|
IEを30枚以上開いていた時代を再現。他のアプリケーションが起動しなくなることも……
|
皆さんはインターネットでWebサイトを閲覧する時に、どんなブラウザを使っているだろうか? 筆者は長い間Windowsパソコンに標準で搭載されているInternet Explorer(以下IE)を愛用していたのだが、熱心にWebサイトを巡回している時、いつの間にか30枚もIEのウィンドウが起動しているなんてことが頻繁に発生していた。
30ものIEウィンドウを開いてしまうと、筆者のパソコンではIEが動かなくなり、タスクバーが硬直してしまう。どうしようもなくなり一生懸命IEを閉じていると、3日前に開いたWebサイトが発掘される始末。もっとも、「IEって30枚くらいしか開かなくて困るよねー。」とさりげなく愚痴をこぼした時、「それは開きすぎじゃないか。」と冷静に返されるのが常だったわけで、ここまでの枚数を開く方が珍しいと自覚している。
ただ、最近はブログやソーシャルネットワークの登場など、インターネットのサービスもますます充実し、得られる情報も増えてきている。「このサイトとあのサイトの情報を比較してみよう」なんてこともあり、ブラウザを開く枚数が徐々に増加していると感じているのだ。ここでウンウンと頷いてしまった、もしくはうっすらと同意しかけてしまった皆様にオススメしたいのが「タブブラウザ」である。
タブブラウザとは、1つのウィンドウの中に複数のページを表示することができるWebブラウザだ。ページごとにタブで管理されるため、複数のページを同時に開いても、「あのページはどこに行ってしまったの?」と迷うことなく快適なWebブラウジングができるという優れモノである。そこで、数あるタブブラウザの中から筆者がお気に入りの「Sleipnir(スレイプニル)」を紹介しつつ、タブブラウザの素晴らしさをお伝えしよう。
■ Sleipnirでタブの便利さを体験しよう!
それではまず、Sleipnirの公式サイトにアクセスして「Sleipnir Version 1.66 日本語/英語版 (インストーラー版) 」をダウンロードしよう。ちなみに、Sleipnirはフリーソフトとして提供されているので、無料で利用できる。このファイルを実行してインストールを済ませると、Sleipnirの初期設定が始まり、ここでIEのお気に入りを引き継ぐことができる。表示方法などの設定も可能だが、特にこだわりがなければ変更せずにそのまま設定を進めていこう。
初期設定を終えるとSleipnirが起動するので、早速「ホーム」や「お気に入り」からWebサイトを開いてみよう。新しいWebサイトを開くと、上部にタブが追加される。このタブをクリックすることで、Webサイトを素早く切り替えながら閲覧することができるというわけだ。
タブにはWebサイトのタイトルが表示されており、どんなWebサイトを開いているのかひと目でわかる。また、すべての作業はSleipnirのウィンドウ内で完結するため、多くのタブを表示したままでも「ウィンドウがたくさん開いて他の作業に影響が! 」なんて心配はなくなるのである。
|
|
初期設定の画面。初期デザインの選択も可能だが、初めての場合は「Internet Ecplorer互換」のほうが使いやすいだろう
|
これがSleipnirでWebサイトをタブ表示したときの状態だ
|
細かいタブの設定は、メニューの「ツール」から「Sleipnir オプション」を開き、「ユーザーインタフェース」の「タブ」で行なうことができる。ここで「タブ上のホイール回転でアクティブなウィンドウを切り替える」にチェックすることで、マウスのホイールを使ってタブを切り替えていくことも可能になる。
タブの表示方法も標準の設定以外に、タイトルを縮小する変わりにすべてのタブを1列で表示する「縮小して表示(1行)」、タブを表示する列を増やしてタイトルの表示幅を確保したまま沢山のタブを表示する「多段表示」という設定が用意されている。タブをスクロールさせたくない場合はこれらの設定を使おう。多段表示ではWebサイトの表示領域が縦方向に狭まってしまうので、「タブの高さを低くする」にチェックを入れて少しでも表示領域を稼ぐとよいだろう。
|
|
「縮小して表示(1行)」に設定したタブの状態
|
こちらは「多段表示」に設定したタブの状態。好みに合わせて設定しよう
|
タブ機能だけでもずいぶん快適になったと感じるかもしれないが、Sleipnirにはより快適なWebブラウジングをサポートする沢山の機能が搭載されているのだ。その中から知っておくと便利な機能をピックアップしてご紹介しよう。
■ 毎日のWebサイト巡回を素早く効率的に!
インターネットを利用していると、毎日のように閲覧するWebサイトが決まってくるのではないだろうか。筆者はニュースサイトや友人のブログ、ソーシャルネットワークサイトなど最低20サイト程度を必ず毎日巡回している。こうなってくると「お気に入り」からひとつひとつWebサイトを開くのは少々しんどくなってくるのである。
そこで役立つ機能が「お気に入りグループ」。通常の「お気に入り」は1つのWebサイトを開くのだが、「お気に入りグループ」ではグループとして登録した複数のWebサイトをカンタン操作で一気に表示することができるのだ。
設定方法は、まずはじめに登録したいWebサイトをすべて開き、メニューの「グループ」から「グループの追加」を選択する。すると現在開いているWebサイトの一覧が表示されるので、グループの名前を設定して「OK」ボタンを押すだけ。もし一覧の中にグループへ登録する必要がないWebサイトが含まれていたらチェックを外そう。登録が終わったグループは、メニューの「グループ」やエクスプローラバーに表示され、それを選択すればグループ登録したWebサイトが一度に開くようになる。
|
|
グループ自体も複数登録することができるので、ニュースのグループ、ブログのグループなどジャンルごとに分けておくと巡回効率もさらにアップするはずだ
|
登録したグループは、メニューの「グループ」やエクスプローラバーに表示され、それを選択すればグループ登録したWebサイトが一度に開く
|
もうひとつ、Webサイト巡回に便利な機能として「スタートアップURL」が用意されている。これを使えばSleipnirを起動すると同時に複数のWebサイトを開くことができる。わかりやすく言えば、「お気に入りグループ」を起動時に表示してくれるという感じだ。
この機能を使うには、メニューの「ツール」から「Sleipnir オプション」を選択し、「全般」の「スタートアップURL」で「スタートアップURLを有効にする」がチェックされているか確認しよう。あとは「スタートアップURLリスト」にWebサイトのURLを追加していけばよい。なお、「Ctrl」キーを押しながらSleipnirを起動することで、「スタートアップURL」を一時的に無効にすることも可能だ。
|
|
「スタートアップURL」は、追加したいWebサイトを開き、メニューの「ツール」にある「スタートアップURLに追加」を選択して追加することもできる
|
スタートアップURLのリストは、Sleipnirオプションで確認できる。
|
■ 検索や翻訳も素早く実行!
Webサイトの検索や、商品の最安値情報の検索、Webサイトの翻訳などなど、インターネットには便利なサービスが数多く登場しているが、Sleipnirではこれらのサービスへ素早くアクセスすることができる。その最たる機能といえば、ツールバーに表示されている「検索バー」だ。これにより、各サービスを提供しているWebサイトに移動してから検索するといったプロセスを省くことができる。さまざまなサービスで検索したい時でも、キーワードの入力が1回で済むというのも嬉しいところだ。
Webサイトの翻訳をしたい場合も、ツールバーの「日英翻訳」ボタンをクリックするだけでOK。エキサイトが提供している「ウェブページ翻訳」へ自動的に接続され、翻訳された結果が一発で表示される。「翻訳ばかりに頼っていたら英語力が身に付かないかも! 」と思いながらも活用しまくっている筆者。便利だから仕方がないのだ。
|
|
Webサイト、ニュース、掲示板、マップなど数多くの検索サイトをはじめから使うことができる
|
「英日翻訳」または「日英翻訳」ボタンをクリックと新しいタブに翻訳結果が表示される
|
■ マウスジェスチャーで操作スピードが大幅アップ!
|
ジェスチャーは削除もできるので、誤動作を防止するためにも使わないと思ったジェスチャーはすっぱりと削除しておくのもよい
|
「マウスジェスチャー」とは文字通りマウスを使ったジェスチャーでSleipnirの操作ができるという機能。あまり馴染みがないかもしれないが、直感的で快適な操作を実現する、カナリ便利な機能である。例えば「戻る」であれば、マウスの右ボタンを押しながらマウスを少し左に動かすだけ。「閉じる」であれば、同じくマウスの右ボタンを押しながら、左、右、左とマウスを動かせば良いのだ。もちろんこの操作はSleipnirのウィンドウ内であればどこでも認識するので、実行したいと思ったその場ですぐに実行できる。
標準でいくつかのジェスチャーが登録されているが、ジェスチャーの変更や追加も可能だ。筆者は「進む」「戻る」「更新」「閉じる」を頻繁に使うのだが、「閉じる」のコマンドである左・右・左(←→←)はちょっと複雑。もっと素早い操作を! ということで、「閉じる」には下・右(↓→)を割り当てることにした。下・右と言っても丁寧に“L”字を描く必要はなく、軽やかに逆“ノ”の字を描けばしっかりと反応してくれる。おかげさまで無駄なタブはすぐ閉じるという癖が付き、気が付いたらタブが増殖していたなんてこともなくなり、快適度はさらにアップしたのである。
■ IDやパスワードの管理も「FormManager」におまかせ!
|
IDとパスワードだけではなく、フォームの入力項目が多いWebサイトでも問題なく利用することができる
|
最近はインターネットで買い物をすることが多く、IDとパスワードによるログインが必要なWebサイトを利用することが多い。こういったWebサイトの場合、頻繁にアクセスする場合は入力が面倒、たまーにしかアクセスしない時はIDやパスワードを忘れてしまって、「これかな? あれかな?」と試しているうちに「連続して異なるパスワードを入力したため一時的にログインのロックをします」と注意されて途方に暮れたり……。こういうWebサイトに限ってIEのオートコンプリートが効かなかったりするのがまた悔しいのである。
このような悩みはSleipnirの拡張機能である「FormManager」でバッチリ解決! 「FormManager」を利用するには、「エクスプローラバー」の上部右隅に表示されている青とオレンジのアイコンをクリックし、プルダウンメニューから「FormManager」を選択する。
次に、WebサイトでIDとパスワードを入力した後、「フォームの取得」ボタンをクリックすればフォームに入力した文字列がSleipnirに登録される。再度同じWebサイトで入力したい時は、「フォームの記入」ボタンをクリックすれば、一発で入力される。IEのオートコンプリートに対応していないフォームでも登録が可能だ。
ただし、気をつけなければいけないのがセキュリティ面。自分以外の誰でもボタン1つでログインできるようになることも忘れてはいけない。パスワードの最後の一文字だけ入力しない状態で登録しておくといった工夫をすると良いだろう。
■ IEから乗り換えたなら?
|
「ウィンドウを閉じた後に表示するウィンドウ」の項目を「アクティブにした順」に変更すれば、リンク先のタブを閉じたときにリンク元のタブへ自動的に戻るようになる
|
Sleipnirをオススメした理由のひとつに、操作感がIEとほとんど変わらないということがある。確かにタブ機能やその他諸々の便利な機能が搭載されているが、IEの機能はすべて盛り込まれており、メニューやツールバーのレイアウトも基本的な所は変わらない。もちろん、IEのお気に入りやオートコンプリートなどの設定も確実に引き継いでくれる。そのため、Sleipnirに移行した後でも新しく覚えることが少なく、今までと同じ感覚でとりあえず使うことができるのだ。
ただ、Sleipnirの標準設定では、リンクをクリックして新しいタブを開いた場合、リンク先のタブへフォーカスが移らずに、リンク元のタブが表示された状態になる。新しいウィンドウを開くと最前面に表示されるIEとは、ちょっと感覚が違うのだ。どちらが良いのかと言われると好みの問題となるのだが、「IEを使い続けて癖が抜けない……」という方のために、Sleipnirをもう一歩IEの操作感に近づける設定をご紹介しておこう。
まず、メニューの「ツール」から「Sleipnir オプション」をクリックし、「全般」の「ユーザーインタフェース」から「ウィンドウ」を選択する。「新しいウィンドウをアクティブ」にチェックをすることで、リンク先のタブへ自動的にフォーカスが移るようになるため、ちょっとした違和感も解消できることだろう。
■ ちょっぴり上級者向けなタブブラウザ「Firefox」&「Opera」
筆者のお気に入りということでSleipnirを集中的に取り上げてきたが、ここでは現在注目を集めている「Firefox」と「Opera」という2つのタブブラウザをご紹介しよう。両ブラウザがSleipnirともっとも違う点を挙げるとすれば、IEに依存しない独自のレンダリングエンジンを使っていること。そのため、IEをターゲットにしたウイルスやスパイウェアの影響を受けないという特徴を持っている。セキュリティ面を重視したい方にオススメだ。
ただし、Webサイトのレイアウトが微妙に崩れてしまったり、文字が見えずらくなってしまうというトラブルが希に発生することがある。なぜこのようなことが起こってしまうのかというと、IEは利用者が非常に多いということから、IEで表示されることを前提として製作されているWebサイトも少なくないからだ。この点はセキュリティ強化とのトレードオフという感じになってしまうが、頻繁に発生するというわけではないのでさほど気にする必要はないかもしれない。
また、Operaでは迷惑メールの排除にも対応した独自のメール送受信機能も搭載されている。もちろんOutlook Expressには依存していないので、メール環境のセキュリティ強化にも繋がっている。このほか、両ブラウザともRSSリーダーが標準で利用できるというのはブログユーザーにとってはありがたいことだろう。
|
|
無料で使えるFirefoxは新しいウィンドウを開き、さらにそのウィンドウ内にタブを表示することができる
|
「WebサイトにRSSの存在を感知すると右隅にオレンジのマークが表示され、このマークからRSSを簡単に登録することができる。RSSの内容はブックマークなどから確認することが可能だ
|
|
|
Operaは基本的に有料だが、上部に広告を表示させることで無制限に利用することができる
|
メール送受信機能はタブとして表示され、その中にRSSリーダーも含まれている
|
今回紹介した3つのタブブラウザは、タブ機能の便利さだけでなく、Webブラウジングを快適にする多くの機能が搭載されていることがわかっていただけたかと思う。実際にどれを使おうか迷ってしまうかもしれないが、IEからスムーズに乗り換えたいなと思う方なら「Sleipnir」、セキュリティを重視したブラウジングやメール環境を整えたいなと思う方なら「Firefox」や「Opera」がオススメと言えよう。これらのタブブラウザを利用し、ネット生活が快適になって頂けたら幸いである。
さて次回は、友人や知人とのコミュニケーションには欠かせない存在となった「インターネットメッセンジャー」についてお送りする予定だ。
■ URL
Sleipnir公式サイト
http://www20.pos.to/~sleipnir/
「窓の杜」のSleipnirダウンロードページ
http://www.forest.impress.co.jp/lib/inet/browser/webbrowser/sleipnir.html
2005/03/24 11:06
|
西野滋仁 オンラインゲームで真っ直ぐに敷かれた人生のレールから飛び出し、5年の歳月を個人サイトの運営につぎ込み、インターネットこそ我が人生と言い切る若干26歳。現在、ソーシャルネットワークサービスで人間関係の再構築に奮闘中。 |
|