「近くまでくれば、ごま油の香りがしてくるから、どこだかすぐにわかるわよ」。私が初めてこのお店に誘われたときに友人から言われたこの台詞を、今では私がそっくりそのまま使わせてもらっている。「石頭楼(スウトウロウ)」は、ほとんどメディアで紹介されることのない、“紹介制”というクローズドなお店である。お店とはいえ、住宅街にあるごく普通の一軒家。初めての人にとっては、“ごま油の香り”こそが、このお店を認識する唯一の目印ならぬ鼻印である。名物は石頭火鍋で、テーブルにセッティングされた分厚く黒光りする石の鍋は迫力満点。聞けば、この鍋は石焼ビビンパでもおなじみ、角閃石という遠赤外線効果のある鍋で特注品。なんと12キロもある。 この鍋に、なみなみとごま油を注ぎ、熱々になったところで豚肉をじゃぶじゃぶ。それを引き上げたと思ったら、今後は牛肉をじゃぶじゃぶ。こうして、肉の旨みを閉じ込めるのだ。そして今度は、鳥ガ