(著) 山拓 神経解剖を学ぶと、次のような疑問は自然と生じると思います。それは「なぜ脳では対側支配(contralateral innervation)があるのか」というものです。ここでの対側とは、身体の正中線に対し反対側のことを指します。例としては左運動野が右側の筋群を、右運動野が左側の筋群を制御するといった対側制御(contralateral control)が挙げられます。何ともややこしい配線ですが、なぜ同側支配ではダメだったのでしょうか?対側支配をする利点はあるのでしょうか? かなり基本的な内容に対する疑問ではありますが、この問題はRamón y Cajalの1898年の論文に端を発します (Ramón y Cajal. 1898)。古くはHippocratesも、左頭部負傷が右の筋群の運動に影響を与えることを知っていたようです (Vulliemoz et al., Lancet
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