日本国憲法が揺らいでいる。憲法解釈を大きく変更した安保法が国会で成立し、自民党はさらに改憲を目指す。その根底にあるのが「押しつけ憲法論」だ。だが日本国憲法がこれまで70年間、この国の屋台骨として国民生活を営々と守り続けてきたのも事実だ。本コラムでは、憲法史上に特筆すべき出来事が起きた現場を訪ね、日本国憲法が果たしてきた役割、その価値を改めて考えていく。
シリーズ
今だから知りたい 憲法の現場から
完結
全14回 完結
容易に人権が奪われる現実と見て見ぬ振りの罪
原告側の弁護士や、地裁の裁判官、さらに政治家の判断で原告勝訴が確定した「ハンセン病違憲国家賠償裁判」。弱者に戦いを強いるこの現実は憲法のめざすところなのか。私たちは、本当の弱者の存在を見て見ぬ振りをしていないか。
「控訴断念」を選んだ政治家たちの決意
ハンセン病患者の隔離を規定し、差別や偏見を生んだ「らい予防法」。治療法が確立された後もこの法律は放置され、患者を苦しめた。2001年ようやく熊本地裁で法律の違憲性を認める判決が出たが、国側による控訴の可能性も残されていた。
人としての尊厳回復を求めて立ち上がった人たち
明日は70回目を迎える憲法記念日。そこで、違憲判決が下ったある裁判を振り返る。日本では、患者の隔離や断種までを規定した「らい予防法」が長らく患者の人権を脅かし、差別や偏見を作り出してきた。治療法が見つかった後も、法律は長く放置された。
改憲の論点3:抑止力としての憲法裁判所の意義
衆参両院の憲法審査会の場で、改憲項目の絞り込みが進められる。改憲論議の焦点として今回取り上げるテーマは「「憲法裁判所」。憲法裁判所があれば、「この法律は違憲の疑いがあるから調べてくれ」という争い方が成り立つ。
改憲の論点2:歯止めなき衆院解散権の是非
衆参両院の憲法審査会の場で、改憲項目の絞り込みが進められる予定だ。今回取り上げるテーマは、「衆院解散権の是非」。実は衆院の7条解散は、いまだ司法判断が下されてない。
改憲の論点1:参院合区と一票の格差の狭間
衆参両院の憲法審査会の場で、改憲項目の絞り込みが進められる予定だ。そこで今回から3回にわたり、各党・議員の発言の中から、改憲の興味深い論点を取り上げたいと思う。第1回のテーマは、参議院の合区解消だ。
憲法改正の流儀[アメリカ編]
他国の「憲法改正の流儀」を知ることは、わが国の改憲論議にも大いに参考になる。日本国憲法も強い影響を受けた米国合衆国憲法はいかなる改正を経てきたのか。一橋大学大学院法学研究科教授の阪口正二郎氏に聞いた。
憲法改正の流儀[フランス編]
憲法改正の振る舞いを他国のやり方に学ぶ「憲法改正の流儀」。今回はフランスを取り上げる。人権の母国フランスは「憲法の実験室」と呼ばれている。フランス憲法について詳しい京都大学大学院法学研究科の曽我部真裕教授に聞いた。
憲法改正の流儀 [ドイツ編]
日本国憲法はその成立から一度も改正を経験してない。一方で、改正を重ねる国もある。他国の「憲法改正の流儀」を知ることは、我が国の改憲論議にも参考になる。今回は、ドイツの改憲の「流儀」を東京大学法学部宍戸常寿教授にうかがった。
性的少数者が憲法に問うた「家族」「幸福」の形
性別適合手術を受け、戸籍を男性に変更し、女性と結婚。妻が人工授精で出産した子の出生届を提出した際、「父親としては認められない」と告げられる。子どもの戸籍は、父親の名前が空欄となった。父親は訴えを起こすも、一審・二審ともに敗訴…。
集団的自衛権「合憲」学者の論理と倫理
昨年、安保法案に多くの憲法学者が「違憲」の声を上げた。だが極めて少数だが、「合憲」と発言した者もいる。そのあと彼の身に何が起きたか。その主張にじっくり耳を傾けてみた。
市民からの問いこそが憲法の本質
昨年の安保法制閣議決定以来、多くの憲法学者たちが市民に向かって語り始めている。彼らはいまは何を考え、どう行動しようとしているのか。今回は大阪に住む市井の憲法学者での姿を伝える。
GHQでなく日本人が魂入れた憲法25条・生存権
生活保護など社会保障の根拠となる憲法25条「生存権」。これは、日本人によって描かれ、裁判を通じ、日本人によって魂が込められてきた歴史を持つ。GHQによる「施し」ではなく、日本人が発案して支えた「権利」なのだ。
「父殺しの女性」を救った日本初の法令違憲判決
今から47年前の1968(昭和43)年10月5日、父親Xさんと同居していた娘のA(当時29歳)がXさんのクビを絞めて殺すという事件が起きた。これは、日本で初めて最高裁判所が法令違憲の判決を下した事件といわれている。