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きみの靴の中の砂 https://blog.goo.ne.jp/disinfectant1953

このサイトは "Creative Writing" の個人的なワークショップです。テキストは過去に遡り、随時補筆・改訂を行うため、いずれも『未定稿』です。

みなさんに感謝: アラン・ロブ=グリエ アルベール・カミュ 伊藤整 岩科小一郎 エリック・ホッファー 尾崎喜八 金子光晴 クロード・シモン ジャック・ケルアック 田村隆一 辻邦生 辻村伊助 永井荷風 久生十蘭 フィリップ・ソレルス 船知慧 ブルース・チャトウィン ポール・ヴァレリー ミシェル・ビュトール 森鷗外 森茉莉 吉田健一 ル・クレジオ ロラン・バルト

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多摩市
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2022/04/07

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  • 新年への祈り

    (op.20241231-2/Studio31,TOKYO)  新年への祈り。 新年への祈り

  • 新年祭

    (op.20241231-1/Studio31,TOKYO) 氏神様の準備も整ったようだ。あとは午前零時を待つばかり。 <ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>新年祭

  • さよならコロンバス

    原作者は、フィリップ・ロス。私小説風の作品で、全米図書館賞を受賞したから、アメリカの公立図書館には『必ずある』ことになっている。でも、映画の方の出来は大したことはなく、こぢんまりとしたメロドラマといった作り...。なのに、しばらくするとまた観たくなるのは、きっとアソシエイションが歌うドラマチックな主題歌のせいに違いない。冒頭、この歌が聞こえてくると、脳が勝手に、作品から受ける印象を良くしようと好意的に働き出すのがわかる。出演者も、今となっては懐かしい人達ばかりとなった。【TheAssociation-GoodbyeColumbus】 さよならコロンバス

  • 『宮殿泥棒』のイーサン・ケイニンとファンタジー『冬物語』のマーク・ヘルプリンくらいのものか

     楽しかった基督降誕祭も終わって、新年まであと二日と迫った。部屋の設定温度は摂氏22度。23度は超えないようにエアコンのコントローラーには小まめに手を伸ばす。それで寒ければ、あとは着るものを工夫するだけ。ネットで映画を観るのにも飽きたので、夕飯を早く済ませ、ジョン・フォックスの『潮騒の少年』を読む。このフィリップ・ロスのような文体は、米国の戦後生まれの作家の潮流らしい。彼は免疫不全症を思いっきりこじらせ、(ニューヨークで)三十八歳で亡くなった——中途半端に太く短い、凄絶な人生だ!この時代の若手アメリカ人作家を思い出すままに調べてみると、ほとんどが東海岸から五大湖の周辺で創作していて、西海岸住まいの有名どころは、『宮殿泥棒』のイーサン・ケイニンとファンタジー『冬物語』のマーク・ヘルプリンくらいのものか。【B...『宮殿泥棒』のイーサン・ケイニンとファンタジー『冬物語』のマーク・ヘルプリンくらいのものか

  • 写真を見ただけで誰だか分かる写真家が数人いる

      誰でも趣味に深入りすると、不思議と専門誌の一冊も定期購読したくなる。この季刊誌には、二十数名の中堅フォトグラファーが参加しているが、写真を見ただけで誰だか分かる写真家が数人いる。そんなふうになりたいものだ。事あるごとに学ばされる、『上には上がいる!』。  【TheLadyShelters-Connection】 写真を見ただけで誰だか分かる写真家が数人いる

  • 比較的早く、あの世で偉人達に出会える特典付き

      35mmフィルムを中判カメラで使う。さて、今の日本の焼酎原料には芋、麦、米の他にも多々あるが、アメリカのウイスキーも、種類はバーボンばかりではなく、このコーンウイスキーも二大巨頭として人気だ。この『メロウコーン』は、中古のバーボン樽(元はシェリー酒樽)に寝かせてあるので、西部開拓時代に荒くれ者達が飲んだものに比べると大層高級である。この酒、アルコール度五十度なので、今の日本の常識では、ストレートで飲み続けると消化器系の癌で比較的早く、あの世で偉人達と出会える特典付き。  【EarlScruggsAndFriends-FoggyMountainBreakdown】 比較的早く、あの世で偉人達に出会える特典付き

  • 普段、紅茶を最高に美味しく飲んでいる日本人は存外多くない

      紅茶を飲む習慣のある国の人の標準的な飲み方は、ザックリ言うと『砂糖を入れないミルクティー(甘くないロイヤル・ミルクティーとでも言おうか)』。英国では、砂糖を使う人は二割もいない。温めた牛乳は紅茶と半々くらい、日本人が想像するより多く入れる。そんな飲み方だから、多少タンニンの渋味が出ても気になりにくいが、ティーバッグの外箱や袋に書いてあるとおりに淹れて、日本流で飲むと、入れるミルクが少ないためにタンニンを感じて、渋味が口に残る。と言うわけで、普段、紅茶を最高に美味しく飲んでいる日本人は存外多くない。「ならぬタンニン、するがタンニン。わかるかな?わかんねぇだろうな。イエイ!」一昨年亡くなった千とせ師匠がなつかしい。  【HollyridgeStrings-StrawberryFieldsForever】 普段、紅茶を最高に美味しく飲んでいる日本人は存外多くない

  • 水口イチ子の楽しいいち日

     楽しいいち日だったようだ。イチ子が以前から『秩父三社参り』に行きたがっていたので、古いアルファ・ロメオで出かけた。秩父三社、すなわち三峯神社、秩父神社、寶登山神社を指す。一時間ほど掛けて登った寶登山神社奥宮——社前には、諸社に多い、獅子狛犬とは異なる犬神様が構えておいでだった。ぼくが御朱印を賜っている間、『参拝の栞』を読んで由緒を知ってか、イチ子は、しばらく、お犬様の背中を摩って差し上げていたようだった。  【RussWilloughby-AWorldWithoutLove】 水口イチ子の楽しいいち日

  • 人生は平凡な日常を第一とするのかも知れない

     ぼくとイチ子さんはそれぞれに起床する時間が微妙に異なるので、その日最初の挨拶が家のどこでするかは日によって違ってくる——洗面所だったり食卓だったり...。朝の会話となると、その日のルーチン以外の仕事についてだったり、大切な頼み事だったり、世の中の事件についてだったり...。時折、ここ一両日中に考えていることについて、意見を求め合うこともある。「一年が短く感じるのは、心身ともに健全な生活を送った証拠らしいわよ。病気入院でもすると、そうはいかないってよ」。今朝、イチ子さんは、そんなことを言った。中年以降、ほとんどの人の一年は早く過ぎ、人はそれを嘆く——それがあたかも老化に起因しているかのような口振りで...。イチ子説が真理なら、人生は平凡な日常を第一とするのかも知れない。【RoseIwanaga&TheAv...人生は平凡な日常を第一とするのかも知れない

  • 蜜柑

      年の瀬に蜜柑を見ると、村のある長老の特技を思い出す。それは、大晦日に行われる、氏神の新年祭(初詣)の準備の折りに見ることが出来る光景だが、その長老は神社の接待所で、蜜柑をツマミに延々と日本酒を飲む。他に同じような飲み方をする人を知らないので特技と言って差し支えないだろう。真似してみたが、やはり途中で塩っぱいものが欲しくなる。食事で言えば、お酒はご飯の立ち位置で、ツマミはおかずだから、やはり甘いものより塩っぱいものの方がお酒は進む。しかし、蜜柑のツマミがアリなら、蜜柑をおかずにご飯が食べられるのではないか。やってみる気はしないが。 <ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogpar...蜜柑

  • 東京国際空港。最終発便。

    (op.20241229-1/Studio31,TOKYO)東京国際空港。最終発便。【HumanNature-BeMyBaby】東京国際空港。最終発便。

  • 二十四時七分発

    実は大詔奉戴日の列車に乗りたかったのだが、噂どおり終日全車輛満席で切符が取れなかった——十二月八日の上りと八月十五日の下りは全席指定で当事者以外は乗れないという話は嘘じゃなかったようだ。日にちを跨いで最終便が一本あって、それならまだ席があるという。仕方がない。「二十四時七分発の特急南十字星行き一枚...。椰子の葉陰に十字星、か...」思わず口を付いて出た。【Rumer-LoveIstheAnswer】 二十四時七分発

  • 青鉛筆

    京都府中京区——創業三百年という老舗が散見される土地柄——さっき、六角町の画材商で独逸製の青鉛筆を一本買った。暮れ時までにまだいくらか時間もあろうというのに、上弦の月が、早くも古都の東の空に薄く掛かりはじめているではないか。【TheLennonSisters-ALover'sConcerto】 青鉛筆

  • 想っていたい人

    (op.20241228-1/Studio31,TOKYO)  いつも想っていたい人。  【JackieDeShannon-WhenYouWalkInTheRoom】 想っていたい人

  • 淡雪仕立ての湯豆腐

    名著『新、懐石サントリー』の大晦日の頁に『除夜粥』として紹介されている淡雪仕立ての湯豆腐——湯豆腐の上に粥と大根おろしをのせ、塩味で食す。イチ子さんの祖母の実家は神戸の料亭だったので、イチ子さんが作る淡雪はプロ仕様、大根おろしを葛湯で煮て泡立てて作る。 【BoysTownGang-Can'tTakeMyEyesOffYou】 淡雪仕立ての湯豆腐

  • 『無頓着』には語れない

    昔、新宿末廣亭の斜向かいの地下に一軒のバーがあって、ぼくは、その店でフォアローゼズやストロワーヤの味を覚えた。その店は、常連の誰かが新たな客を連れて来ない限り、一見がひとりで店に入ってくることはなかった。そこは、排水が悪いせいで、大雨が降るとレンガ敷きの床は十センチ程冠水した。その冠水時に臨時休業した話は過去に遡っても聞いたことはなく、飛び石代わりに床にブロックが敷かれ、常連達は器用にそれを伝い、カウンターの席に着いた。店の壁は、かつては漆喰色だったことが辛うじて伺えるが、ぼくが出入りした時分には既に余すところなく写真が貼られ、マジックの書き込みで埋め尽くされていた。当時、客層の多くは若い役者や放送作家で、素性が不明な輩も多く、ぼくのようにさらに怪しげな者も時折混ざった。その店にまつわる小ネタは沢山あるが...『無頓着』には語れない

  • お金の掛からない楽しみを見つけた

      この春先、イチ子さんの号令一下、庭の『ドクダミの原野』と『南天ジャングル』の開墾が始まり、それを成功させたのは朗報だが、緑が一掃されたせいか庭がやけに殺風景になった。しかし、ここに来て、今迄ドクダミに圧倒されてきたカキドオシが急に勢いを盛り返してきた。識者によると、ドクダミもカキドオシも繁茂することではドッコイで、後々厄介なことには変わりないと聞かされたが、臭くない分、『カキドオシ』の成育は見守っていきたい。「また、お金の掛からない楽しみを見つけたわね」とイチ子さんは笑う。  【ThisTime-シグナルはブルー】 お金の掛からない楽しみを見つけた

  • 長く退屈な午后

    年の瀬に塵を拭い、新年の支度もすっかり終えた『おおつごもり』の朝。座って(炬燵だったら尚良し)お茶など飲みながら(或いは蜜柑を食べながら)、退屈して見上げる時計は未だ午前九時。これじゃあ『長く退屈な午后』になりそう。今年最後の一行日記に、断腸亭日乗を真似て『午後、陋巷拙宅の塵を拭う』なんて書いてみたい。  【NittyGrittyDirtBand-GirlfromtheNorthCountry】長く退屈な午后

  • 春ひらく

    小津安二郎のトーキーによる戦後の全作品のシナリオに関わった脚本家・野田高梧(のだ・こうご1893~1968)の著作『決定版シナリオ構造論』について。シナリオ・ライターを目指す人のバイブルと言われて70年が経とうという本書——初版は昭和27年、神田・寶文館から定価250円で上梓された。その後『シナリオ構造論改版』として再版もされた。改版の帯には『シナリオ制作の代表的入門書』とあるが、その後シナリオ・ライター志望者が減り、1987年以降は増刷はされておらず、古書肆で一万二千円もの値段が付けられた時期もあった。しかし!今、アマゾンに電子版がリリースされているところをみると、尚も需要があり、シナリオライター必携であることに変わりはないようだ。同書を紐解いて意外なのは、この本が昨今常識のハウ・トゥ本のスタイルを取っ...春ひらく

  • パシフィック・ドライブイン

    三十年という永きに渡り葉山の森戸にあったデニーズが数年前の冬に閉店して以来、イチ子とは休日のランチに七里ヶ浜の『パシフィック・ドライブイン』へ出かけるようになった——茅ヶ崎の自宅から134号線を東におよそ12km。湘南の海を右に見ながら、自転車にとっては散歩程度の距離。晴れていれば、師走の海風もなかなか気持ちがいい。【AnnWilson-LikeaRollingStone】 パシフィック・ドライブイン

  • 自転車で確かめに行こう

    七メートルか八メートルの砂混じりの風...鵠沼あたりは既に霞んで見えない「防砂柵ってどこまで続いてたっけ」とイチ子さん「どうだろう、辻堂あたりまでじゃなかったかな...」てなことを不用意に答えると「じゃあ自転車で確かめに行こう」とか言い出しそうで急に声がフェイド・アウトしてしまう【TheWalkerBrothers-MakeItEasyOnYourself】自転車で確かめに行こう

  • 色褪せないように努めておく必要がある

    (op.19770811-1/Studio31,TOKYO)  インスタント写真は勿論のこと、印画紙にプリントされた写真でさえ——それは『人の記憶の仕組みに似て』——管理が悪いと次第に色落ちして、最後は白紙に戻ってしまう・・・つまり『大事な思い出』は、時折思い返し、管理良く、色褪せないように努めておく必要がある。  【TheLovin'Spoonful-SheIsStillAMystery】 色褪せないように努めておく必要がある

  • 冬の絵が描けない

    (op.20241225-1/Studio31,TOKYO)  夏には夏の絵を描くのに、冬に冬の絵が描けないのは、北国で生活したことがないからだろう。 【MoreThanWords-DrivingHomeforChristmas】 冬の絵が描けない

  • 南半球のクリスマス

    オーストラリア、ケアンズの12月——華氏89度——マンローマーティンパークランドの先、グラフトン通りの中程にあるリゾートホテル。今、あの南半球の暑いクリスマスを思い出していた。【TheLovin'Spoonful-Daydream】 南半球のクリスマス

  • 戦時下の詩と夢・竹内浩三

     すでに古い話だが、2007年の夏、太平洋戦争で若死にしてしまった未完成の芸術家・竹内浩三についてNHKが番組『ハイビジョン特集シリーズ青春が終わった日日本が見えない~戦時下の詩と夢・竹内浩三~』を制作、その放映後、線香花火のような一瞬の竹内ブームがあった。今更何で竹内浩三なのかと、その時思った。どうやら「竹内浩三全作品集-日本が見えない」(2002年藤原書店)、「戦死やあわれ」(2003年岩波書店)あたりを読んだNHKの制作者がやむにやまれぬ気持ちになって番組を制作した時期と、映画監督山田洋次が『母べえ』の制作発表で竹内浩三の遺した『戦死やあわれ』が物語の元になっていると発言した時期とが重なり、それで一部のマニアの注目を集めたようだ。「竹内浩三全作品集-日本が見えない」——作品集といっても二十歳前後の年...戦時下の詩と夢・竹内浩三

  • たのしい降誕祭の真相

      大昔、基督の降誕年・月・日時には諸説あって、不明だったところを4世紀にローマのある偉いお坊さんが、「これからは12月25日を主の誕生記念日として統一しようじゃないか」と提案したのが始まりだとか。このお坊さんがいなかったら、世界中のキリスト教国でバラバラに、好き勝手にクリスマスをやっていたかもしれない。古くは基督降誕には春説・秋説もあったらしい。  【LastChristmas(2019)-TheChristmasConcertScene(10/10) Movieclips】 たのしい降誕祭の真相

  • ノエル・ケーキ

    リキュールが薫り、ドライフルーツをたっぷり使ったノエル・ケーキ。イチ子さんは、今年も手製のベラベッカを数本、キャンドルと共にテーブルに飾った。明日、このクリスマスをひとりで過ごす友人に配るんだと、今年もまた何本かこさえていた。【RubberBand-ISawMommyKissingSantaClaus】 ノエル・ケーキ

  • あとひとつ足りないもの

    半熟卵を作る。お湯が沸騰する寸前に——摂氏90度くらいになったら——生卵をふたつ投入して待つこと楽しい八分間。茹であがったら殻を剥く——予定では黄身の外側から中心にかけて美しいグラデーションになっているはずだ。それをフォークでザクッと潰す——ドレッシングとして——マヨネーズにトマト・ケチャップとホットソース少々を撹拌混合したものをかける。飲物は、カット・レモンを落としたダーク・ラムのソーダ割り。あともうひとつ——メキシコ湾流の潮の香りを孕んだ熱い西風が吹けば、ヘミングウェイもどきは概ね完成するのではあるが...。【TheFireballs-Bulldog】 あとひとつ足りないもの

  • ダイジョーブか!?

      アメリカの作家は、基本、第一稿は手書きである(初等教育からそう習う)。作家は、次にその手書き原稿に朱を入れ、タイプする(タイプ打ちは、概ね旧知のタイピストが当たる)。次に作家は、その改訂タイプ原稿に再度朱を入れ、決定稿のタイプに至る。念を入れるなら、『改訂タイプ原稿に朱を入れる』工程を数度繰り返す。出版社は、「先生、いつまでも待ってますから、書き上がったら連絡下さい」というスタンスで、絶対に本にしたら売れるという会心作をひたすら待つ。原稿採用のハードルが日本より遙かに高い代わりに、本が売れれば、一作で数年楽勝で生活できるほどの高収入を得られる。一方、日本の小説家の存在証明は、(例えば五十年前なら)毎月どこかの文芸誌に八十枚以上のものを発表することだった。その他に頼まれたエッセーや雑文、更に時間を必要と...ダイジョーブか!?

  • 『江戸メシ』展

      「久々に足を運んでもいいと思う企画展を見つけた」と水口イチ子が言う。https://www.ukiyoe-ota-muse.jp/edomeshi/  <ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>『江戸メシ』展

  • オモシロイコトナイデスカ

      蜜柑のイメージからすればだいぶ小ぶりだが『ピンポン玉より多少大ぶりの蜜柑』とか、風呂上がりに耳の中をグリグリする『ドラッグストアの特売綿棒』とか、そんなものをジッと見つめていると、個人的にはそれなりに面白いが、こんな人生の時間の過ごし方でいいのかと考えたりもする。トイウワケデ、ナンカモット、オモシロイコトナイデスカ。 【GeorgeHarrison-AbsolutelySweetMarie】 オモシロイコトナイデスカ

  • 冬至

    (op.20241221-1/Studio31,TOKYO)  今日、冬至。夕方から撮影に出かけた。三時間ほど遊んで帰ると、イチ子さんがお風呂に入れるようにと、柚子の入った布袋が浴槽の蓋の上に置いてあった。  冬至

  • 初めてきみを見たのは...

      スイスに似た気候は元より、斑尾山・黒姫山辺りの山容に愛着を持つ人達が夏の野尻湖畔に避暑に集まる。町並みが開けているのは駅のある西側の湖畔で、対岸は、YMCAや東洋英和女学院のコテージが並ぶ辺りまで行くと、堀辰雄があの独特な文体の短篇小説『晩夏』で描いた頃の空気が残っている。*ぼくが中高生だった頃の夏の思い出は、毎年参加していたYMCAの欧米式サマーキャンプに集約される。キャンプと言ってもサマースクールなので、キャビン——二段ベッド八人部屋の木造バンガロー——に寝泊まりする他は厳格な時間割があり、それに則り、宿題もあった。八月に入るとすぐに始まる男子中高生五十人ほどによる二週間の長期キャンプの後に、別募集の男女中高生四十人ほどの短期キャンプが一週間続く。ぼくら男子中高生の何人かは両方通じて参加するので、...初めてきみを見たのは...

  • デルフトの眺め

     旅行作家・水口イチ子が、ある年の取材旅行中、パリのカンパーニュ・ブリュミエール通りの画材屋の店頭で、フェルメールの『デルフトの眺め』の複製画を見つけたとき、どうしても本物を見たくなって、日本へ帰る途中、ハーグの美術館へ寄ってきたことがあった。*『デルフトの風景』は大分デフォルメされているようだが、フェルメールが、その絵を描いたときにイーゼルを立てた凡その場所も比定されていて、観光ポイントになっているそうだ。同じマウリッツハイス美術館で予想外にも『ターバンをまいた少女』も見ることができて運が良かったと喜んでたっけ。フェルメールが生涯暮らした街の風景を同じ街の美術館で見るのは特別な臨場感があったという。*フェルメールの画業でたった二枚しかない風景画の一枚をプルーストやゴッホが激賞しているところを見ると、芸術...デルフトの眺め

  • 柿右衛門の絵付けのようで、なかなか旨そうだった

    近所の元農家の庭先に、丈の高い柿の古木がある。東京では旬は終わったが、成っていた実は巷のものより朱が深く、ちょうど柿右衛門の絵付けのようで、なかなか旨そうだった(子規が喜びそう)。『枯れて軽くなった竹の物干し竿』さえあれば訳無く柿もぎ竿が作れるのだが、そんな竹竿からして最早町中では見当たらなくなってしまった。柿右衛門の絵付けのようで、なかなか旨そうだった

  • いやいやいや、イェイツは、そもそもイングランド人じゃない

     イチ子さんの捜しもの。「ふるーいイングランドの詩集で、四六判よりも小さくて赤茶のクロス装なんだけど、どこかで見なかった?背表紙の文字が銀の箔押しのやつよ」とイチ子さん。「えっ?キーツとかイェイツとか?」とぼく——いやいやいや、間違えた。イェイツは、そもそもイングランド人じゃない。「いいえ、カウリーよ。エイブラハム・カウリー」確か随分昔に英文学事典でお見かけしたようなお名前——英語が堪能な方が読む本って、違うもんだ。「ウ〜ン、見てない、ような気がする」 【来生たかお-あなたのように】いやいやいや、イェイツは、そもそもイングランド人じゃない

  • オトナと呼ぶは程遠いのかもしれない

    (op.20241219-2/Studio31,TOKYO)  世相にばかりかまけているようでは、人は、オトナと呼ぶには程遠いのかもしれない。  【TheT-Bones‎–Sippin''n'Chippin'】オトナと呼ぶには程遠いのかもしれない

  • Touchstone —— ぼくらの試金石

    (op.20241219-1/Studio31,TOKYO)みんなホントのことだったし、それは今もオナジ。【GordonLightfoot‎–DidSheMentionMyName】 Touchstone——ぼくらの試金石

  • イチ子さんのプルメリア

      この夏の猛暑のさ中、イチ子さんの庭(ぼくは、忙しいので庭の使用権はとっくに放棄した)では、プルメリアの花が当たり前のように咲いて芳香を漂わせていた。そのご褒美なのか、そろそろ秋風が立つかという週末に、プルメリアの鉢は、イチ子さんにイの一番に温室に退避させてもらっていた。厳寒期も摂氏十五度以下は御法度だとか。夜中の温室には、小型のソーラーシステムで稼働する暖房設備が採用されている。 【TimePools‎–SheKnowsMeTooWell】 イチ子さんのプルメリア

  • 細かいことを言い出せばキリがない

      飲物を正しく・美味しく飲む作法を知っているうるさ型は、世の中にいるようでなかなかいない。例えば、玉露を淹れるお湯の温度を気にしたりとか、ワインは静かに注いで、決して泡が立つようではいけないとか、細かいことを言い出せばキリがない。勿論、麦酒だって注ぎ方で味が変わるが、これにこだわる人はビール人口の・・・0.1%さえもいるようには見えない。  細かいことを言い出せばキリがない

  • 茅ヶ崎の『夏の妹』たち

    (op.20241218-1/Studio31,TOKYO)絵画や写真のような静止画にだって、制作者によるストーリーが込められているものがある。【NellieMcKay-RedRubberBall】茅ヶ崎の『夏の妹』たち

  • 小学生の頃から、てっきり春の花だとばかり思っていた

      イチ子さんが庭のプランターにパンジーを作っている。「随分綺麗に咲いてるけど、これから冬なのに寒さに負けないように品種改良されているの?」とぼく。「そんなことしなくても、パンジーって、もともと秋から春までが開花時期よ」とイチ子さん。パンジーが秋から冬を超えて春までのシーズンを咲く花だとは気付かなかった。小学生の頃から、てっきり春の花だとばかり思っていた。 小学生の頃から、てっきり春の花だとばかり思っていた

  • 気付くのが遅いにも程がある

     年の瀬に「混色」を復習した——加法混色、減法混色、中間混色などなど——学生の頃に、もっと真面目に色彩学の時間を過ごしていればよかったと思った。気付くのが遅いにも程がある。気付くのが遅いにも程がある

  • 林で書いた詩

     あるテレビ・ドラマの冒頭。海へ下る坂道の風景が美しい北海道小樽。市立図書館に勤める寡黙な青年司書がひとり。そしてある日、借りたいと彼の前に本を差し出す、都会から来たと見える美しい年上の女がひとり。女は、図書館に入ってきた時には既に刑事に尾行されていた——古い記憶で、その後のプロットは定かでない。*あらかじめチェックしていた番組ではなかった。チャンネルを回すうち、たまたま目に留まったに過ぎない。タイトルが伊藤整の詩の代表作『林で書いた詩』と同じだったこと、そして制作が東京のキー局ではなく、北海道の地方局というめずらしさもそれを手伝ったかも知れない。観たのは、いつのことだったか。以来、時折、ふと、このドラマを思い出す。ネットで調べてみた。これまで調べなかったのは、この単発一時間ドラマの制作年がパソコン出現以...林で書いた詩

  • 日焼けしない程度に暖かいところへ...

      COVID-19が流行る何年か前、クリスマスから正月休みにかけてにふたりで南太平洋の小島伝いにオーストラリアまで旅したことがあった。あの時、きみは背中に結構な日焼けをして、散々痛いってボヤいていたっけ。ただ暖かい冬を過ごすんだと、なんのこだわりもなく決めた計画で、そのせいか南半球の十二月の陽射しをすっかり侮っていた。きみは、鼻の頭の皮が剥けたまま戻ってきた新年の東京で、『スキー帰り』だなんて言い訳してるのを聞いて笑っちゃったよ。それからの冬休みはCOVID-19のせいで、家に籠もって大人しくしていたけれど、懲りずにまたふたりでどこかへ冬の旅をしたい——日焼けしない程度に暖かいところへ...。 日焼けしない程度に暖かいところへ...

  • 踊っていたいたイルミネーションの天使達は、揃って天国へ帰ってしまった

     午前零時を回って街の灯りが消えはじめると、舗道に設えられた小さな尖塔の上で、それまでクルクルと回りながら踊っていたイルミネーションの天使達は、揃って天国へ帰ってしまったようだ。人通りも途絶えて、気温は摂氏1度か2度。  【愚(goo)‎–あかりが消えたら】  踊っていたイルミネーションの天使達は、揃って天国へ帰ってしまった

  • 水口イチ子のクリスマスローズ

    庭に古ぼけた温室があって、卓球台を置いて遊べる程度の広さがある。何年か前に形見分けで、イチ子が祖母の家から専門業者に頼んで移築してもらってきた。今時はめずらしい重量のある全鉄骨総硝子張りで、室温と陽射しの管理用に大きな換気窓と帆布製の可動シェードが設備されている——当初は、温室の形見分けってあるのかと不思議に思ったが、家を譲り受ける人もいるわけだから温室も「有り!」なんだろう。温室はイチ子にとっては、植物の越冬目的に使うと言うよりも、寒い冬の庭仕事を楽にするための作業場、言わば寒気除けのシェルターのようなものらしい。*ここ何年か十二月になると不思議に思うことがあった。それは鉢植えの手入れの後本来の使用目的どおり、外から温室内にほとんどの鉢植えを取り込むのだが、イチ子はある一群の鉢植えだけを寒空に残した——...水口イチ子のクリスマスローズ

  • 都立殿ヶ谷戸庭園近くのハンバーガーショップで輝くハインツ・トマトケチャップ

    (op.20241216-1/Studio31,TOKYO) 著名な作家でさえ自身の代表作が、実は会心作でないことは良くある話。趣味の世界に生きる人達にとっても、愛着があり棄てがたい作品が、何気ない『小品』であったりする。詰まるところ、それは誰のものでもなく、作家個人のものとしてだけ存在しているということだ。【RodStewartwiththeRoyalPhilharmonicOrchestra-MaggieMay】  都立殿ヶ谷戸庭園近くのハンバーガーショップで輝くハインツ・トマトケチャップ

  • 年の瀬をアメ横で人波に揉まれるか、東京湾の汽水域の波に揉まれるか

      年の瀬に日帰りでプチ旅行をしないかとイチ子さんを誘うと、「公共の乗り物に乗って、片道50㎞圏内でなるべく遠いところに行くっていうなら、結構、旅行した気分になれるんじゃないだろうか」と言う。テーブルの上にスケッチブックを開いておいて、今日いち日、それぞれ思い付いたコースをメモ書きしてみようということになった。予算はひとり一万円くらいで、『楽しそうだが、でも滅多に行かないところ』という条件付きは多少ハードルが高い。検討の結果、決まったコースは、『午前中、水上バスで日の出桟橋から隅田川を上って浅草へ。折り返して、お台場海浜公園まで下って日の出桟橋に戻る。朝食は軽食を持ち込んで船内で食べる。浜松町に戻ったら、あとは行き当たりばったりで歩いて、お腹が空いてきたら新宿中村屋でチキンカリーを食べて帰る』ということに...年の瀬をアメ横で人波に揉まれるか、東京湾の汽水域の波に揉まれるか

  • アリススプリングスの公設市場にて

    日に何度か車列を連ねて旅人達を乗せたバスが来ると、アリススプリングスの公設市場にある店はにわかに活気付く。アポリジニー達が土産物屋を出していて、どういう工程を採るかは詳らかではないが、剥いだ厚い樹木の皮を一枚板に伸ばし、それをキャンバス代わりに彩色した風景画を並べて売っている。先程レンタカーから下りてきた娘たちが、その店先で始めた品定め。ある娘は、赤い砂漠の夜に黄色い月が上った絵が気に入ったと言う。別な娘が、砂漠の夕暮れに西日を背に受け、人の影が長く伸びたの絵の寂寞とした情景が心にしみると言っている。また、ある娘は、小さな窓から望むようにも見える星空の絵が、深い海の水面を漂う夜光虫のようだと言う。*娘たちの誰がご推奨の絵を買ったかまでは見とどけなかったが、いずれにせよ、アポリジニーが気の遠くなるほどの時間...アリススプリングスの公設市場にて

  • 良いものを生み出せるかどうかは、更にそれよりずっと先のお話

    米映画『オン・ザ・ロード(2021)』より以前、芥川賞作家の村上龍が、放送協会の番組でアナウンサーにベストセラーを量産する才能について問われ、「才能とは『良いものを生み出す能力』ではなく、あるひとつのことに一日八時間なり打ち込んで、さらにそれを二十日間続けても「もう飽きた」などと言わずにいられる能力だと思うんですよ。良いものを生み出せるかどうかは、それよりずっとあとの問題です」と答えていた。*誰でも子供の頃にひとつのことに熱中し、「いい加減になさい!」と母親に叱られながらも、『飽きもせず、していられた好きなこと』があったろう。しかし、大人になるまでに、ほとんどの子供達がそれを放棄してしまう。*ブロガーを例にとれば——週に何回・何文字書くかにもよるが——一年から三年継続できる人は、全体の二十五%程度と言われ...良いものを生み出せるかどうかは、更にそれよりずっと先のお話

  • この夏に撮った古い思い出のような写真

      表紙に青カビが生えた古いアルバムが押し入れの奥から何十年振りかで出てきたりすると、思い出は美化されて記憶に留まるものなのか、いずれの写真も記憶と比べるとパッとしないのが口には出さない本音。過去の記憶は、形も色彩も朧気でハッキリしない。その場面の写真が残っていれば、それが記憶そのものに取って代わることもあるだろう。*フィルムは、生鮮品同様の生もの。なので冷暗所に置かれるべきだが、それでも品質が安定しているのは製造から二、三年で、それがインスタント・フィルムとなると条件は更に厳しくなり、出たとこ勝負で写してみないと分からない代物となる——現像液が乾いてしまうと黒つぶれになって全く写らないこともある。辛うじて、薄く赤みがかっていても写っていれば御の字で、そんな効果を狙って、わざと期限切れフィルムを買い漁る写...この夏に撮った古い思い出のような写真

  • アタシ等は神様を信じておるよ

      クリスマスということで、水口イチ子と神様の話になった。*『世界で認識されている多様な神様は、便宜的に印象・心象化され、天空にいるという設定になっているのか。』『神様は、その存在を信じるか否かの問題ではなく、それを身近に感じられるか否かの問題ではないか。』『では、感じられる人とそうではない人との違いはどこにあるのか。』『神学は宗教哲学だから、学べば面白いはずだ。』『アメリカでは通貨のすべてに《アタシ等は神様を信じておるよ》と書いてあるけど、無神論者だって二、三人はいるだろう。』*自然現象の中には、神様はいるかも知れないと思わせるような、妙なる暗示力がある。ターナーになったつもりで作画していたら、これはこれで旭日旗にも見えてきた。 【AiNinomiya-GodOnlyKnows】 アタシ等は神様を信じておるよ

  • イチ子さんの降誕祭準備

      イチ子さんの降誕祭準備(op.20241214-1/Studio31,TOKYO) 【ChrisRea-DrivingHomeForChristmas】 イチ子さんの降誕祭準備

  • 全米バーテンダー組合指定スコッチウイスキー

      過去、不景気を反映して、夫の小遣いが何度か減額された時期があった。サラリーマンの間には減額前でさえ、凡そ平均一万円程度の小遣いの不足感があった上での減額だから、夫は予算配分を根本的に再考する必要が生じた。二割までの減額だったら、それぞれの予算をチープなものに代えて凌ぐことが可能という過去のデータがある。例えば昼食や帰途の一盃をもっと安価な予算で済む店に代えるなど...。ところが三割減に及ぶと生活そのものを見直す必要が出てくる。帰途の一盃を止め、宅飲みにする。金の掛かる趣味は縮小するなど...。ひたすら貧乏学生時代に戻っていく感じだ。*酒屋やスーパーなどの洋酒の陳列棚を見ても不景気は分かる。今のレジはPOSで販売量が分かるから、売れないものは販売中止となる。*『J&Bウイスキー』は、全米バーテンダー組合...全米バーテンダー組合指定スコッチウイスキー

  • オマケとして付いてくるもの

      『予期せぬナントカ』とか『まぐれナントカ』は、誰もがたまに経験する。とりわけ新たな発想を必要とする芸術分野においては、無いよりあった方がいい。それを『運も実力のうち』と片付けるか、『神様、仏様、ご先祖様のお陰』と感謝するかは人それぞれだが、いずれにせよ、これは万物の運命にとって有難い助っ人となる。それを生涯に沢山呼び込めるか、まったく縁が無いかの違いは何から来るのか。例えば写真——途切れず続く時間の中で、いつシャッターを切ってもいいものを、何故、ある瞬間・その瞬間に人差し指に力を入れたのか。ラッキーな瞬間は、自らが呼び込んでいるのか。向上心や探究心にオマケとして付いてくるのか。 【BillyPreston-MySweetLord】 オマケとして付いてくるもの

  • ぼく達も、そんな音を聞いていたのだろうか

      当たり前のように刻まれる波のリズム。他に聞こえるのは、耳元をよぎる風と椰子の葉擦れだけ。あの夏、ぼく達も、そんな音を聞いていたのだろうか。  【ほりともひろ-Loveland,Island】 ぼく達も、そんな音を聞いていたのだろうか

  • アメリカ現代文学の四天王

    日本の文学界が先細りし始めたのはいつからだったか。それは芥川・直木両賞が水増し複数受賞を認めるようになった頃に符合する——それ以前の『今期は、受賞作なし』とした時代には、良い作品がなければ無理には売らないという良心があった。小説家の不作に至ったのは、文学業界など将来性がないといって『秀でた才能』が他の分野へ散ってしまった結果だ。同様に破綻した映画界では、優れたクリエーター達がアニメーション業界に移ってしまった。良い著作が生み出されなければ、必然的に気の利いた批評家も減る。日本の文芸評論分野でのベストセラーは、秋山駿の『信長』が最後になった。*ところで、日米では文学界のビジネス・システムが違うのでを同列では比較できないが、秋山駿と同い年のアメリカの文芸評論家ハロルド・ブルームに言わせると、アメリカ現代文学の...アメリカ現代文学の四天王

  • 乾燥した黄土の大地に冬の陽射しを映して

    フィレンツェから地中海に出て、海岸沿いに南下してローマへ行こうと考えていた。『リヴォルノまで50㎞』の道標。ある、さびれた村のガソリン・スタンドでのことだ。前期高齢者と見える主人が、ぼくの乗ってきた車がドイツのレンタカー・ナンバーなのに目ざとく気付く。「ドイツのどこから来たんだい?」と昔学んだらしいドイツ語で聞く。「フランクフルトからです」ぼくも下手なドイツ語で答える。主人によると、ドイツからアルプスを越えてイタリアに入る外国人は、通常、飛行機で鉄道はめずらしく、ましてや車で旧道を来るのは滅多にないと感心していた。「それで、この先はローマまで行くんだね?」「はい」「先は長いよ。それにしても、旧道を車で行くとは、いい旅行だ」と言いながら、片目をつぶってみせる。<fontcolor="#ff9900">*</...乾燥した黄土の大地に冬の陽射しを映して

  • クリスマス・ウイークに毎日ひと切れずつ食べるシュトーレン

     毎年、クリスマス・シーズンになるとシュトーレンを半ダースほど買う友人がいる。今頃からクリスマスが終わってもまだ家族で毎日ひと切れずつ食べるんだとか。それを知った誰からも「飽きないの?」と聞かれる、と何年か前に話していたのを思い出す。いつだったか、ある洋菓子司のコラムで『シュトーレンは、少しずつスライスして、時間の経過とともに熟成する味を楽しみながら...』と初めて知って、ポンと膝を打った。ナルホド。友人の彼が詳しく語らなかったのは、『熟成する味』を子細に説明するのに困難を感じたからかも知れない。欧州の伝統的なノエル・ケーキは、イヴだけじゃなく、やはりクリスマス・ウイークを通じて食べる価値も理由もあったという訳だ。【TheBeachBoys-LittleSaintNick】 クリスマス・ウイークに毎日ひと切れずつ食べるシュトーレン

  • 今年もまた『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』

    ニューヨークの、とある交差点。その一角に、古い小さな煙草屋『ブルックリン葉巻商会』はあった。店長は雇われの白人中年、名前をオーギー・レンという。土地柄、住人は白人も黒人も大人も子供も裕福な家庭に育った者は少ない。よって、強盗、かっぱらい、詐欺、ペテンなどが横行する地区ということになる。仮に生まれも育ちもこの地域で、それでいて現在は真っ当な人間に見える者がいるとすれば、それは現在そうだというだけのことで、過去から今までそんな人生を歩んできたかどうかとは別な話である。当然、過去を隠蔽すために、嘘と作り話で体よく粉飾せざるを得ない。まあ、これがこの地区に生まれ育ち、今もなお暮らす人達の処世術なのだろう。ブルックリン葉巻商会の目と鼻の先に、妻を銀行強盗の流れ弾で亡くした作家ポール・ベンジャミンが暮らしていた。妻を...今年もまた『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』

  • 冬のドーヴィル海岸 —— 映画『男と女』の周辺減光

    映画を学ぶと、撮影専攻でなくても教養の一環として『周辺減光』程度は学習するはずだ。『周辺減光』とは、スクリーンの四隅が中央部に比べて光量が少なく(露出不足に)なる症状。理由は、丸いレンズを通して入ってくる光を受け止める側のフィルムもまた丸ければ問題ないのだが、それが四角いから四隅に光が届かず(足りなくなり)、暗くなる。きのう、久し振りにルルーシュの『男と女(1966)』を観て『周辺減光』について書こうと思った。それは冬のドーヴィル海岸(避暑地)のシーンだった。当時、クロード・ルルーシュはまだ無名でスポンサーも付かず、自費で長篇を撮影していた。とにかく資金がない。カメラマン出身のルルーシュは、カメラは他のカメラマンの手には委ねず、自ら手持ち撮影もした。レンズとカメラの相性をテストして、理想の撮影環境を整える...冬のドーヴィル海岸——映画『男と女』の周辺減光

  • アーノルド・ベネットの『文学趣味』

    二十世紀初頭の英国の小説家アーノルド・ベネットのエッセー『文学趣味』は次のような一節で始まる。『文学趣味を上品な教養と考え、それを会得すれば自己が完成され、ひいては上流社会の一員として恥ずかしくないだけの人間になり得る——この誤った考えをまず最初に取り除く必要がある』これは、ぼくが大学に入って、最初に講義テキストとなったものだ。科目は『原典講読』だったか。まあ、いわゆる教養科目だが、教授が何でこんな古典をテキストに採用したのか卒業してからもずっと不思議に思っていた。教授にしてみれば、学生がいずれ大人になり、再読したいと思い出してくれた者だけが、ようやくこの本の本質に出会えればいいとでも思ってのことだったら嬉しい。今更なんだが、実に面白い。勢いチャールズ・ラムまで再読してしまった。アインシュタイン博士による...アーノルド・ベネットの『文学趣味』

  • 俺のビール漬けの魂は、世界中の枯れたクリスマスツリーよりも悲しい

    下宿屋のおばさんにしても、返送されてきた原稿の束とともに出版社からチナスキーに届いた私信を勝手に開けて読んでいいわけはないことくらい知っていた。しかし、心配で心配で、どうしても読まずにいられなかった——映画『酔いどれ詩人になるまえに(Factotum,2005)』よりDearMr.Chinaski:WearereturningthesefourstoriesbutwearekeepingMyBeerdrunkSoulisSadderThanAllTheDeadChristmasTreesofTheWorld.Wehavebeenwatchingyourworkforalongtimeandwearemosthappytoacceptthisstory.Sincerely,JohnMartinBlackSp...俺のビール漬けの魂は、世界中の枯れたクリスマスツリーよりも悲しい

  • 久保田万太郎が、俳句の芸術性を認めなかった尤もな理由

      『久保田万太郎が、俳句の芸術性を認めなかった尤もな理由』を——もし知らないなら——冬休みの空き時間に調べてみれば、その他の芸術に携わる者にとっても大変な戒めになる。これを面倒臭いと思う人用に要約しておこう——芸術作品は、安直に発表するなと言っている。誰からも添削を受けないで済むレベルにまで推敲を重ねてから発表せよと諭している。芸術家たる者、発表する一連の作品の出来不出来の幅が大きくてはいけないと論説している。 久保田万太郎が、俳句の芸術性を認めなかった尤もな理由

  • 本業以外のエッセーや雑文の方が秀でて面白い人達

    小説家の中には、本業以外のエッセーや雑文の方が秀でて面白い人は存外多い。記憶の古いところでは、五木寛之や吉行淳之介がそんなタイプ。【ThePenFriendClub-GoodLovin'】 本業以外のエッセーや雑文の方が秀でて面白い人達

  • 頁をめくる指が止まる

    麻布十番『豆源』のナッツにカマンベールチーズとゴルゴンゾーラチーズのパウダーをまぶしたものがある。それにヒマラヤ産岩塩を砕き、チョンチョンと付けては口に放り込みながら、月刊『別冊太陽』のバックナンバーを拾い読みしていた。『別冊太陽』は、1994年10月号。中程の一文に頁をめくる指が止まる。筆者を確認したら思ったとおり佐伯誠さん——極めてプロ好みの超寡作の文筆家——この人の文体を手本とする日本のライターは少なくない。作家に入れ込むと文体で著者がわかる。言わば、母親が作ってくれたお弁当のおかずの味を舌が判別するのと似ている。【GaryLewis&ThePlayboys-EverybodyLovesAClown】  頁をめくる指が止まる

  • DAISUKI!

      DAISUKI!(op.20241207-3/Studio31,TOKYO)  【白井貴子-SOMEDAY】  DAISUKI!

  • 夏の別れ

    あれから半年が過ぎた。(op.20241207-2/Studio31,TOKYO) 【Jean-MichelAntolin-Pennylane】 夏の別れ

  • 髪型と服さえ写っていれば

      池波正太郎のファンの間で有名な『献立日記』は、その日に食べたものだけが記録されている。ある時、どこぞの記者に『日記として機能するのか』と聞かれると、その日に食べたものを見返せば、誰とどこで何を食べ、どんな話をしたか思い出せると答えている。*バストサイズ、ウエストサイズで撮られた古い写真でも——背景が写っていなくても——髪型と服さえ写っていれば、いつ頃の撮影かくらいは記憶から検索できる。この写真からは、水口イチ子が、航空会社の機内誌に初めて記名記事が掲載された頃なのが分かる。 【TheBeachBoys-WhenIGrowUp】 髪型と服さえ写っていれば

  • ホリー・ゴライトリーみたいにはなれない

      高校生になる頃には、ぼくは、既にトルーマン・カポーティみたいになりたいと思っていた。ただ、それは優れた短編作家になりたいということではなく、単純に彼の自由なライフスタイルに憧れたに過ぎない。それを初めて水口イチ子に話したとき、「いい生き方だ!」と賛同してくれたイチ子ではあったが、加えて、「だけど、アタシは、ホリー・ゴライトリーみたいになるのはムリよ」と言われたのも記憶に残る。 【TheBeachBoys-GoodVibrations】 ホリー・ゴライトリーみたいにはなれない

  • マンハッタン・ビーチ

      ふたり一緒に通学していたから退屈しなかったとは言え、往復三時間が平気だったあの頃。学生最後の夏休み中の写真か——イチ子がマンハッタン・ビーチと勝手に呼んでいた海岸だろう。今はもう学生じゃなくなってしまったけれど、あの頃の夏が、まだ続いているような気がする。(op.20241206-1/Studio31,TOKYO) 【TheBeachBoys-Darlin'】 マンハッタン・ビーチ

  • 東京の冬の朝

    今年の東京の冬は、まだ霜の降りるような寒い朝はない。建築技術の進歩で、昔のように寒々とした朝餉の食卓もなくなった。エアコンのない時代の木造住宅は灯油ストーブだけだったから、家の中でも吐く息が白い日もあった。ところで冬の朝餉だが、旬の大根と油揚げの味噌汁の湯気をフーフー吹きつつ啜った頃が懐かしい。母親の出身地によるものなのか理由は不明だが、具の大根を短冊に切るのか拍子木にするのか、家庭により分かれるようだ。うちは拍子木だったが、イチ子さんは短冊に刻む。食感が多少異なるが、辛みまでも微妙に違って感じられるのは気のせいか。【CliffRichard-Angel】 東京の冬の朝

  • クォリティ

      商業写真家と同じクォリティのものを手に入れようとするアマチュア・カメラマンがいれば、その逆を目差す写真作家もいる。(op.20241202-1/Studio31,TOKYO) 【TheTributes-YouLikeMeTooMuch】 クォリティ

  • 夏休みの宿題の絵日記

      フランスの小説家でジャーナリスト、加えて放送作家のロジェ・グルニエが、自分と写真の関係について、その著書『写真の秘密』の一項『ひとつの源泉』の冒頭でこんなことを書きとめている——『書くことの道に入ると、写真というのは、自分で撮ったかどうかにかかわらず、思い出や資料といったものを越えた存在となる。それは想像力のためのトランポリン、インスピレーションの源泉なのであって、わたしはそれなしに済ますことはできそうにない。エクリチュールは、残された熱のおかげで、フィルムがうまく撮影するのに成功したひとりの人物、あるときからはもうそこにはおらず、過去のなかに呑みこまれてしまった人物の奇妙な赤外線写真と、似たようなものとなるのだ。(宮下志朗訳)』*一枚の写真に定着された情景は実に多くを語る。*子供の頃の『夏休みの宿題...夏休みの宿題の絵日記

  • 永遠のWhy

    ぼくのフォトグラーフのテーマは『永遠のWhy』。そして、きみがいつもその点景であれば、他には何もいらない。【Sylvia-Nobody】  <ahref="https://blogmura.com/profiles/11138716?p_cid=11138716"><imgsrc="https://blogparts.blogmura.com/parts_image/user/pv11138716.gif"alt="PVアクセスランキングにほんブログ村"/></a>永遠のWhy

  • 制作・創作の方法

      何を書くかではなく、どう書くか。何を描くかではなく、どう描くか。何を撮るかではなく、どう撮るか。『技術、方法』の探究・研究は、多くは苦労を伴うが、面白く楽しい。 【ThePenFriendClub-土曜日の恋人】 制作・創作の方法

  • 毎年CDが品薄になるほど売れてるらしい

      制作していて、『これはイイものになりそうだ』と予感しても、実際、思いどおりにイイものになることはマレ。ところが『こりゃダメそうだな』と感じたものは概ね間違いなくダメ。それに早々と気付いて手を引いたならまだしも、制作終盤にかかった頃にようやく悟ったりするとしばらく落ち込む。それでもそこで、それまで放ったらかしておいた他のものに手を入れて、結果、いくらかマシな状況が見えたりすると早く立ち直れることもある。この写真など、いつものように撮った写真を絵にして、その絵を『期限切れのフィルム』で再度撮影。明るい室内で放置現像するという謎の行程を踏んだが、自分では気に入った出来になった。*欧米では有給休暇をクリスマス休暇と合わせて取ると、早い人は16日くらいから休みに入る(そういう人は新年2日が仕事始めとなるが......毎年CDが品薄になるほど売れてるらしい

  • ポスター、返してくれッ!

    河内桃子(こうち・ももこ1932-1998)ハロルド・ピンターが2008年に亡くなったとき、思い出したことがあった。ぼくは、彼が原作を書いた芝居のポスターを自分の部屋の壁に大事に貼っていたのだった(1980年11月20日~12月4日、六本木俳優座劇場。ハロルド・ピンター作。喜志哲雄訳。島田安行演出。主演河内桃子。本邦初演『背信』)。黒を背景に、まだ四十代の河内桃子が『ピンクの薄いVネック・セーターを半分脱いだ写真』を使った全紙判ポスター。本当に、本当に大事にしていたのに、いつの間にか母親に捨てられていた。そう言えば、ポール・サイモンも『僕のコダクローム』の歌詞に『ニコンのカメラにコダクロームを入れて撮った女の子達の写真を母親に取り上げられた』ことを書いていたっけ。教育的見地から取り上げたのだろうけれど、そ...ポスター、返してくれッ!

  • 週末も祝日も関係ない身の上

    東京タワーが間近に見えるホテル——18階のラウンジ・バー。時間に関係なく働くのが許される者にとって、終業が深夜近くになるのは東京でも紐育でも同じ。そのあとちょっと食べて飲めるところとなると限られてくる。このあと明日の昼過ぎまで寝ていられるならいいのだが、目覚まし時計が鳴るのは毎日判で押したように午前六時半。昼寝や居眠りはしないかって?そりゃ、しますよ——知らないうちに居眠りしているなど日常茶飯。でもそれは、うらやましがられるようなこととは違います。なぜなら、それと引き換えに週末も祝日も関係ない身の上ですから...。【TheLadyShelters-Let'sSpendTheNightTogether】 週末も祝日も関係ない身の上

  • 言うよりは難しいこと

      他人の目を(他人の評価を)気にせず生きる——言うよりは難しいことだ。 【TheRollingStones-It'sAllOverNow】 言うよりは難しいこと

  • 夏が、早々と腰を据えようとしていた

    そして海辺の六月——夏が、早々と腰を据えようとしていた。ビーチサイドレジデンスに入居して間もなく、最初に挨拶をしたのは103号室の谷田部という老人で、このアパートの住人についての知識のほとんどがこの老人からと言ってよかった。なんでも、かつて、大学で音響学を教えていたとのことで、何年か前に奥さんを亡くしてからは鎌倉の自宅を売って、このアパートでひとり住まいを始めたと話した。なお、その元教授によれば、ぼくの部屋の前の住人は四十絡みの男で、どうやら、やばいクスリに関わっていたらしく、ある日、警察に連れて行かれたまま、二度と戻って来ることはなかったという。  【KTTunstall-SuddenlyISee】  夏が、早々と腰を据えようとしていた

  • ヒマラヤスギの木立

     ビーチサイドレジデンスでぼくの住まいとなったのは玄関ホールの上の部屋で、ドアに色褪せたステンシル塗装で201とあった。ホテル時代のままのようだ。アパートの敷地の東西の端に沿って、風と砂を避けるために植えられたヒマラヤスギの木立があった。(op.20241202-1/Studio31,TOKYO)   ヒマラヤスギの木立

  • 創作・制作のスタイルやテクニックの最前線

      創作・制作の新しいスタイルやテクニックは遅れてやってくる。それは親が子供をしつけるのに似ていて、およそ30年ほど遅れてくる。つまり、平成の子供は戦後昭和の親の常識で育てられ、その戦後昭和の親は戦前昭和の常識で育てられることに似ている。今、芸術系の大学で学生が学んでいるのは、実は最新のスタイルやテクニックではなく、30年ほど前の定説を学んでいるに過ぎない。今までにない新しいものは自分で探求するしかない。概ねその端緒は学校にはなく、多くはフィールドに落ちている。  創作・制作のスタイルやテクニックの最前線

  • ハーフムーンキッチン

     『ビーチサイド・レジデンス』の玄関ホールには、以前ホテルだった頃の小さな帳場の痕跡があって、そこは、今では鍵付きで木造りのポストが並ぶ、郵便室になっている。壁を隔てて隣は、かつてはダイニングルームだった所で、長いこと使われずにいたが、住人の澤口という六十半ばの男が、他所から通ってくるセイさんと呼ばれる同じ年格好の男とふたりで『ハーフムーンキッチン』という名の食堂を十年程前から開いている。店は、サマーシーズンは海水浴客、普段はサーファーで、なかなか繁盛している。大きな硝子のはまった店の扉には、太いゴシック文字のアルファベットで店名を書いたステッカーが貼ってあり、赤字に白抜き文字のそれは、やはり住人で藤沢辺りのデザイン事務所だか電飾看板の製作会社だかに勤める、Tという五十をわずかに過ぎた女性がこしらえてくれ...ハーフムーンキッチン

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