かるび(@karub_imalive)です。
2016年8月3日から、とうとうKindle Unlimitedが日本でも始まりましたね。最初の30日間は、無料お試しができる!ということなので、早速本好きの人たちを中心に、ネット上で話題になっています。
僕も読書は大好きで、とにかくたくさんの本に常時触れていたい乱読派なので、早速お試し会員になってみました。
ある程度使ってみて思ったのは、うーん、「Unlimited」ではないかな、ということ。月額980円で、無尽蔵無制限に読めるわけではなく、仕様上の制限がきっちりとありました。
とはいえ、日本語の書籍が12万冊、洋書が100万冊以上定額読み放題となる大規模なサービスは初めてとなりますので、どうにかしてこれをいい具合に活用する方法はあるのか?また、どんな人がこのサービスに向いているのか、そのあたりを少し書いてみたいと思います。
- 1.Kindle Unlimited日本版の基本的な仕様について
- 2.Kindle Unlimitedは貸出制限がある
- 3.日本の公立図書館と比較してみる
- 4.日本語書籍のクオリティはどうなのか
- 5.アメリカでのKindle Unlimitedの普及状況
- 6.では、アメリカでの評判はどうなのか?
- 7.Kindle Unlimitedの具体的な活用法
- まとめ
1.Kindle Unlimited日本版の基本的な仕様について
もうご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、Kindle Unlimitedというのは、AmazonのKindleという電子書籍の中から、「Kindle Unlimited」とタグがついたものを月額980円で読み放題になる、というサービスです。
音楽や映画では、すでにNetflixやHulu、Line Music等々、すでに定額サブスクリプションサービスが開始されていますが、その「本」バージョンだと思ってください。
2016年8月4日現在、日本語の蔵書が140,046冊、洋書が1,284,075冊、読み放題となります。契約者は、通常のKindle同様、ボタンを1クリックするだけで、自分のKindleアプリやKindle Fire等の専用端末に通常通りダウンロードして読書を楽しむことができます。
雑誌なんかも結構あって、先日僕が2016年度下期美術展のエントリ内で紹介した「男の隠れ家」や、結構立ち読みしている「Pen」など、男性系雑誌を中心にそこそこ網羅されている感じ。
2.Kindle Unlimitedは貸出制限がある
Kindle Unlimitedは、一度に10冊までしか同時に読むことができません。11冊めをダウンロードしようとすると、上記のような画像とともに、どれか1冊、既存のダウンロード済みの書籍を削除しなければならないんですね。ここで、少しテンションが下がる僕(笑)
Kindle Unlimited、ダウンロードし放題か~、と勢い込んでたけど、あっさり冊数制限というつまらないカベに若干トーンダウンしております。
— かるび@あいむあらいぶ (@karub_imalive) August 3, 2016
これって、なんか図書館みたいだよね?と思って、海外のKindle Unlimitedについて書かれた記事を見てみました。すると、「borrow up to 10 books」などと書かれているんですよね。「borrow」、つまり明確に「借りる」っていう概念で捉えられているんです。
つまり、Kindle Unlimitedの本質は、定額サブスクリプションサービスと言うよりは、有料の民間電子図書館みたいなものである、ととらえたほうがわかりやすいのです。
公立図書館は無料で物理的な「本」や「雑誌」の貸し出しサービスをしているのに対して、Kindle Unlimitedでは、有料で電子的な「本」や「雑誌」の貸出サービスをしているということですね。
3.日本の公立図書館と比較してみる
ということで、少し整理するために図を作ってみました。公立図書館とKindle Unlimitedの類似点/違いを見てみましょう。
★公立図書館 VS Kindle Unlimited(要素比較)
どうでしょうか。共通点は、「所有できず、冊数制限付きで借りる」というところですね。相違点は、どこにコストがかかるか?ですね。
公立図書館は、利用自体は無料だけれど、「予約順番待ち」「貸出期限」「通うための時間/物理的費用」等、時間的なコストがかかります。
Kindle Unlimitedは、純粋なネット上のサービスなので、そういった不便さはありませんが、代わりに「利用手数料」としてAmazonへ毎月定額の支払いという金銭的なコストが発生するということでしょうか。
4.日本語書籍のクオリティはどうなのか
これは、すでに先行して良い分析をしてくれているサイトがありました。
こちらの記事に掲載されている一覧表によると、小学館・集英社・講談社等、大手出版社はほとんど様子見状態で、導入に積極的なのは中小出版社です。
そして、良い本も中にはありますが、ラインアップの大多数は発売されて時間が経過した本や、インディーズものです。学術的に価値が高い本、価格の高めな翻訳書など、クオリティの高い本はやはり少なめ。
逆に、参考書類や実用書といった、どちらかというとセールスがロングテール向きなものが比較的多かった印象です。
僕の個人的な印象ですが、公立図書館の蔵書と比較すると、こんな感じかとと思います。公立図書館との住み分けが結果的にはできているのかなと。
★公立図書館 VS Kindle Unlimited(蔵書の比較)
まだ出始めたばかりなので、各社様子見というところもありますし、このあたりは今後に期待ですね。
5.アメリカでのKindle Unlimitedの普及状況
実は、Kindle Unlimitedは、アメリカ、イギリス、カナダなど、日本での導入前にすでに10カ国で先行してサービスが始まっています。日本は後発です。もちろん、最初にサービスがスタートしたのはお膝元のアメリカ。2014年7月からスタートしていますので、現在、導入して満2年以上が経過しています。
つまり、アメリカでのKindle Unlimitedのおかれた状況を見ておくことで、ある程度日本での普及の見通しなども立てられるのではないかな、ということで、少しチェックしてみました。
さて、アメリカでは、Amazonが定額読み放題サービスに参入する前、すでに何社か有力な先行組企業がいました。しかし、2014年7月にKindle Unlimitedのサービスローンチ後、ロケットスタートであっという間に電子書籍の市場を制圧。競合業者を抑え、全体の50%以上のシェアを確保しています。(※この調査の後、業界3位のOysterはサイト閉鎖)
先行して2012年にサービスが始まっていたOyster、Scribdもそれぞれ100万冊以上の蔵書数を誇っていた強敵でしたが、それをものともせずあっという間に抜き去ったのはさすが多国籍企業というべきか。日本でも、先行するサービスは数社ありますが、きっとアメリカ同様Amazon1強体制になることでしょう。
6.では、アメリカでの評判はどうなのか?
ネットで20本ほど海外のニュースサイトや掲示板のスレッドを読み漁ってみました。具体的な満足度調査の統計データは見つからなかったものの、読者は全員が必ずしも両手を挙げて賞賛!というわけではなく、結構辛口な意見も多くありました。2つほど論点を挙げてみると・・・
6-1:コストに見合うほど本を読み切れるのか?
上記記事によると、典型的なアメリカ人の年間平均読書数は年間約4冊。一方、アメリカではKindle Unlimitedのコストは1ヶ月9.99USDなので、年間で約120USDの維持費がかかります。アメリカの電子書籍のベストセラーの平均額約8USDとされていますので、Kindle Unlimitedのコストに見合うには、年間15冊読まないといけないわけです。どうですか?そんなに読書しますか?いや、そんなにしないよね~、じゃあいらないよね、という意見はかなり多かった。
一方、日本人はどうなのでしょうか?
平成25年の文化庁の「国語に対する世論調査」を見てみましょう。この調査では、数年に一度「1ヶ月に何冊本を読みますか?」という設問が設けられますが、その回答がこちら。
このグラフを見ると、読書量が1ヶ月に1~2冊以下の人が実に全体の81%になります。アメリカ人と大して変わりません。
アメリカ同様、年間15冊以上読んでペイできるとするなら、おおむね月2冊以上読む19%の人ならサービス加入の検討に値しますが、それ以下の人は、コスト負けしそう。ピンポイントで欲しくなった時に購入したほうがお得だということですね。
6-2:大手出版社は消極的だし、ベストセラーがラインアップに入っていない
アメリカでも、日本同様出版社とAmazonの関係は蜜月というには程遠く、常にピリピリした関係になっています。特に、大手5社(Hachette, MacMillan, Simon & Schuster,HarperCollins, Penguin)の書籍は1冊も読み放題対象にはなっておらず、それゆえにベストセラーもなかなか読めないようです。*1
日本でもこれは当てはまりそうです。売れ筋の本を多数扱う有力出版社は、まず様子見という感じですし、本音としてはやりたくないでしょう。フタをあけたら、中小出版社が思っていたよりコミットしている感じで、それなりに読めそうな本は案外多かったですが、やはりリアル書店や通常のKindleと比較するとまだまだこれからといった感じです。
7.Kindle Unlimitedの具体的な活用法
上記でも述べた通り、Kindle Unlimitedはどちらかというと「図書館」に近いサービスです。所有できず、あくまで一時的に「借りる」イメージです。これを踏まえて、どのような活用方法があるのか考えてみたいと思います。
7-1.調べ物の際に資料として使い倒す
とにかく借り放題なので、仕事や学校などで、調べ物をする際に使えそう。蔵書数がまだ少ないので、これだけでは調査が完結はしませんが、調査の初期段階としては十分まかなえます。まず気軽にダウンロードして、ざざっと主要論点や全体像を押さえるのには使えます。その後、図書館や本屋でさらにリサーチすればよいわけですから。
僕も、実はこの記事を書く際に、さっそく洋書から5冊ダウンロードしてざざっと論点を拾いましたが、やはり手元でさくさく調べ物ができるのは本当に便利!何かの調査の初動段階ではかなりいい感じで使えます。
7-2.資格試験や受験参考書、辞書を気軽に試す
自分に合う試験参考書や辞書ってなかなか見つからないですよね。本屋で立ち読みするだけじゃなかなかわからないし、買ってから「うーん、やっぱり違うな」となることも多いかと思います。
Kindle Unlimitedでは、こうした受験や各種資格の受験参考書が結構出ています。まずは気軽にダウンロードしてみて、気に入ったらそれを使い続けるもよし、紙媒体で買い直すのもよしだと思います。
7-3.購入も視野にいれてガンガン試す
Kindle Unlimited試し中。貸出上限10冊制限があり、11冊目をDLしようとすると、どれか1冊消さないといけない。また、上下巻で、上だけKU対象で、下は普通に販売されているものもあり、期間限定お試し読みの販促用途で使われるケースも今後増えてきそう。
— かるび@あいむあらいぶ (@karub_imalive) August 3, 2016
Kindle Unlimitedの対象となっている本は、未来永劫そうであるとは限らないと思います。出版社も、いろいろ試行錯誤をしているはずで、特に最初のうちは機動的にラインアップが変わってくると思います。
Kindle自体、「期間限定セール」や「最初の3巻まで無料」といった売り手側の販売促進の為に「期間限定」「冊数限定」で値引きされてきた経緯があるため、前例を踏襲して、Unlimited対象作品は公立図書館よりも変動が激しそうです。
いつ読み放題から削除されるかわからないから、まず少しでも気になったらダウンロードして気楽に試す。そして、これは!と気に入った作品はKindle単体で購入したり、紙媒体で購入しても良いと思います。
実際に、アメリカではKindle Unlimitedに指定されてから、Kindle単体としてかえって売れるようになったという、出版社側の成功事例もあるようです。
7-4.雑誌の立ち読み代わりに使う
上記の記事のように、読み放題対象となった雑誌はそれなりにあります。雑誌をとにかく読みたい!という人は、これとドコモのdマガジンを網羅すればかなりのレベルになるはず。
これまで、コンビニや書店などで立ち読みで済ませていた雑誌も、読み放題となるので気兼ねなく場所・時間を選ばず読めますね。また、立ち読みされて読者を逃していた雑誌出版社にも、良い話なのかもしれません。
これまで立ち読みで済まされていた雑誌にも定額でパッケージ化された購読サービスに乗っかることで、出版社にも少額ながら分前が行く、と考えると出版社にも悪い話だけでもないのかも。 / “amazonの一ヶ月980円読み放題サービス「K…” https://t.co/1F0NbFhujo
— かるび@あいむあらいぶ (@karub_imalive) August 3, 2016
まとめ
Kindle Unlimitedに加入すると、リスクなく「気軽に落として」「適度に速読や流し読みで読み飛ばす」ことができます。また、調べ物の初動段階でもかなり使えます。
つまり、公立の図書館を使う時とほぼ同じような意識で使えばいいということですね。コスト的に見合う多読、乱読派や、調べ物を沢山する人には非常に良いサービスになるんじゃないでしょうか。試す価値は大いにあると思います。
僕は、しばらく半年くらいはまずガンガン使い倒そうと思っています。
それではまた。
かるび
★現在、Kindle Unlimitedが30日間無料お試しとなっています。試すには、こちらのページから!
*1:その代わり、アメリカでは公立図書館が健闘しているようです。日本以上にリアル書店が消えてしまった出版社にとって、現在公立図書館は新作のプロモーションを行う貴重な場となりつつあり、図書館と出版社の関係が良好なのです。Kindleにはベストセラーは流さないけど、図書館の電子書籍サービスには提供が始まっています。