(op.20250125/Studio31,TOKYO) 早春、休耕田や河原の土手、野原で、アドニスの化身『福寿草』やイソギクを探し、このカメラで撮影した思い出がある。文献によると、江戸時代は、今の東京郊外青梅が栽培地としての記録が残る。 ゼンザブロニカ
このサイトは "Creative Writing" の個人的なワークショップです。テキストは過去に遡り、随時補筆・改訂を行うため、いずれも『未定稿』です。
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(op.20250125/Studio31,TOKYO) 早春、休耕田や河原の土手、野原で、アドニスの化身『福寿草』やイソギクを探し、このカメラで撮影した思い出がある。文献によると、江戸時代は、今の東京郊外青梅が栽培地としての記録が残る。 ゼンザブロニカ
突堤で波が遮られているとは言え、外海に突き出したこの岬にしては、めずらしく穏やかな昼下がりの海。南中した陽を見上げ、「灯台まで泳ごう」とは、今日は誰も言い出さない。来週の今日は、もう学校が始まっている。 【白井貴子-抱きしめて】 今日は誰も言い出さない
まぶしい転校生だった。まぶしすぎて、親しく話すなど、ついぞ卒業までできず仕舞い...。<palign="center"><fontcolor="#ff9900">*</font></p>二十年程たって同窓会の幹事をさせられたとき、消息不明だった彼女の実家に電話して現住所を尋ねたことがあった。口調からして恐らく御尊父だろう、「あれはもううちの娘でもなんでもないから、そういった件では、以後、電話しないでもらいたい」。父親の意に沿わない男とでも結婚したか...。所帯やつれしていないことを祈る。まぁ、ぼくの想い出の中のきみは、未だ『まぶしい転校生』であることに変わりはないのだが...。<palign="center">【Jan&Dean-TheNewGirlInSchool】</p> <ahref="https...まぶしい転校生
早く寝て夜中に目が覚めたりして、前の食事から六時間以上経っていると、人は通常お腹が空くことになっている。自室でお湯は直ぐに湧かせるので、準備さえあれば軽食は何でも用意できる。今年になってからは、思い出したようにクラム・チャウダーを連日飲んでいる。昔、アメリカ東海岸のボストンで仕事をしたとき、レストランで出された、名物のクラム・チャウダーが大層美味しかったので、一緒に仕事をしていた日本語を理解するカメラマンのケビンに、当地の女子は家庭でこれを作るのかと聞くと、そんな女はいない、みんな缶詰だという。スープが日本の味噌汁とイメージが重なっていたから、スープぐらい作らないのかと不思議に思って尋ねると、日本だって、麺ツユを自分の家では作らないだろうと言う。なんか、分かったような分かんないような返答だった。 【...キャンベル・クラムチャウダー
(op.20250124/Studio31,TOKYO) 琉球諸島で防風林として使われるフクギは、梅雨の頃、ロウバイに似た白い小さな花を付ける。夏が終わりに近付くと、黄色い、美味しそうな実は、熟して銀杏のように路上に落ちる。落下したフクギの実は、銀杏の実同様、芳香は出さない。マンゴーの仲間というが、実際はコウモリしか食べない(というか、臭くて食べられない)。 【M.Tallstrom-FoggyMountainBreakdown】 梅雨の頃、ロウバイに似た白い小さな花を付ける
イチ子さんからの葉書——引き出しの中から出てきた古い絵葉書には、ハワイ・ラナイ・シティ局の消印があった。『まるで街中の個人タクシーのようにセスナ機を運航する会社があります。HawaiiIslandsAircraftsと言って、一応、コーポレーションなんだけど、果てしなく個人経営に近いように見えます。所有する飛行機はセスナが1機半。その半分というのは修理中のが一機あって、この先、エンジンが回るかどうか、まだわからないからなんですって。社長兼パイロット兼エンジニア兼受付兼電話番を全部ひとりでやってるミューラーさんていう恰幅のいいオジさんが、そんなふうに説明してくれました。あなたと同じ、与太話が好きそうなオジさんでした。お誕生日、おめでとう。August29th,1996』【TheBeachBoys-Hawai...セスナが1機半
(op.20250123/Studio31,TOKYO) 子供の頃の夏休みの宿題、とりわけ絵日記には苦労した思い出しかない。しかし今なら、もし『絵日記描き』という職業があって、一枚描くごとに収入を得られるなら、迷う事なく生業にしていただろう。 『書くことがない』なんてあり得ない
恋のエチュード(Les Deux Anglaises et le Continent)
室内の温度は22~23℃を越えないように設定するのが好きだと毎年冬になるとイチ子さんが言う。湿度にもよるが、その温度だと首筋・背筋がいくらか肌寒く感じることがあって、そんな時は——ほとんど毎日 —— 充分に暖房が行き届かなかった昔の欧州人のように着るもので調節しようとぼくを誘う。その方が風邪をひかないと信じているようだ。理由はわからないが確かに風邪をひくことはほとんどなくなった。着るものは、ぼくは、お金のない貧乏大学生のように概ねフード付きのトレーナーを重ね着している。実際、大学生の頃からのものもあり、襟や袖もすり切れているが愛着があって棄てきれない。胸や背中にいろいろと書いてあるが、それを説明していると話が逸れるのでここでは触れるのは止めておこう。二十数年前、ロサンジェルスに居た頃に買ったものが多く、当...恋のエチュード(LesDeuxAnglaisesetleContinent)
(op.20250122/Studio31,TOKYO) 暑い時分に撮った写真や、その頃を描いた絵を引っ張り出してきて、眺めて暖をとる。これは、そんな一枚の絵画に過ぎないが、作者には、この場面・この瞬間にまつわる思い出が重なるので暖かみはひとしお。 【TheGoldenCups-WomanWoman】 冬のいち日——眺めて暖をとる
いつもどおり朝食を向かい合って食べたのに、午后は別々に仕事で都内へ。ふたりとも車を使わず、茅ヶ崎からJR湘南新宿ラインを使ったから、帰途待ち合わせれば、都内で一緒にお酒も飲めるというわけだ。「家から遠く離れた場所で待ち合わせて会うって、なんか不思議な感じがするね」とイチ子さん。 【加藤和彦-日本の幸福】 なんか不思議な感じがする
ひとつ屋根の下で生活していれば、「なんか食べたいものある?」と聞かれることは良くある。「竹輪を3センチくらいに輪切りにしたのを横に半分に割ったやつを油炒めにして醤油を絡めたやつ」とぼく。「なんなの?その、お母さんのいない父子家庭で、高校生の娘が作る夕飯のオカズみたいなのってwww」とイチ子さん。料理は凝ると失敗する確率が上がる。基本的なものを作っていれば日々大成功。 【CThePenFriendClub-Darlin'】高校生の娘が作る夕飯のオカズ
寒い日はお燗した日本酒が美味しい。でも、家で日本酒を呑みきってしまった時はどうするか。良く代用するのは、HotButteredRum.もともとは英国で防寒飲料として飲まれていたようなものなので、基本的なレシピはあるにはあるが、実際は、そんなものどうでもいいような作り方をする。ダークラム或いはホワイトラム(本人の適量)+お湯(本人の適量)+砂糖(本人の適量)+無塩バター(親指の先程度の大きさをフロート)。水口イチ子は、平気で有塩バターを使うこともある。西瓜に塩を振るくらいだから、塩は糖分の敵ではないという考えから来ているようだ。昨日今日は、いきなりHotButteredRumを飲むことも多い。*今夜は、水口イチ子が一番好きだというChristopherCrossの『NeverBeTheSame』をエンド...水口イチ子が一番好きな歌
ツガイの羊を使った実験では、ペアの関係は三年でひと区切りするらしい。なんで人で実験しないのかは不明。きっと、研究者は羊のデータが欲しかったんだろうが、しかし、誰がその結果を必要とするのだろう。世の中には、お金になる研究とそうじゃないのがあるのは確か。この話に、イチ子さんはクスクス笑いっぱなし。 【LesleyGore-FoolsRushIn(WhereAngelsFearToTread)】 羊を使った実験
サンフランシスコの漁師町フィッシャーマンズワーフ。世界中の漁師町同様、ここにも名物を食べさせる海鮮料理店が店を連ねる。ここのそれは、イチ子さんも一緒に描かれている看板にあるように『蟹』。欧米の作法では、茹でた蟹は溶かしバターに浸して食べる。ただし、日本人が大きな丸ごと一杯を溶かしバターだけで食べるのは難儀なことで飽きる!今は客が日本人と分かると醤油を持ってきてくれるが、昔は言って出てくれば良い方で、大方、その用意は無く、日本人の事情通達は、小さな容器に醤油を入れて持ち込んだという。今は、清酒も醤油も現地法人が生産している。 【RussWilloughby-GoAlltheWay】 サンフランシスコのフィッシャーマンズワーフ
祖母が若かった頃、等高線に沿って続くこの林道は、交通の便がいいため、知る人には長いこと一般道のように使われてきたという——いち時は舗装して県道に昇格させようかという話にもなりかけていたが、なぜか幅員だけが拡張されただけで舗装化は見送られてしまったようだ。かつて辺りには夏の家が散見された別荘地ではあったが、バブル崩壊後は次第に使われなくなって空き家も増えた——それ以前、都会では、この辺りに大きな別荘を持つことは出世のステイタスと言われたこともあったが、その世代がみんな他界して以降、価値観が変わり、続けて使おうという子孫も減ったのが事の真相のようだ。周辺は1964年以前の静けさを取り戻そうとしている。画家だった祖母は、林道よりも遙かに低い裾野に『小さな夏の家』を持っていた。最寄りの駅からは歩いて三十分ほど...小さな夏の家
家から近い茅ヶ崎の海には、イチ子さんと四季を通じて頻繁に出かける。ボードを抱えて行くことがほとんどだが、散歩やピクニックでも行く。いずれにせよ、外食を予定しない限り、イチ子さんが作ったサンドウィッチを持っていくのだが、そのサンドウィッチは、家では作ることのない特別なものが用意される。米国製の無糖のピーナッツバターを塗って、補糖のためにいちごジャムをたっぷりと重ね塗りしたやつ。特に海から上がったあとに食べるそれは、口の中が塩っぱいので甘さはひとしおだし、疲労回復にも大いに役立つ。今日の海は風があって、波が綺麗に立ち上がりにくいという地域FMの情報だったので、海には入らずピクニックになった。 【ThePolice-DeDoDoDo,DeDaDaDa】 ピーナッツバターといちごジャムのサンドウィッチ
新年になったからといって、何か変わったことがあるわけじゃない。いつもどおり日が昇る頃に目覚め、数行の文章が成り立つ程度のわずかな閃きがやって来ることを願う——そんな祈りにも似た思いと共にいち日が始まる。そのわずかな閃きが、『きみに書く物語』に膨らんだなら、今日いち日は幸せな時間になる。 【BeeGees-I'veGottaGetAMessageToYou】 きみに書く物語
1964年のアメリカ。ペンシルベニア州のある田舎町にパターソン電気商会はあった。ある日、ハイスクールを卒業して家業を手伝うガイ・パターソンのところに学生時代から知り合いでバンドをやっている友人が訪ねてきた。「今夜、バンドコンテストに出ることになっているんだけど、ドラマーが急に腕を骨折したから、今夜だけドラムを叩いてくれないか」と言う。*そのバンドの十八番のオリジナル曲——本来はバラードであるその曲を、ガイはテンポを無視して、強引にアップ・テンポでドラムを叩く。それにより乗りの良いロックンロールナンバーと化したその曲”ThatThingYouDo!(きみのすること!)”で、そのバンド『ザ・ワンダーズ』は念願の優勝を果たす。その夜以来、市内にあるイタリアン・レストランでのライブのアルバイト契約、さらにシング...すべてをあなたに!
「さあ、靴を洗うわよ」と言うとイチ子さんは、水道のあるバルコンの端までスニーカーを提げて移動する。屋根の風見鶏を見る上げると、今日は、南西の風——どおりで汗ばむと思った。「ウッドデッキのペンキは、今年は桜が咲くまでには塗り替えるよ。早く済ませないと、すぐに暑くなるし...」とぼく——その頃はもう、きっと半袖を着ているんだろうな...。 【下町ノ夏-夏の旅路】 その頃はもう、きっと半袖を着ているんだろうな
「アタシがYouTubeでフォローしている人が新しいコンテンツをアップしていて、パット・モランのピアノ・トリオのレコードを聴かせてくれているのよ」とイチ子さんが嬉しそうに言う。続けて、「パットというニックネームは、男女共通で、男だとパトリック、女ならパトリシア。女子には他にパティーっていう、もうひとつ有名な呼び方もあるわね。でも、今日のパットは女子の方よ」とも。イチ子さんが、昔、お母さんから譲ってもらったLPレコードの中に、ちょうど同じレコードがあって、イチ子さんのお気に入りでもある一曲をこれから聴かせてくれるという。「ベースは、あなたの好きなスコット・ラファロよ。知ってた?」「知らない。まだ聴いたことない」 【PatMoran-InYourOwnSweetWay】 パット・モランのピアノ・トリオ
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(op.20250125/Studio31,TOKYO) 早春、休耕田や河原の土手、野原で、アドニスの化身『福寿草』やイソギクを探し、このカメラで撮影した思い出がある。文献によると、江戸時代は、今の東京郊外青梅が栽培地としての記録が残る。 ゼンザブロニカ
突堤で波が遮られているとは言え、外海に突き出したこの岬にしては、めずらしく穏やかな昼下がりの海。南中した陽を見上げ、「灯台まで泳ごう」とは、今日は誰も言い出さない。来週の今日は、もう学校が始まっている。 【白井貴子-抱きしめて】 今日は誰も言い出さない
まぶしい転校生だった。まぶしすぎて、親しく話すなど、ついぞ卒業までできず仕舞い...。<palign="center"><fontcolor="#ff9900">*</font></p>二十年程たって同窓会の幹事をさせられたとき、消息不明だった彼女の実家に電話して現住所を尋ねたことがあった。口調からして恐らく御尊父だろう、「あれはもううちの娘でもなんでもないから、そういった件では、以後、電話しないでもらいたい」。父親の意に沿わない男とでも結婚したか...。所帯やつれしていないことを祈る。まぁ、ぼくの想い出の中のきみは、未だ『まぶしい転校生』であることに変わりはないのだが...。<palign="center">【Jan&Dean-TheNewGirlInSchool】</p> <ahref="https...まぶしい転校生
早く寝て夜中に目が覚めたりして、前の食事から六時間以上経っていると、人は通常お腹が空くことになっている。自室でお湯は直ぐに湧かせるので、準備さえあれば軽食は何でも用意できる。今年になってからは、思い出したようにクラム・チャウダーを連日飲んでいる。昔、アメリカ東海岸のボストンで仕事をしたとき、レストランで出された、名物のクラム・チャウダーが大層美味しかったので、一緒に仕事をしていた日本語を理解するカメラマンのケビンに、当地の女子は家庭でこれを作るのかと聞くと、そんな女はいない、みんな缶詰だという。スープが日本の味噌汁とイメージが重なっていたから、スープぐらい作らないのかと不思議に思って尋ねると、日本だって、麺ツユを自分の家では作らないだろうと言う。なんか、分かったような分かんないような返答だった。 【...キャンベル・クラムチャウダー
(op.20250124/Studio31,TOKYO) 琉球諸島で防風林として使われるフクギは、梅雨の頃、ロウバイに似た白い小さな花を付ける。夏が終わりに近付くと、黄色い、美味しそうな実は、熟して銀杏のように路上に落ちる。落下したフクギの実は、銀杏の実同様、芳香は出さない。マンゴーの仲間というが、実際はコウモリしか食べない(というか、臭くて食べられない)。 【M.Tallstrom-FoggyMountainBreakdown】 梅雨の頃、ロウバイに似た白い小さな花を付ける
イチ子さんからの葉書——引き出しの中から出てきた古い絵葉書には、ハワイ・ラナイ・シティ局の消印があった。『まるで街中の個人タクシーのようにセスナ機を運航する会社があります。HawaiiIslandsAircraftsと言って、一応、コーポレーションなんだけど、果てしなく個人経営に近いように見えます。所有する飛行機はセスナが1機半。その半分というのは修理中のが一機あって、この先、エンジンが回るかどうか、まだわからないからなんですって。社長兼パイロット兼エンジニア兼受付兼電話番を全部ひとりでやってるミューラーさんていう恰幅のいいオジさんが、そんなふうに説明してくれました。あなたと同じ、与太話が好きそうなオジさんでした。お誕生日、おめでとう。August29th,1996』【TheBeachBoys-Hawai...セスナが1機半
(op.20250123/Studio31,TOKYO) 子供の頃の夏休みの宿題、とりわけ絵日記には苦労した思い出しかない。しかし今なら、もし『絵日記描き』という職業があって、一枚描くごとに収入を得られるなら、迷う事なく生業にしていただろう。 『書くことがない』なんてあり得ない
室内の温度は22~23℃を越えないように設定するのが好きだと毎年冬になるとイチ子さんが言う。湿度にもよるが、その温度だと首筋・背筋がいくらか肌寒く感じることがあって、そんな時は——ほとんど毎日 —— 充分に暖房が行き届かなかった昔の欧州人のように着るもので調節しようとぼくを誘う。その方が風邪をひかないと信じているようだ。理由はわからないが確かに風邪をひくことはほとんどなくなった。着るものは、ぼくは、お金のない貧乏大学生のように概ねフード付きのトレーナーを重ね着している。実際、大学生の頃からのものもあり、襟や袖もすり切れているが愛着があって棄てきれない。胸や背中にいろいろと書いてあるが、それを説明していると話が逸れるのでここでは触れるのは止めておこう。二十数年前、ロサンジェルスに居た頃に買ったものが多く、当...恋のエチュード(LesDeuxAnglaisesetleContinent)
(op.20250122/Studio31,TOKYO) 暑い時分に撮った写真や、その頃を描いた絵を引っ張り出してきて、眺めて暖をとる。これは、そんな一枚の絵画に過ぎないが、作者には、この場面・この瞬間にまつわる思い出が重なるので暖かみはひとしお。 【TheGoldenCups-WomanWoman】 冬のいち日——眺めて暖をとる
いつもどおり朝食を向かい合って食べたのに、午后は別々に仕事で都内へ。ふたりとも車を使わず、茅ヶ崎からJR湘南新宿ラインを使ったから、帰途待ち合わせれば、都内で一緒にお酒も飲めるというわけだ。「家から遠く離れた場所で待ち合わせて会うって、なんか不思議な感じがするね」とイチ子さん。 【加藤和彦-日本の幸福】 なんか不思議な感じがする
ひとつ屋根の下で生活していれば、「なんか食べたいものある?」と聞かれることは良くある。「竹輪を3センチくらいに輪切りにしたのを横に半分に割ったやつを油炒めにして醤油を絡めたやつ」とぼく。「なんなの?その、お母さんのいない父子家庭で、高校生の娘が作る夕飯のオカズみたいなのってwww」とイチ子さん。料理は凝ると失敗する確率が上がる。基本的なものを作っていれば日々大成功。 【CThePenFriendClub-Darlin'】高校生の娘が作る夕飯のオカズ
寒い日はお燗した日本酒が美味しい。でも、家で日本酒を呑みきってしまった時はどうするか。良く代用するのは、HotButteredRum.もともとは英国で防寒飲料として飲まれていたようなものなので、基本的なレシピはあるにはあるが、実際は、そんなものどうでもいいような作り方をする。ダークラム或いはホワイトラム(本人の適量)+お湯(本人の適量)+砂糖(本人の適量)+無塩バター(親指の先程度の大きさをフロート)。水口イチ子は、平気で有塩バターを使うこともある。西瓜に塩を振るくらいだから、塩は糖分の敵ではないという考えから来ているようだ。昨日今日は、いきなりHotButteredRumを飲むことも多い。*今夜は、水口イチ子が一番好きだというChristopherCrossの『NeverBeTheSame』をエンド...水口イチ子が一番好きな歌
ツガイの羊を使った実験では、ペアの関係は三年でひと区切りするらしい。なんで人で実験しないのかは不明。きっと、研究者は羊のデータが欲しかったんだろうが、しかし、誰がその結果を必要とするのだろう。世の中には、お金になる研究とそうじゃないのがあるのは確か。この話に、イチ子さんはクスクス笑いっぱなし。 【LesleyGore-FoolsRushIn(WhereAngelsFearToTread)】 羊を使った実験
サンフランシスコの漁師町フィッシャーマンズワーフ。世界中の漁師町同様、ここにも名物を食べさせる海鮮料理店が店を連ねる。ここのそれは、イチ子さんも一緒に描かれている看板にあるように『蟹』。欧米の作法では、茹でた蟹は溶かしバターに浸して食べる。ただし、日本人が大きな丸ごと一杯を溶かしバターだけで食べるのは難儀なことで飽きる!今は客が日本人と分かると醤油を持ってきてくれるが、昔は言って出てくれば良い方で、大方、その用意は無く、日本人の事情通達は、小さな容器に醤油を入れて持ち込んだという。今は、清酒も醤油も現地法人が生産している。 【RussWilloughby-GoAlltheWay】 サンフランシスコのフィッシャーマンズワーフ
祖母が若かった頃、等高線に沿って続くこの林道は、交通の便がいいため、知る人には長いこと一般道のように使われてきたという——いち時は舗装して県道に昇格させようかという話にもなりかけていたが、なぜか幅員だけが拡張されただけで舗装化は見送られてしまったようだ。かつて辺りには夏の家が散見された別荘地ではあったが、バブル崩壊後は次第に使われなくなって空き家も増えた——それ以前、都会では、この辺りに大きな別荘を持つことは出世のステイタスと言われたこともあったが、その世代がみんな他界して以降、価値観が変わり、続けて使おうという子孫も減ったのが事の真相のようだ。周辺は1964年以前の静けさを取り戻そうとしている。画家だった祖母は、林道よりも遙かに低い裾野に『小さな夏の家』を持っていた。最寄りの駅からは歩いて三十分ほど...小さな夏の家
家から近い茅ヶ崎の海には、イチ子さんと四季を通じて頻繁に出かける。ボードを抱えて行くことがほとんどだが、散歩やピクニックでも行く。いずれにせよ、外食を予定しない限り、イチ子さんが作ったサンドウィッチを持っていくのだが、そのサンドウィッチは、家では作ることのない特別なものが用意される。米国製の無糖のピーナッツバターを塗って、補糖のためにいちごジャムをたっぷりと重ね塗りしたやつ。特に海から上がったあとに食べるそれは、口の中が塩っぱいので甘さはひとしおだし、疲労回復にも大いに役立つ。今日の海は風があって、波が綺麗に立ち上がりにくいという地域FMの情報だったので、海には入らずピクニックになった。 【ThePolice-DeDoDoDo,DeDaDaDa】 ピーナッツバターといちごジャムのサンドウィッチ
新年になったからといって、何か変わったことがあるわけじゃない。いつもどおり日が昇る頃に目覚め、数行の文章が成り立つ程度のわずかな閃きがやって来ることを願う——そんな祈りにも似た思いと共にいち日が始まる。そのわずかな閃きが、『きみに書く物語』に膨らんだなら、今日いち日は幸せな時間になる。 【BeeGees-I'veGottaGetAMessageToYou】 きみに書く物語
1964年のアメリカ。ペンシルベニア州のある田舎町にパターソン電気商会はあった。ある日、ハイスクールを卒業して家業を手伝うガイ・パターソンのところに学生時代から知り合いでバンドをやっている友人が訪ねてきた。「今夜、バンドコンテストに出ることになっているんだけど、ドラマーが急に腕を骨折したから、今夜だけドラムを叩いてくれないか」と言う。*そのバンドの十八番のオリジナル曲——本来はバラードであるその曲を、ガイはテンポを無視して、強引にアップ・テンポでドラムを叩く。それにより乗りの良いロックンロールナンバーと化したその曲”ThatThingYouDo!(きみのすること!)”で、そのバンド『ザ・ワンダーズ』は念願の優勝を果たす。その夜以来、市内にあるイタリアン・レストランでのライブのアルバイト契約、さらにシング...すべてをあなたに!
「さあ、靴を洗うわよ」と言うとイチ子さんは、水道のあるバルコンの端までスニーカーを提げて移動する。屋根の風見鶏を見る上げると、今日は、南西の風——どおりで汗ばむと思った。「ウッドデッキのペンキは、今年は桜が咲くまでには塗り替えるよ。早く済ませないと、すぐに暑くなるし...」とぼく——その頃はもう、きっと半袖を着ているんだろうな...。 【下町ノ夏-夏の旅路】 その頃はもう、きっと半袖を着ているんだろうな
「アタシがYouTubeでフォローしている人が新しいコンテンツをアップしていて、パット・モランのピアノ・トリオのレコードを聴かせてくれているのよ」とイチ子さんが嬉しそうに言う。続けて、「パットというニックネームは、男女共通で、男だとパトリック、女ならパトリシア。女子には他にパティーっていう、もうひとつ有名な呼び方もあるわね。でも、今日のパットは女子の方よ」とも。イチ子さんが、昔、お母さんから譲ってもらったLPレコードの中に、ちょうど同じレコードがあって、イチ子さんのお気に入りでもある一曲をこれから聴かせてくれるという。「ベースは、あなたの好きなスコット・ラファロよ。知ってた?」「知らない。まだ聴いたことない」 【PatMoran-InYourOwnSweetWay】 パット・モランのピアノ・トリオ
すっかり冬枯れた街の舗道に沿った垣根の先に蜜柑色の握りこぶし程の果実が七つ、八つ実を結ぶ。遠目には温暖な土地に幾千にも実る晩白柚(ばんぺいゆ)や不知火(しらぬい)の仲間なのだろう。*ほんの数日なのに随分長いこときみに逢っていないような気がする。冬の果実
かつて有名だった流行作家の洗面所にあったもの。洗面所にあったもの
アントニオ・ロペス・ガルシアの『マルメロの木』のクレヨンによる模写。長野県諏訪地方では、これをカリンと称す。マルメロの木
旅に出るのに重い腰が上がらない——というなら、その人にとって、そもそもそれは重要なものではないのだろう。そもそもそれは...
知多半島の夏。西日が眩しい。(S/N20230809-2)西日
わずらわしいことは全部忘れてしまう夏。いつまでも続いて欲しい時間。(S/N20230809-1)いつまでも続いて欲しい時間
知多郡南知多山海(やまみ)の海。夜は、伊良湖岬の灯台の灯りが見える。(S/N20240122-1)夏の思い出
夏休み。今度は一緒に来たい蒲郡市西浦町倉舞の海。(S/N20170623-1)夏休み
海辺の日常西尾市一色町佐久島の夏(S/N20230813-1)海辺の日常西尾市一色町佐久島の夏
起床時間。時々こんな頃合いで、イチ子が、ぼくの好きな辻村伊助の『スウィス日記』の一節をまるで聖書を読むかのような抑えた声で読み上げてくれることがある。 『御茶がすむと、表に出て、口笛なんか吹きながら、岩の上を歩き廻る。をりをり霧が絶えると、南に高くアガシホルンと、その後ろに、フィンシュテラールホルンが現はれる。裏のグロース・シュレックホルンの方面は、いつまでも霧におほはれて、その下に牙のように口をあいた、シュレック・フィルンのクレヴァースが、透明な緑を含んで、なんとも言えない気もちがする。明日私達が登のは、この氷河のふちを登るのだが、どう行ったらいいのか、まるで見当が...』 今朝の一節は『シュタールエック』の部分だろうか...。イチ子は、ぼくが目をつぶって聞いているのを知っている。やがて、「そろそろ起き...起床時間
八ヶ岳が目の前に大きくそびえて見える、千メートル林道下の伯母の夏の家を借りて、ある年、イチ子と過ごしたことを同じ季節が近付く度によく思い出す。イチ子は、伯母のウインザー風の古いテーブルセットが気に入り、霧の晴れた日差しのある午後は、庭によく持ち出してお茶などしていた。きみが落葉松林の中へ踏み入って摘んできては、いつもテーブルに飾っていた、あの黄色い花の名を今はもう思い出せないけど。あの花の名
誰に何も求めず、何も期待せず、ただ書く。あるいは描く。たまに、シャッターを押すだけの日もある。いずれにせよ、日本中(世界中かもしれない)にいる水口イチ子の話を(できれば休まず)制作する。これが唯一の日課。日課
今朝、ホテルの部屋で目覚めて以来、出会ったのは、食事を運んできてくれた島人のウエイターただひとり。*昨日の夕暮れ近く、パペーテから飛行機と船を乗り継いで、六時間掛けて漸くたどり着いた赤道直下の楽園。日付変更線を越えたから、日付はいち日戻って昨日のまま。人生の貴重ないち日を取り戻したっていうわけ。同じ船で桟橋に上がった数人のフランス人達は、未だ午前中の、もしくは遅い朝の惰眠をむさぼっているのか姿は見えない。*汐が引くとラグーンになるという島の入り江。波の音をコンサートホールで聴いているような錯覚の中にいる。ラグーン
鎌倉に閻魔大王がご本尊のお寺があって、ぼくもイチ子も子供の頃からそのお寺が好きだった。今でもそっち方面へ行く機会があるとお参りに立ち寄る。そこでは、仏教が規定する悪事と地獄のシステムについて学習できる。『誉める』のも度が過ぎると悪事になると知ったのもそのお寺でだった——高校生になって最初の夏休みだったのを覚えている。『誉める』のも度が過ぎると悪事になる
創作に伴う技術は、日々のトレーニングをサボると後退し、それを取り戻すにはサボった時間以上の時間を要するというのが作家の間での定説である。優劣の差の少ない作品を連作し得る作家は、実は概ね真面目に、日々、練習を重ねていることを証明している。証明
朝から超暑い夏のいち日。そういう日は、もう絶対に外出しないと決め、爽やかにエア・コンディショニングされた(梅雨明け間もない頃の軽井沢のような)部屋で作品を仕上げるのは嬉しい。朝から超暑い夏のいち日
アナログの時代、素人写真クラブの名人に聞いたことがあった。いつも入賞する『友人の母親』がいて教えてもらったことがある。題材にもよるのだろうが、例えば春の桜の開花を印画紙に焼くとき、フィルムはサクラカラー、印画紙はコダックを使うということだった。独特な色を表現出来たのだろう。フィルムと印画紙の(他人には明かさない)秘密の組み合わせが、撮影者それぞれにあったのかもしれない。秘密の組み合わせ
それは不意にやって来た。さながら、夕立のように。さながら、夕立のように
ハワイ州立公園。ハワイ島、アカカ・フォールズへの道。(S/N19770823-1)アカカ・フォールズへの道
誰にでも不可能と思っていたことが叶うマジック・シーズンがあるらしい。マジック・シーズン