ムスタファという3歳児が底辺託児所に来ている。 母親に連れられて生後6か月の妹と一緒にエジプトから渡英したばかりで、全く英語の喋れない、痩せこけた黒人少年である。 託児所に来るようになった子供は、最初は人見知りをする、母親を求めて泣くなどして落ち着かないのが当たり前だが、ムスタファの場合はその様子がすこぶるサッドである。というのも、彼は3歳児のくせに無言でさめざめ泣くからである。 初日、2日目と、専属のような形で彼の担当に回されたが、機嫌よく静かに遊んでるなあ。パズルで。と安堵しながらふっと彼の顔を見てみれば大粒の涙が頬にぽとぽとこぼれ落ちたりしていて、「子供の癖に、沈黙のうちに泣くのはやめなさい。ぎゃあ、とか、ひゃあ、とか言いなさい。物凄く悲しいから」と思わず叱りたくなるのは、それはきっと、わたしがこういう男に弱いからなのだろう。 つぶらな瞳で何事かを一生懸命に訴えられたって、こっちは何