上野玲『うつは薬では治らない』(文春新書)は読む価値がない悪書だ。 本書の内容をひとことで要約すると、以下のようになる。 「うつ病」は製薬会社が薬を売るために、神経科医と共謀してでっち上げた病気であり、実際にはひとくちに「うつ病」と言っても、百人百様で、ひとくくりにはできない。 こういう論理構造を持つ本は他にもたくさんあるが、本質的な矛盾がある。 人間は世の中にあるさまざまな現象の中から、共通点を見つけ出して、一つの言葉で表現する。それによって、複雑な世界を概念で整理して、それが問題であれば解決の糸口を見つけることができる。 「新自由主義」「ドップラー効果」「サブプライム」「平均律」「少子化」「弁証法」など、世の中の複雑な現象を、一つの言葉で表現することで、問題として扱いやすくなる。 文系の学問、理系の学問に限らず、このように複雑な世界を概念で整理し、問題化し、それに解決を与えることで、