WILLERでは、WILLERグループ「カスタマーハラスメントポリシー」を2月13日(木)に策定した。最近、特に問題になっているカスハラ問題だが、同社グループでの対応を見てみよう。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■WILLER「カスタマーハラスメントポリシー」
同社の声明では、「デジタルマーケティングとテクノロジーを活用して移動に新たな価値を創造し、すべての人が自由に移動でき、そして環境に配慮した持続可能な社会の実現を目指しています」
「その上で、私たちはお客様の声を大切にしており、お客様からいただくご意見やご要望に真摯に向き合いながら、サービスの創造・向上・改善に取り組んでいます」
「一方で、一部のお客様より当社の従業員に対するカスタマーハラスメントに該当する行為が見受けられることがございます」
「今後もお客様により良いサービスを提供するためには、従業員の心身の健康を守り、安心して働ける就業環境を確保することが不可欠であると考え、『カスタマーハラスメントポリシー』を以下の通り策定し、引き続きお客様と従業員を大切に新たな価値の創造に取り組んでまいります」としている。
■カスタマーハラスメントの定義
同社ではまず、カスハラの定義を策定した。その定義を「要求を実現するための手段・態様が社会通念上不当な言動」に該当する行為(要求内容の妥当性にかかわらず不相当とされる可能性が高いもの)として、次の具体例を挙げている。
すなわち、身体的な攻撃(暴行、傷害)、精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉棄損、侮辱、暴言)、威圧的な言動、土下座の要求、継続的な(繰り返される)や執拗な言動 、拘束的な行動(長時間電話を切らない)
差別的な言動、性的な言動、従業員個人への攻撃や要求(要求内容の妥当性に照らして不相当とされる場合があるもの)、従業員に関するSNSやインターネット上などでの誹謗中傷、商品交換の要求、金銭補償の要求、謝罪の要求(土下座を除く)
■カスタマーハラスメントへの対応
同社グループがカスタマーハラスメントに該当する言動があったと判断した場合は、サービス・商品の提供、カスタマーサポートの対応などを断ることがある旨を宣言している。また、同社グループが悪質な行為と判断した場合は、警察・弁護士などと連携し、法的措置なども含め厳正に対応するとしている。
実際にどの程度の行為がカスハラと同社に判断され、具体的な行動に移るのかは未知数だが、現実問題としてカスハラが社会問題になり、バス運転士不足の要因の一つにもなっている現状では厳しい対応を予告するのは仕方のないことだろう。
■そもそもは運送契約に基づいて乗っていることをお忘れなく
バスに乗車するということは、法律上の意味としてバス事業者との運送契約が成立したから乗車していることを多くの人が知らない。普通に乗車している人はそんなことは知らなくても問題はない。民法上の契約とは申し込みと承諾により成立する。契約の締結は文書である必要はない。
すなわち、バス停からバスに乗って目的地バス停で下車するまでの運送を乗客は申し込んだことになる。特に最近の高速バスの場合は運賃の事前決済が多いが、乗車券を発売したということは紙券であろうとデジタル券であろうと、バス事業者が運送の申し込みを承諾したことに他ならない。
何に基づいて契約したのかというと、乗客は運送約款に基づいて運送を申し込んだことになるのだ。よって約款に記載されている事項は双方が遵守することが大前提で、それを承知して申し込み、承諾したことにより初めてバスに乗れる。
例えばウィラーの場合、「…運転者、車掌その他の係員が運送の安全確保と車内秩序の維持のために行う職務上の指示に従わなければなりません」ほか、禁止事項や運送拒絶事由が記されており、それに基づいた措置に対しては文句は言えない。正確には文句があれば訴訟等で争うしかない。
普通に乗って降りる分には、単にバス会社、運転士、乗客の関係だが、問題を起こすとその後がややこしくなる。身に覚えのある方は、誤った「お客様は神様」論は捨てて、少々冷めた表現だが、「契約に基づいて運送している」だけという法的な意味をよく理解してバスに乗車しよう。
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