「トポロジー―ループと折れ線の幾何学:瀬山士郎」
「トポロジー:柔らかい幾何学:瀬山士郎」でホモロジー理論を学んだので、今度は同じ著者による「トポロジー―ループと折れ線の幾何学:瀬山士郎」でホモトピー理論を勉強しないのは片手落ちである。格安の中古本を取り寄せて週末一気に読み終えた。前者が200ページ余りの大型本であるのに対し、こちらは160ページほどの小型本。読む順番もこの順番のほうが良いことがわかった。
本書も「くだけた教科書風」の本で図版も豊富である。内容が易しめであったせいか僕の理解度もほぼ100パーセント。どちらかというと物足りなかった読後感だったが、理解できたのだから文句を言う筋合いではない。
ホモロジー理論を日常的な言葉で言い換えれば、トーラスなどの曲面を二つに分離しないようにぐるっとひと廻りで切る方法が何通りあるかで穴の個数を数えて分類する方法だ。
それに対し本書の中心テーマのホモトピー理論とは、トーラスなどの曲面上に描いたループ(閉曲線)をその曲面上で1点に縮めることができるかどうかという視点で穴の個数を数えて分類する方法である。
ホモトピー理論のこの簡単な説明を読んだとき、以前NHKテレビで放送した「ポアンカレ予想についての番組」のことを思い出した。ポアンカレも宇宙に投じた投げ縄をたぐり寄せられるかどうかで、宇宙のに「穴」が開いているかどうかを確認できると主張したわけだ。これもホモトピー理論なわけだと思った。
縄のように張ったループをたぐり寄せても、その縄を同一と見なすことをどう数式で表現するかがホモトピー理論の第一のポイントだ。それらのループを群論での「同値類」とみなすわけである。そして物の形としての幾何学的分類や写像に対応している群が存在し、その群の分類や写像の性質に置き換えることで、トポロジーという幾何学は群論という代数学で扱える対象になる。この幾何学と代数の対応という点についてはホモロジー理論でも同じである。必要な群論についても本書内で説明されているのも親切だ。
僕にとっては「瓢箪から駒」のような知識も本書で理解することができた。それは「圏(カテゴリー)」や「関手(ファンクター)」という数学概念についてだ。以前から「圏論」や「関手」という言葉は耳にしていたが、いったい何のことやら見当さえついていなかったので、ごくあっさりとではあるが、これらについて理解できたのはよかった。
つまり、トポロジーにおける形やその分類、写像という世界とそれらに対応する群の分類、写像の世界をそれぞれ「圏(カテゴリー)」と呼び、その2つの世界を結ぶ概念を「関手(ファンクター)」と呼ぶのだそうだ。本書ではこれが「ホモトピー関手」となるわけである。
「トポロジー:柔らかい幾何学:瀬山士郎」および「トポロジー―ループと折れ線の幾何学:瀬山士郎」の2冊を読み、形の分類の研究と群論の結びつきをホモロジー理論とホモトピー理論として入門したばかりだが、率直に言って群論を駆使して難しいことを覚えた割りに、得られた形の分類結果は案外単純で面白味がないなと思ったのも事実である。これは初学者の分際で生意気な感想なのかもしれない。
ところで本書のレベルをはるかに超える内容なのだが、2003年にペレルマンが「サーストンの幾何化予想(1982年)」を証明したことによって同時に「ポアンカレ予想が証明された」ことになったわけだが、サーストンの幾何化予想、つまり「三次元多様体は一様な幾何構造の断片に分解できるだろう。」はこの世界の基本的な形がせいぜい次のような8個だけであることが示されたわけである。トポロジーは奥が深い。。。
「微分幾何学に挫折」してはじまった位相幾何学への寄り道は、気が済むまでもう少し続けてみようと思う。
ところで中学生でも理解できるレベルの本をお望みならば、新書サイズのこの本がいいだろう。ホモロジーとホモトピーも36ページに渡って解説されている。
「はじめてのトポロジー:瀬山士郎」
本書を読む前に、まず以下の本でホモロジー理論を学んだほうがいいと思う。1次元や2次元のトポロジーから段階を追って説明しているので、理解するということの喜びを十二分に感じることのできる名著だ。
「トポロジー:柔らかい幾何学:瀬山士郎」
今日の記事で紹介したのはこちらの本。
「トポロジー―ループと折れ線の幾何学:瀬山士郎」
目次
第1章:トポロジー=その主題と方法
- 幾何学の現代的見方
- アフィン幾何学、射影幾何学
- トポロジーという幾何学
- トポロジーの方法
第2章:ホモトピー理論
- 図形の見方1=位相空間
- 図形を分類する量=位相不変量
- 代数的な準備=同値分類と群
第3章:基本群
- ホモトピーと基本群
- 基本群の性質1=ホモトピー型不変性
- 基本群の性質2=積空間の基本群
第4章:基本群の計算
- 球面 S^n (n≧2) の基本群
- 円周 S^1 の基本群
第5章:複体と折れ線群
- 図形の見方2=複体
- 複体としての閉曲面
- 複体の折れ線群
第6章:基本群の応用
- 閉曲面の基本群
- 不動点定理
- 結び目への応用
- その他、いい残したこと
文献案内
編集者短評
応援クリックをお願いします!このブログのランキングはこれらのサイトで確認できます。
「トポロジー:柔らかい幾何学:瀬山士郎」でホモロジー理論を学んだので、今度は同じ著者による「トポロジー―ループと折れ線の幾何学:瀬山士郎」でホモトピー理論を勉強しないのは片手落ちである。格安の中古本を取り寄せて週末一気に読み終えた。前者が200ページ余りの大型本であるのに対し、こちらは160ページほどの小型本。読む順番もこの順番のほうが良いことがわかった。
本書も「くだけた教科書風」の本で図版も豊富である。内容が易しめであったせいか僕の理解度もほぼ100パーセント。どちらかというと物足りなかった読後感だったが、理解できたのだから文句を言う筋合いではない。
ホモロジー理論を日常的な言葉で言い換えれば、トーラスなどの曲面を二つに分離しないようにぐるっとひと廻りで切る方法が何通りあるかで穴の個数を数えて分類する方法だ。
それに対し本書の中心テーマのホモトピー理論とは、トーラスなどの曲面上に描いたループ(閉曲線)をその曲面上で1点に縮めることができるかどうかという視点で穴の個数を数えて分類する方法である。
ホモトピー理論のこの簡単な説明を読んだとき、以前NHKテレビで放送した「ポアンカレ予想についての番組」のことを思い出した。ポアンカレも宇宙に投じた投げ縄をたぐり寄せられるかどうかで、宇宙のに「穴」が開いているかどうかを確認できると主張したわけだ。これもホモトピー理論なわけだと思った。
縄のように張ったループをたぐり寄せても、その縄を同一と見なすことをどう数式で表現するかがホモトピー理論の第一のポイントだ。それらのループを群論での「同値類」とみなすわけである。そして物の形としての幾何学的分類や写像に対応している群が存在し、その群の分類や写像の性質に置き換えることで、トポロジーという幾何学は群論という代数学で扱える対象になる。この幾何学と代数の対応という点についてはホモロジー理論でも同じである。必要な群論についても本書内で説明されているのも親切だ。
僕にとっては「瓢箪から駒」のような知識も本書で理解することができた。それは「圏(カテゴリー)」や「関手(ファンクター)」という数学概念についてだ。以前から「圏論」や「関手」という言葉は耳にしていたが、いったい何のことやら見当さえついていなかったので、ごくあっさりとではあるが、これらについて理解できたのはよかった。
つまり、トポロジーにおける形やその分類、写像という世界とそれらに対応する群の分類、写像の世界をそれぞれ「圏(カテゴリー)」と呼び、その2つの世界を結ぶ概念を「関手(ファンクター)」と呼ぶのだそうだ。本書ではこれが「ホモトピー関手」となるわけである。
「トポロジー:柔らかい幾何学:瀬山士郎」および「トポロジー―ループと折れ線の幾何学:瀬山士郎」の2冊を読み、形の分類の研究と群論の結びつきをホモロジー理論とホモトピー理論として入門したばかりだが、率直に言って群論を駆使して難しいことを覚えた割りに、得られた形の分類結果は案外単純で面白味がないなと思ったのも事実である。これは初学者の分際で生意気な感想なのかもしれない。
ところで本書のレベルをはるかに超える内容なのだが、2003年にペレルマンが「サーストンの幾何化予想(1982年)」を証明したことによって同時に「ポアンカレ予想が証明された」ことになったわけだが、サーストンの幾何化予想、つまり「三次元多様体は一様な幾何構造の断片に分解できるだろう。」はこの世界の基本的な形がせいぜい次のような8個だけであることが示されたわけである。トポロジーは奥が深い。。。
「微分幾何学に挫折」してはじまった位相幾何学への寄り道は、気が済むまでもう少し続けてみようと思う。
ところで中学生でも理解できるレベルの本をお望みならば、新書サイズのこの本がいいだろう。ホモロジーとホモトピーも36ページに渡って解説されている。
「はじめてのトポロジー:瀬山士郎」
本書を読む前に、まず以下の本でホモロジー理論を学んだほうがいいと思う。1次元や2次元のトポロジーから段階を追って説明しているので、理解するということの喜びを十二分に感じることのできる名著だ。
「トポロジー:柔らかい幾何学:瀬山士郎」
今日の記事で紹介したのはこちらの本。
「トポロジー―ループと折れ線の幾何学:瀬山士郎」
目次
第1章:トポロジー=その主題と方法
- 幾何学の現代的見方
- アフィン幾何学、射影幾何学
- トポロジーという幾何学
- トポロジーの方法
第2章:ホモトピー理論
- 図形の見方1=位相空間
- 図形を分類する量=位相不変量
- 代数的な準備=同値分類と群
第3章:基本群
- ホモトピーと基本群
- 基本群の性質1=ホモトピー型不変性
- 基本群の性質2=積空間の基本群
第4章:基本群の計算
- 球面 S^n (n≧2) の基本群
- 円周 S^1 の基本群
第5章:複体と折れ線群
- 図形の見方2=複体
- 複体としての閉曲面
- 複体の折れ線群
第6章:基本群の応用
- 閉曲面の基本群
- 不動点定理
- 結び目への応用
- その他、いい残したこと
文献案内
編集者短評
応援クリックをお願いします!このブログのランキングはこれらのサイトで確認できます。