毎年この時期恒例の「政治ウィーク (Almedalsveckan)」が日曜日からゴットランド島でスタートした。政党、労働組合、業界団体、自治体、行政機関、各種NPOなどが一堂に集結し、セミナーを開いたり、政策討論を行ったりする。今年は3000を超えるイベントがこの一週間の間に企画されており(しかもその大部分は日曜日から木曜日までの間)、ゴットランド島はとてつもない活気だ。
(この政治ウィークについては、私の過去の記事を御覧ください。)
2008-07-14: ゴットランド島の「政治ウィーク」
初日の日曜日に、最新の世論調査が発表された。
社会民主党・左党・環境党からなる左派ブロックが、現在の連立与党の右派ブロック(極右のスウェーデン民主党は含まない)を相変わらず上回っており、9月半ばの国政選挙では左派ブロックが勝つと見てほぼ間違いないだろう。今回の世論調査では左派ブロックの合計が49.8%と、過半数を若干下回ったが、一方でフェミニスト党が急激な勢いで支持を伸ばしている。彼らは右派政党と組むことは考えられないから、左派ブロックに加えるとすると53.5%となる。この党は今回は議席獲得に最低限必要な4%を下回っているが、ちょうど1ヶ月前の欧州議会選挙の時のように激しいラストスパートを掛けるであろうから、議席獲得の可能性は非常に高い。
他方、右派ブロックのキリスト教民主党は4%を下回る可能性が高く、そうなると彼らの得票率は議席配分からすっぽり抜け落ちることになる。そうなると、左派ブロックが議席配分においてさらに有利になる。
だから、9月の国政選挙では社会民主党とおそらく環境党の連立政権が誕生し、左党とフェミニスト党が閣外協力という形で政権を支えることになるだろう。首相になるのは現在、社会民主党の党首であるStefan Löfven(ステファン・ロヴェーン)、そして、財務大臣になるのは国税庁の上級職員という経歴を持つMagdalena Andersson(マグダレーナ・アンダーション)だ。
(注:Löfvenを「ロフヴェーン」とする訳をどこかで見かけたが、これはおかしい)
Stefan Löfven(ステファン・ロヴェーン)と Magdalena Andersson(マグダレーナ・アンダーション)
左派ブロックの第一党である社会民主党にとって、敵はもはや右派ブロックでも、その中核をなす穏健党でもない。もちろん、9月の選挙までの間、左派ブロックの優勢を維持しなければならないのは当然であるが、今の社会民主党にとっての最大の敵は、他の左派政党と言っても過言ではない。
5月25日の欧州議会選挙では、他のヨーロッパ諸国とは異なり「左の風」がスウェーデンに吹いたわけだが、その風は社会民主党を迂回して、環境党やフェミニスト党に向かい、彼らに対する支持率を大きく押し上げた。
(過去の記事)
2014-05-28: 欧州議会選挙の結果
環境党やフェミニスト党に対する追い風はその後も続いている。フェミニスト党の支持率の推移を見ると、急激な伸びがよく分かる。昨年11月の時点ではわずか0.3%だった支持率が、たった数ヶ月のうちに2.3%にまで伸びている。グラフは今年4月で終わっているが、その翌月の5月の世論調査では3.9%に達したあと、今回6月の調査では3.7%だった。
ただし、これらの党が支持を奪っているのは右派政党からではなく、主に社会民主党からだ。
下の図を見れば分かるように、左派ブロック(フェミニスト党も含む)全体としては50%以上を安定的に推移し、右派ブロックを完全に制してはいるが、社会民主党だけの支持率を見てみると、今年2月に35.1%を記録したあと、ずっと減少している。
社会民主党は大きな政党であり、党内のイデオロギーの違いはかなり大きい。党内では社会民主党の左派と右派が常に力比べをしている。そのため、あまり思い切った政策を党として打ち出すと、党の中から反発が上がることも多く、党執行部はバランスをうまく取りながら党運営を行わざるを得ない。しかし、一部の支持者にとっては、それが非常にじれったくも感じられる。特に、男女平等の政策がまだまだ足りないと感じる人たちの中には、社会民主党を見限って、フェミニスト党に支持を変えている人も多い。(その結果、欧州議会選挙ではフェミニスト党が躍進した)。環境政策についても同じで、左派にシンパシーを感じる若い有権者が、社会民主党ではなく、環境党を支持する傾向が強い。
だから、今の社会民主党にとっての課題とは、いかにしてそういう人たちの支持を党に繋ぎ止めて、これ以上、支持率が低下しないようにすることであろう。しかし、どうやって支持を繋ぎ止めるのか・・・?
フェミニスト党や環境党と張り合って、社会民主党のほうが男女平等と環境政策のそれぞれで2つの党に勝っていると訴えることも一つの方法だろう。しかし、既に触れたように社会民主党は大所帯なので、あまり思い切った政策を打ち出すと、党内に不協和音が生まれるからそれは難しい。
むしろ、フェミニスト党や環境党のように特定の政策分野のみに焦点を置く「偏った」政党と比べて、社会民主党は幅広い政策分野を重視した責任ある党であることを訴えていく方法しか残されていないように思う。昨日も、ゴットランド島で開かれている「政治ウィーク」の一つのイベントで、社会民主党の党首が公開インタビューを受けていた。その中である有権者が「自分は男女平等が非常に重要な政策課題だと思っているけど、フェミニスト党という政党が存在する今、わざわざ社会民主党を支持して票を投じる理由なんてあるの?」と社会民主党党首に迫っていた。彼はまさに「自分たちの党は、様々な政策分野においてバランスの取れた、現実的な政策を実行しようとする、責任感のある政党だ」と答えていた。
果たして、より大きな変化を望む支持者を、そのような方法によって社会民主党に引き留めることができるのか? 私は非常に難しいと思う。おそらく、左派ブロック全体では選挙に勝つだろうが、左派ブロックの中では票が割れ、それでも第一党になるであろう社会民主党はきわどい政権運営を余儀なくされることになるだろう。
(この政治ウィークについては、私の過去の記事を御覧ください。)
2008-07-14: ゴットランド島の「政治ウィーク」
初日の日曜日に、最新の世論調査が発表された。
社会民主党・左党・環境党からなる左派ブロックが、現在の連立与党の右派ブロック(極右のスウェーデン民主党は含まない)を相変わらず上回っており、9月半ばの国政選挙では左派ブロックが勝つと見てほぼ間違いないだろう。今回の世論調査では左派ブロックの合計が49.8%と、過半数を若干下回ったが、一方でフェミニスト党が急激な勢いで支持を伸ばしている。彼らは右派政党と組むことは考えられないから、左派ブロックに加えるとすると53.5%となる。この党は今回は議席獲得に最低限必要な4%を下回っているが、ちょうど1ヶ月前の欧州議会選挙の時のように激しいラストスパートを掛けるであろうから、議席獲得の可能性は非常に高い。
他方、右派ブロックのキリスト教民主党は4%を下回る可能性が高く、そうなると彼らの得票率は議席配分からすっぽり抜け落ちることになる。そうなると、左派ブロックが議席配分においてさらに有利になる。
だから、9月の国政選挙では社会民主党とおそらく環境党の連立政権が誕生し、左党とフェミニスト党が閣外協力という形で政権を支えることになるだろう。首相になるのは現在、社会民主党の党首であるStefan Löfven(ステファン・ロヴェーン)、そして、財務大臣になるのは国税庁の上級職員という経歴を持つMagdalena Andersson(マグダレーナ・アンダーション)だ。
(注:Löfvenを「ロフヴェーン」とする訳をどこかで見かけたが、これはおかしい)
Stefan Löfven(ステファン・ロヴェーン)と Magdalena Andersson(マグダレーナ・アンダーション)
※ ※ ※ ※ ※
左派ブロックの第一党である社会民主党にとって、敵はもはや右派ブロックでも、その中核をなす穏健党でもない。もちろん、9月の選挙までの間、左派ブロックの優勢を維持しなければならないのは当然であるが、今の社会民主党にとっての最大の敵は、他の左派政党と言っても過言ではない。
5月25日の欧州議会選挙では、他のヨーロッパ諸国とは異なり「左の風」がスウェーデンに吹いたわけだが、その風は社会民主党を迂回して、環境党やフェミニスト党に向かい、彼らに対する支持率を大きく押し上げた。
(過去の記事)
2014-05-28: 欧州議会選挙の結果
環境党やフェミニスト党に対する追い風はその後も続いている。フェミニスト党の支持率の推移を見ると、急激な伸びがよく分かる。昨年11月の時点ではわずか0.3%だった支持率が、たった数ヶ月のうちに2.3%にまで伸びている。グラフは今年4月で終わっているが、その翌月の5月の世論調査では3.9%に達したあと、今回6月の調査では3.7%だった。
ただし、これらの党が支持を奪っているのは右派政党からではなく、主に社会民主党からだ。
下の図を見れば分かるように、左派ブロック(フェミニスト党も含む)全体としては50%以上を安定的に推移し、右派ブロックを完全に制してはいるが、社会民主党だけの支持率を見てみると、今年2月に35.1%を記録したあと、ずっと減少している。
社会民主党は大きな政党であり、党内のイデオロギーの違いはかなり大きい。党内では社会民主党の左派と右派が常に力比べをしている。そのため、あまり思い切った政策を党として打ち出すと、党の中から反発が上がることも多く、党執行部はバランスをうまく取りながら党運営を行わざるを得ない。しかし、一部の支持者にとっては、それが非常にじれったくも感じられる。特に、男女平等の政策がまだまだ足りないと感じる人たちの中には、社会民主党を見限って、フェミニスト党に支持を変えている人も多い。(その結果、欧州議会選挙ではフェミニスト党が躍進した)。環境政策についても同じで、左派にシンパシーを感じる若い有権者が、社会民主党ではなく、環境党を支持する傾向が強い。
だから、今の社会民主党にとっての課題とは、いかにしてそういう人たちの支持を党に繋ぎ止めて、これ以上、支持率が低下しないようにすることであろう。しかし、どうやって支持を繋ぎ止めるのか・・・?
フェミニスト党や環境党と張り合って、社会民主党のほうが男女平等と環境政策のそれぞれで2つの党に勝っていると訴えることも一つの方法だろう。しかし、既に触れたように社会民主党は大所帯なので、あまり思い切った政策を打ち出すと、党内に不協和音が生まれるからそれは難しい。
むしろ、フェミニスト党や環境党のように特定の政策分野のみに焦点を置く「偏った」政党と比べて、社会民主党は幅広い政策分野を重視した責任ある党であることを訴えていく方法しか残されていないように思う。昨日も、ゴットランド島で開かれている「政治ウィーク」の一つのイベントで、社会民主党の党首が公開インタビューを受けていた。その中である有権者が「自分は男女平等が非常に重要な政策課題だと思っているけど、フェミニスト党という政党が存在する今、わざわざ社会民主党を支持して票を投じる理由なんてあるの?」と社会民主党党首に迫っていた。彼はまさに「自分たちの党は、様々な政策分野においてバランスの取れた、現実的な政策を実行しようとする、責任感のある政党だ」と答えていた。
果たして、より大きな変化を望む支持者を、そのような方法によって社会民主党に引き留めることができるのか? 私は非常に難しいと思う。おそらく、左派ブロック全体では選挙に勝つだろうが、左派ブロックの中では票が割れ、それでも第一党になるであろう社会民主党はきわどい政権運営を余儀なくされることになるだろう。
仮に自分が、罵倒する側の都議の立場だったとして、相手の主張が気に食わないから、何か言い返してやりたいと思った時に、さて、ここで何と言うか・・・。そういう場面で、相手の主張の問題点を指摘することで反論するのではなく、相手の人格や個人的な側面を槍玉に上げて突くというのは、非常に幼いことだと思います。
スウェーデンで生活していて政治レベルの議論から個人の喧嘩や言い争いまで色々見てきましたが、相手を批判する際に「・・のくせに」とか「・・なのに」という言葉を使ったり、そういう態度で相手を馬鹿にするのはタブーです。(・・の部分には、例えば、女性、若者、学童、スウェーデン生まれ、外国生まれ、など様々な言葉が入ります)
それに、タブーだから敢えて言わない、というよりも、そもそもそのような形で相手を批判・罵倒しようということを思いつきもしない人がこちらでは多いように思います。
日頃、差別的な発言をしている人たちの中には、そもそもそれが差別だとは思っていない人も多いと思いますが、「その発言は、もし相手が男性だったら、発された言葉だろうか?」ということを本人も周りの人も常に考えて見る必要があると思います。
その発言内容が醜いものかどうかということはそれはそれとして判断しなければなりません。