アマゾンジャパンは2016年5月31日、Amazonプライム会員向けに提供している動画配信サービス「Amazonプライム・ビデオ」で視聴できる、日本発のAmazonオリジナル作品12作品を発表した。ドラマやバラエティー、ドキュメンタリー作品などを幅広くそろえる。Amazonプライム会員を拡大するのが狙い。発表会当日、アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長らに、オリジナル作品を重視する理由などを聞いた。

 Amazonプライムは、年会費3900円(税込)の会員制サービスだ。会員は、お急ぎ便やお届け日時指定便などを追加料金なしで利用できるほか、毎月電子書籍を一冊無料で読めるKindleオーナーライブラリー、音楽の聴き放題サービス「Amazonプライムミュージック」、動画の見放題サービス「Amazonプライム・ビデオ」など多くのサービスを利用できる。競合他社の定額制動画配信サービスと比べると、月額325円(税込)という安さや、他のサービスも利用できることが強みだ。

 Amazonプライム・ビデオには既存のテレビ番組や映画などのほか、Amazonが製作・配信するオリジナル作品、Amazon独占配信作品、Amazon先行配信作品があり、これが特徴になっている。今回紹介されたのはテレビ・ネット含めてAmazonプライム・ビデオでしか見られないオリジナル作品12本だ。オリジナル作品以外では、例えば現在テレビ放送中のアニメ「甲鉄城のカバネリ」は、インターネットの動画配信サービスではAmazonプライム・ビデオの独占配信作品となっている。

今回発表された12作品の配信予定表。<a href="http://www.amazon.co.jp/jporiginal" target="_blank">オリジナル作品を紹介する専用ページ</a>もある
今回発表された12作品の配信予定表。オリジナル作品を紹介する専用ページもある
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 Amazonプライム・ビデオで一番人気のジャンルは、特撮やアニメ作品を含むキッズ向けジャンルだ。その中から4月から配信されている「仮面ライダーアマゾンズ」が紹介された。アマゾンジャパンンとして初のオリジナル作品であり、9月からは米国やドイツなど海外でも配信される。続編のシーズン2も2017年春より配信予定だ。また、テレビ東京系列で7月より放送される「ウルトラマンオーブ」のスピンオフ作品の製作も発表された。

現在配信中の「仮面ライダーアマゾンズ」。会場には、オメガ、アルファの2人のアマゾンが登場した
現在配信中の「仮面ライダーアマゾンズ」。会場には、オメガ、アルファの2人のアマゾンが登場した
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 海外で人気が高いドキュメンタリーのジャンルでは、4K映像で日本文化を発信する「PRIME JAPAN 日本のこころに出会う」や、東京の文化の発信者を追う「Invisible TOKYO」などが紹介された。バラエティーでは配信中の「内村さまぁ~ず SECOND」が今年の秋より世界配信されるほか、ダウンタウン松本人志の新作「HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル」、日本酒紀行番組「酒と肴と石塚英彦」が紹介された。

「Invisible TOKYO」に登場する小室哲哉氏、ファッションモデル・女優の池田エライザさん
「Invisible TOKYO」に登場する小室哲哉氏、ファッションモデル・女優の池田エライザさん
ダウンタウン松本人志の新作「HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル」
ダウンタウン松本人志の新作「HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル」
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 ドラマでは、ディーン・フジオカ主演による人気コミック原作のラブストーリー「はぴまり ~Happy Marriage!?~」、人気テニス漫画原作の「ベイビーステップ」、約400年前にローマに派遣された少年たちを描く「MAGI 天正少年使節団と世界帝国」、「勇者ヨシヒコ」シリーズや「HK/変態仮面」シリーズなどを手掛けてきた福田雄一監督・脚本の「宇宙の仕事」などが紹介された。

「はぴまり ~Happy Marriage!?~」に出演するディーン・フジオカさん、清野菜名さん、藤原紀香さん、小野武彦さんが登場した
「はぴまり ~Happy Marriage!?~」に出演するディーン・フジオカさん、清野菜名さん、藤原紀香さん、小野武彦さんが登場した

好みの番組が必ず見つかるサービスにしたい

 Amazonがオリジナル作品を重視する理由などについて、アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長、Amazonスタジオのロイ・プライス代表、アマゾンジャパンのジェームズ・ファレル プライム・ビデオ・コンテンツ事業本部長に話を聞いた。

右より、ジャスパー・チャン氏、ロイ・プライス氏、ジェームズ・ファレル氏
右より、ジャスパー・チャン氏、ロイ・プライス氏、ジェームズ・ファレル氏
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 Amazonプライム・ビデオやネットフリックスなどの動画配信サービスでは、そのサービスでしか見られないオリジナル作品がひとつのウリになっている。Amazonプライム・ビデオでもオリジナル作品は人気が高く、配信が始まるとそれが視聴者数のランキングでNo.1になることもあるという。

「Amazonのこれまでの世界中での経験から、ユーザーにアピールするためにはオリジナル作品がとても重要だと分かった。だから力を入れて製作している」(ロイ・プライス氏)。

「Amazonプライム・ビデオはプライムサービスを充実させるためのもの。そしてオリジナル作品は、プライムサービスをユーザーに気に入ってもらうために非常に重要なものだと考えている」(ジャスパー・チャン)という。

Amazonオリジナル作品や映画の制作など、全コンテンツのライセンスと買い付けを担当している、Amazonスタジオのロイ・プライス代表
Amazonオリジナル作品や映画の制作など、全コンテンツのライセンスと買い付けを担当している、Amazonスタジオのロイ・プライス代表
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アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長
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アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長

 オリジナル作品の中でも、Amazonは日本で製作する作品を重視している。オリジナル作品は全世界で年内に40本製作予定だが、その半数にあたる20本が日本製作の予定だ。今回発表されたのはそのうちの12本で、あと8本は今後発表予定。日本発のコンテンツは日本のユーザーにアピールするためだけでなく、グローバルでも人気があるので重視しているという。

 そして他の動画配信サービスのオリジナル作品はドラマ作品が中心だが、Amazonプライム・ビデオではドラマ、バラエティー、キッズ、ドキュメンタリーなど幅広いジャンルの作品を製作しているのが特徴となっている。

「例えば、バラエティーで1番いい番組は、ドラマで5番目にいい番組よりも優れていると言えるだろう。そうやって優れている番組を集めていくと、自然にジャンルは広がっていく」(ロイ・プライス氏)

「ユーザー全員が好む番組を作るのは難しい。Amazonプライム・ビデオは、ここにくれば好みの番組が必ず見つかるという場所にしたい。そのために幅広く番組をそろえたいと考えている」(ジェームズ・ファレル氏)という。

 どんな作品を作るのかは、ユーザーのコメントや視聴者数のデータなど、Amazonがこれまで蓄積してきた膨大なデータから判断している。

「ユーザーに見たいと思ってもらえる作品作りを心がけている。日本のAmazonは、年齢や住んでいる地域などユーザーの幅がとても広いのが特徴だ。そうした幅広いユーザーに向けて、オリジナル作品を作っていきたい」(ジェームズ・ファレル氏)

アマゾンジャパンのジェームズ・ファレル プライム・ビデオ・コンテンツ事業本部長
アマゾンジャパンのジェームズ・ファレル プライム・ビデオ・コンテンツ事業本部長
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(文/湯浅英夫=IT・家電ジャーナリスト)

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