IT(情報技術)各社が2024年秋から相次いで企業向けにAI(人工知能)エージェントの提供を始めた。その適用範囲は広い。米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は「(当社のAI エージェントは)サプライチェーン(供給網)の最適化から、顧客サポートの支援まで幅広く活用できる」と講演などで宣伝する。
様々な業務効率化の需要に支えられ、世界のAIエージェント市場は30年に、24年比で9倍超の471億ドル(約7兆3000億円)に達する見通しだ(インドのマーケッツ・アンド・マーケッツ調べ)。
業務ソフトを手掛ける米サービスナウも先ごろAIエージェント市場に参入した。日本法人でフィールド・イノベーション・オフィサーを務める佐宗龍氏は、「人口減が進む日本では、不足する労働力を補うことになるだろう」と言う。
例えばAIエージェントを使って顧客サポート用のチャットボットを構築したとする。大規模言語モデル(LLM)のおかげで従来のチャットボットより自然言語の理解力は高まる。顧客との自然な対話を通じて問い合わせ内容を理解し、返品システムや注文システムなどの各種ツールを使いこなしながら、自律的にタスクを処理する。
このように社員が手掛けていた業務の多くを肩代わりしてくれるので、労働力が不足していても、多くの業務をこなせる。ただ「商品を100個買うので、少し割り引いてくれない?」などという想定外の問い合わせを受けた場合には、社員に対応を引き継ぐ必要がある。
本来AIエージェントは、どんな問い合わせ内容であっても、自ら解決方法を考え出し、実行するのが理想。しかし現在、搭載されているAIモデルの推論能力はそこまで信頼性が高くない。タスクを遂行するためのサブタスクは人間が事前に定義しており、AIモデルは単に実行すべきサブタスクを選択しているだけだ。イレギュラーなタスクに直面したAIモデルが、解決に向けて自ら適切なサブタスクを考え出せるようになるには、推論能力の向上を待たねばならない。
この状況をブレークスルーし得るのが、PART1でも紹介した米オープンAIの「o3(オースリー)」をはじめとした、推論能力を追求したAIモデルだ。富士通でAI戦略を担うCEO室の土井悠哉プロジェクト長も「将来的にはAIエージェントが自ら問題解決の方法を考えるようになる」とみる。そうなればAIエージェントが人間の手を煩わせる機会は減るだろう。
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