次の火鉢カフェを開催する日(1月17日)に坂本龍一のYear Bookが発売される。そして、私が企画構成した番組が放送された今夜(1月7日深夜)、この発売を知った(知るの遅過ぎ)。この3つの出来事の繋がりは今の私にとってちょっとエポックな事である。どう繋がっているのか私以外の人には皆目分からないだろうし、そんなこと冒頭から言われてもな…だろうが、なぜエポックなのか、以下にそれを書こうと思う。風が吹けば桶屋が儲かる的にちょっと長くなるが、がまんしてお付き合いいただけると、意外に「そうだったのか」と思っていただけるのではないか。いや、いただけないか…。
YMO時代からずっと自分の心の中に鳴り響く音楽を提供してくれた教授が、がんであることを公表した頃、治療から10年目となった私の乳がんも再発の疑いがもたれていた。10年経って、完全に油断していた頃だ。半年に一度はエコー検査していたし、教授同様、野口整体にも通っていて、私のがんはもう消えたとばかり思っていた。だから、ファン向けのニュースレター「JOURNALSAKAMOTO」で送られて来た教授の言葉の中に「野口整体にも大きく影響を受けて、整体を受けながら身体のメンテナンスも続けてきました。そうであったからこそ自分を過信していたのでしょう…」の文字を見つけた時、やはり私のがんは再発しているのかもしれないと思った。そしてその2ヶ月後、再検査をして、やはり再発しているとの診断を得る。以来、定期的に送られて来る「JOURNALSAKAMOTO」の教授の言葉を自分の状況に重ね、いろんなことを考えた。がんというのは、自分の存在とは何なのかを否応無く考えさせる病で、なぜそれが自分の中で生まれたか、そして再発したかを、教授は初めて、私は10年を経て再び考える事になった。このYear Bookは丁度私が最初のがんの治療を終え、その存在を忘れていた10年間に書かれた音楽が集められている。
再発の検査結果を確認した頃、自分の出していた番組企画が実現する事になったとの知らせをもらった。それが今夜放送した番組である。急に何か企画は無いかと制作会社のプロデューサーから金曜深夜に電話がかかってきて、ぱぱっと書いて月曜朝に送ったものだ。ぱぱっと書けたということは、前からなんとなく温めていたことの裏返しで、急いで書いたから練れた企画書ではなかったが、思い入れの有るものではあった。本当ならば企画・構成・ディレクションすべてやりたいところだったが、がん再発の言葉にちょっと日和って、企画構成にとどめた(が、実際にはキャスティングなどもやった)。
この番組、忙しい年末時期の収録だったため、キャスティングは難航を極め、キャスティング次第で内容も変わるため、構成もぎりぎりまで決まらなかった。けれど、なぜかギリギリのところですっと状況が動き、最終的な内容は、私ががんとは何かを再び考え始め、人の身体とはどういうものかを考えた末にたどりついた内容と見事にリンクする事となった。
その内容とはミトコンドリアが代謝を司るという話と災害大国日本でのサバイバルの術を書いた古典「方丈記」の話。それが最後にリンクする。方丈記冒頭の有名なフレーズ「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず…」はまさに人間の身体も同じ。福岡伸一さんの言う「動的平衡」状態で、身体は常に代謝によって変化している。そんなことを話す番組だ。
ここで勘違いして欲しくないのは、番組では決して、代謝を良くすること=がん治療と言ってるわけではないということ。ミトコンドリアを活性化して代謝を良くする事はダイエットやメタボ解消などには役立つだろうが、がんにどう作用するかはまだ解明されてない部分も多い。あくまで、私ががんの再発をきっかけに、人の身体とは何かを考えた中で、ミトコンドリアによる代謝の話を発見し、それを番組に使ったというだけのことだ。
ここまで読んで来て、おまえは再発してるのに治療はしてないのか…との疑問を持つ人もいると思う。もちろん自分なりの治療はやっている。再発の場合、三大治療をやることは命を縮める事にも繋がりかねないとの判断もあり、今は一般的には代替治療と言われるものを中心に様子を見ている。様子を見ているなどと言うと消極的な感じだが、気分としてはそんなことはない。まずは代謝を良くするミトコンドリアを育てる。それが、”私が選んだ”治療法でもあるのだ。どう育ててるかはおいおい。副作用もないから、はた目にはがんとはわからないだろう。なるべく歩くようにしているし、前よりお通じも良くなったくらいだ。だからといって、これを他のがん患者さんに勧めるつもりも毛頭ない。がんというのはその人の生き方が表れる病だと思うし(これにも賛否有ろうが)、それゆえに人によって性質も千差万別。これいいよ!と簡単に治療法を勧める事のできるものでないことは、この10年間に考えて得た結論だ。
そして今、無事、その番組の放送も終えて、来週末には火鉢カフェを開催しようとしている。
火鉢カフェを主宰する火鉢クラブとは、そもそも火を使う事の大切さや楽しさを伝えるだけでなく、森林再生に炭焼きが寄与する事、脱原発、コンビニエントな暮らしからの脱却などを思い描いて始めた活動だ。なるべく楽しくそういうことも考えられたらと思い、やってきた。お客さんに出す割り箸に教授も関わるmore treesの国産間伐材割り箸を使ったりした事もある。
実家が原発誘致自治体の側で、震災以前ずっと昔から原発反対であった私。学生の頃多大なる影響を受け、今も心の中にあるYMO。そしてがんという存在。そうしたものがすべて絡み合って、今夜放送した番組となり、火鉢カフェとなっている。
教授の誕生日である1月17日に発売される「YearBook2005−2014」。この10年間に考えたことを振り返りながら、これから先に広がる未来の日本を思いながら、自由の象徴(?)アフロのカツラをかぶって、この日、火鉢カフェを開催したいと思います。
そういえば、今年の私の年賀状のテーマはLOTUS LOVE。もちろんYMOの曲の名前から。不忍池の蓮の写真を使ったけれど、撮影時、頭の中にはLOTUS LOVEが脳内再生されていました。最後にそのハガキを紹介します。
この蓮の生命力にあやかりたい!
とかなんとか言いながら、こんなに遅くまでブログ書いてるなんて、言語道断ですね。身体のためにも早く寝なければ…。
というわけで、このブログにこれから「がんにかまけて」というカテゴリーを作り、日々考えた事を書いていこうと思います。これは決して闘病記などではありません。闘病などしてませんから。がんも自分の一部。がんと共存し、がんに語りかけ、お互い楽しく生きていけたらなという心持ち。仕事もやって、いたって普通に過ごしております。いや、添加物の食べ物やめたり、玄米にしたり、乳製品やめたり、”現代においては”やっぱ普通ではないわな。
今の世の中で「がん」といって、普通の目で見て下さいというのも難しい話なのかもしれないし、そしたら人にがんだと言わなきゃいいんだろうけど、日々色んな事を考えて、黙っているのも出来ない性分なので、こうして書く事にしました。
<坂本龍一Year Book2005-2014>
http://www.commmons.com/whatsnew/artists/sakamotoryuichi/201411251111.html
<火鉢カフェのお知らせ>