普通の企業までブラック呼ばわりされる時代
「激務の割には低賃金。過大なノルマと軍隊的社風に支配され、離職率は常に高止まり──」。そんな劣悪な労働環境を放置し利益追求を優先する会社が、ネット上で「ブラック企業」と呼ばれ始めたのは1999年頃からと言われる。
当初、匿名掲示板の隠語の1つにすぎなかったその言葉は現在、若年層の雇用環境の悪化などを背景に企業側の想像以上に若い世代へ普及。今では、労務管理に違法性がある会社はもちろん、厳しい社員教育や猛烈営業をモットーとするスパルタ系企業や、若者の目に「時代遅れ」に映る古い体質の企業までがブラック呼ばわりされる時代になってきた。
たかが噂と侮るなかれ。ネットの影響力が拡大した今は、ブラック企業とひとたび認定されれば、人材確保や社会的信用にまで支障を来しかねない。ネット内の“ブラック情報”は既に学生が志望先を決める際の有力な参考資料となっており、消費者の間では「ブラック」と噂される企業の商品やサービスを敬遠する動きまで出てきた。
ネガティブな噂の発信源は複数ある。1つは、会社のシビアな労働条件や育成方針に不満を持つ若手社員。当然、間もなく職場に配属される新入社員も含まれる。
さらに、就職活動中の学生や下請け業者など外部の人間も噂の出所となりかねない。1人の社員が出入り業者に不遜な振る舞いをしたばかりに、スパルタとも旧態依然とも無縁の“普通の企業”が、ブラック企業の濡れ衣を着る可能性すら高まってきた。
その意味では、ブラック企業にならないためには、ただ単に若手社員の労働環境を見直すだけでは不十分。採用や日頃の商売の場における若い世代との「接し方」全般を見直し、そのうえで、入社後の「鍛え方」まで時代に合わせて変えていく必要がある。
企業にとって百害あって一利なしのブラック企業認定。それを防ぐ技術を取材した。