年の創業以来初となる国内工場閉鎖の検討を始めた。ドイツはエネルギーコストが上昇し人件費も高騰している
人工知能(AI)モデルに物理法則を学ばせ、気象予測や材料設計などの科学シミュレーションを高度化する研究が広がっている。理化学研究所革新知能統合研究(AIP)センターの上田修功副センター長は地殻変動解析を3次元的に広がる断層に対応させた。地下水分布などの粘弾性のある地下構造も予測できる。AIが科学研究に浸透して進歩させている。(小寺貴之) 「PINN(物理法則に基づく深層学習)のポテンシャルは高い。既存の有限要素法(FEM)と並ぶアプローチとして共存していくだろう」と上田副センター長は期待する。PINNでは偏微分方程式を深層学習で解く。AIモデルに初期条件や境界条件、物理法則を満たすように学習させ連続的な解を得る。FEMでは地下構造をメッシュデータに直して計算していた。PINNでは連続的な構造を扱える。地表面が凸凹になっていたり、地下水脈が通っていたりと不均質で自然に近い地殻変動を計算できる
東洋建設は海洋工事におけるワイヤの玉外し作業で、水中と陸上の両方で無人化を実現する装置「MIX(ミックス)」を開発した。切り離しフックに音波と電波の無線通信機能を装備しているため遠隔地から操作でき、人手による作業が不要となる。今後、同装置の活用を通じてブロック据え付け時の無人化技術の確立に取り組み、安全性と作業効率の向上を目指す。 通常の消波ブロックの据え付けでは、水中の基礎上から水面上までブロックを積み上げていく。その際の玉外し作業は潜水士や作業員の人手で行う。海域でのブロック据え付けは作業船が波浪の影響で動揺する中で行われるため、潜水士や作業員がブロックに挟まれる災害の発生が懸念されている。 開発した同装置を使用することで玉外し作業を無人化でき、ブロック据え付け工事における安全性が向上する。また無線の同時通信によって、水中や気中だけでなく水面際の飛沫(ひまつ)帯でも装置を入れ替えずに据
ジェイテクトや豊田合成が手がける水素関連部品が、トヨタ自動車が開発した持ち運び可能な「ポータブル水素カートリッジ」に採用された。水素を手軽に、幅広い用途で使用できる同カートリッジの安全性や利便性向上に貢献する。 ジェイテクト、豊田合成の両社はモビリティー向けをはじめ、生活圏での水素利活用拡大に寄与する部品の提供を目指す。 ジェイテクトは17日、同カートリッジに「カートリッジバルブ」が採用されたと発表した。同製品のタンクに装着し、高圧水素を燃料電池(FC)に供給する。水素を外部に漏らさない安全性や、ワンタッチ着脱などの操作性を実現した。 トヨタの燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」に搭載する「高圧水素供給バルブ」の開発技術や量産実績を生かして開発した。現在は水素エンジン車向けの「高圧水素減圧弁」の開発にも着手している。 豊田合成は同カートリッジ向けに高圧水素タンクを提供する。同タンク
経済産業省は6日、電気自動車(EV)用車載電池や部素材などの生産増強に向け、トヨタ自動車や日産自動車、パナソニックホールディングス(HD)などの設備投資計画を支援すると発表した。総投資額は1兆70億円で、そのうち最大3479億円を助成する。国内の電池生産能力は、従来比約40%増の1億2000万キロワット時に引き上がる見通し。世界での調達競争激化を受け、政府は電池のコスト低減やサプライチェーン(供給網)強靱(きょうじん)化を加速する。 経済安全保障推進法に基づき、計12件の設備投資、技術開発計画を認定した。設備投資には総事業費の3分の1を、技術開発には2分の1を補助する。政府は国内の電池生産能力を、2030年までに1億5000万キロワット時にする目標を掲げている。 SUBARU(スバル)やマツダはパナソニックエナジーと組み、車載用リチウムイオン電池(LiB)を生産する。パナソニックエナジーは
全日本空輸(ANA)は2日、空気の摩擦抵抗を低減して最大で燃料消費量を約1%減らせる“サメ肌”フィルムを実装した航空機の運航を開始した。独ルフトハンザテクニックなどが開発したフィルムで、アジア初運航となる。既存機体の燃料消費を直接減らす技術は非常に難しく、「1%は今までとケタの違う削減」(ANA)だという。1%は小さなものではなく、大きな前進だ。(梶原洵子) ANAはボーイング777型貨物専用機(フレイター)の胴体の約7割にルフトハンザテクニックと独BASFが開発したリブレット加工フィルム「エアロシャーク」を施工し、2日に就航した。1機当たりの燃料消費量を年間250トン、二酸化炭素(CO2)排出量を同800トン削減できると見込む。2025年春に2号機として同型の旅客機を就航する。2機で効果を確認した上で、同型機材への拡大を進める。 同社は50年のカーボンニュートラル(温室効果ガス〈GHG〉
エナジーウィズ(東京都千代田区、吉田誠人社長)は、鉛蓄電池の約4倍の寿命性能を持つニッケル亜鉛電池の提案を始めた。既に工場内の無人搬送車(AGV)用途として顧客に提供し、電池性能試験を開始した。事業拡大に向け、同電池のマーケティングなどを担う専門部署を4月に設立済み。2027年の発売に向け、自動車のエンジン始動用や補機用といった当初想定した用途のほか、展示会などを通じて新たな使い道も探る。 ニッケル亜鉛電池は水系アルカリ電解液を用いた安全性の高い二次電池で、エネルギー密度が高いのが特徴。水系電解液のため化学反応時に水素が発生せず、発火の危険性が低い。電解液をセル内で含浸させており、電解液の量を少なくでき、電池の軽量化にもつながる。 同電池は正極にニッケル、負極には安価で豊富な資源である亜鉛を用いる。エナジーウィズは新たなセパレーター技術や電解液の添加剤、負極バインダーを選定し、寿命性能を改
ロームは同社の炭化ケイ素(SiC)パワー半導体を搭載したモジュールが、中国・浙江吉利控股集団(ジーリー)の電気自動車(EV)「ジーカー」3車種のトラクションインバーターに採用された。中国・正海集団との合弁会社を通じ、ジーリー傘下の1次サプライヤー(ティア1)にモジュールを提供する。ロームはオン抵抗を低減した新製品の投入計画を前倒しするなど、SiCパワー半導体で攻勢をかける。 採用されたのは、ジーカーの小型スポーツ多目的車(SUV)「X」、ミニバン「009」、スポーツワゴン「001」の3車種。ロームの第4世代SiC金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)ベアチップが採用された。ロームは2021年に第4世代を市場投入。オン抵抗を約30%低減した第5世代を25年に市場投入予定で、28年に市場投入予定だった第6世代は27年に前倒しする。 【関連記事】 パワー半導体の規模拡大に消極的だっ
NTTドコモが店頭での顧客対応をテコ入れする。オンライン申し込み専用の携帯通信料金プラン「ahamo(アハモ)」契約者がドコモショップや家電量販店など計約3800店舗で機種変更できる取り組みを開始。量販店のスタッフを増やして顧客満足度を上げる施策も始めた。携帯端末買い替えサイクルの長期化、非通信サービスを含むポイント経済圏の競争激化という携帯業界の変化に対応し、シェア下落傾向に歯止めをかける。(編集委員・水嶋真人) 「アハモ提供から3年がたち、機種変更の時期を迎える契約者が徐々に増えている」。ドコモahamo推進室の田端孝平担当課長は、アハモ契約者が店頭で機種変更できるキャンペーン「ahamo機種変更フェア」を7月末に始めた要因をこう説明する。 21年3月に投入したアハモは、新規契約や手続きをオンラインのみで受け付けることにより、月間データ通信量上限20ギガバイト(ギガは10億)で月額29
日本の研究開発を支える資金配分機関(FA)の人繰りが課題になっている。科学技術政策の財源が補正予算で措置される金額が増えたためだ。基金化され、予算は数年間にわたって使いやすくなった。だが、それを管理する人材は事業が終わると組織から去っていく。組織に管理ノウハウが残らず、ITで業務を効率化しても人的余裕ができない組織もある。アウトソースを含め、FA間で連携し戦略的に人材を確保する必要がある。(小寺貴之) NICTなど自前育成の動き 「うちに限らず、どのFAも人材不足になっている。もともと人口が少ないところで人の取り合いが起きている」と情報通信研究機構(NICT)の徳田英幸理事長は説明する。2020年代は大型の科学技術政策が補正予算として措置されてきた。FAにとっては運営費交付金の数倍の基金予算を管理する事態になっている。例えば日本医療研究開発機構(AMED)の22年度の総収入は基金事業を含め
アルバックはコンソーシアムに参加し、アドバンスドパッケージングの技術開発を進める(ポリマー材料に対するプラズマエッチングのSEM画像) 先進後工程に参入 半導体製造装置各社に新たな成長領域が生まれている。先進後工程の「アドバンスドパッケージング」だ。生成人工知能(AI)向けの半導体には回路の微細化に加え、アドバンスドパッケージングの技術が欠かせない。従来の後工程よりも複雑な製造方法が求められる中、前工程の製造技術を応用し、各社が参入を狙う。(小林健人) 生成AI向け需要急増 前工程用装置を応用 アドバンスドパッケージングはチップ同士を横や縦方向に密接に接続して、性能向上を目指す技術のことだ。これまで半導体の性能向上に寄与してきた回路の微細化に限界が見えてきたことから、各社は新たな技術の開発に力を入れる。 需要が急速に増す背景には生成AIがある。AIデータセンター(DC)で使われる米エヌビデ
積み荷に合わせ形態自在 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業が開発した新型の大型基幹ロケット「H3」3号機が打ち上がり、H3で初の大型衛星の輸送に成功した。H3は積み荷によって形態をカスタマイズできる特徴があり、さまざまな条件に対応できるよう技術をアップデートしている。積み荷を宇宙に輸送する機会を活用し、サブミッションとしてさまざまな技術を実証する。打ち上げのたびに進化するH3の技術開発を追った。(飯田真美子) H3には積み荷の大きさや投入する軌道などに応じて、メーンエンジンや補助ロケットの個数、積み荷を搭載する先端部分のフェアリングの大きさなどを選んで組み合わせて作れる特徴がある。これまで打ち上げた3機のH3はメーンエンジン2基と補助ロケット2基、短いタイプのフェアリングを採用した。これ以外に、H3での宇宙輸送が従来機「H2A」の半額となる約50億円で打ち上げ可能なメーンエンジン
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