30歳で役を得た『冬のライオン』以来、出演した映画はおよそ80本。その豊かなフィルモグラフィーの中でも、アンソニー・ホプキンスが「最高にお気に入り」と誇るのが、83歳の今、公開を迎える『ファーザー』だ。 フランスの演出家で劇作家のフロリアン・ゼレールが自らの戯曲を映画化した今作でホプキンスが演じるのは、認知症を抱えた高齢男性。 アンソニー・ホプキンス 「私たちはみんな、若く、希望に満ちているところから始まる。だが、終わりに差しかかると、いろいろなところが崩壊し始め、多くを失い、再び子供に戻る。そして最後は塵となり、元の場所に帰っていくんだ。明るくはなくても、深く、意味のあるメッセージ。人生は大変なんだよ。誰にとっても、生き続けるだけでバトルなんだ」 ホプキンスが語るとおり、『ファーザー』は、年老いた人が、いかに弱く、儚くなっていくことがあるのかを、人間的な優しい目で見つめる傑作だ。認知症を