LCC(格安航空会社)は全席エコノミークラスが原則。だが、中距離LCCの中にはビジネスクラスを設定している航空会社もある。日本発着ではジェットスター(オーストラリア行き)、エアアジアX、タイ・エアアジアX、そしてスクートの4社で、運賃はフルサービスキャリアのエコノミークラスレベルと比較的手ごろだ。

 そこで、日本では成田-台北-シンガポール、成田-バンコク-シンガポール、関西-高雄-シンガポール、関西-バンコク-シンガポール、札幌-台北-シンガポールの5路線を運航しているスクートのビジネスクラス「スクートビズ」に搭乗してきた。

スクートは全便最新鋭機ボーイング787型機で運航している
スクートは全便最新鋭機ボーイング787型機で運航している
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スクートには日本人客室乗務員も乗務
スクートには日本人客室乗務員も乗務
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免税品の販売もある
免税品の販売もある
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 今回、搭乗したのは、同社が日本路線として初めて就航した成田発台北経由シンガポール行きのスクート(TZ)201便。成田空港での発着はJAL便と同じ第2ターミナルを利用する。当時はボーイング777-200型機だったが、現在はボーイング787で運航されている。

 成田出発は午前11時55分なので、10時から10時半の間くらいに成田空港に到着すればよい。筆者は9時発の東京駅八重洲南口からの格安バス「THEアクセス成田」で10時ごろに成田空港に到着した。格安バスで東京駅を出たあと最初に停車する第2ターミナル南口は、降車場からスクートのチェックインカウンターが至近距離なので大変便利だ。

 チェックインカウンターにはスクートビズ利用客専用の優先カウンターが用意されており、エコノミークラス利用客の行列を横目に見ながらスムーズにチェックインできた。スクートビズは事前の座席指定が無料なのに加え、手荷物も無料で30キロまで預けられる。さらに機内持ち込み手荷物はエコノミークラスが10キロなのに対し、スクートビズでは15キロまで可能なのもありがたい。ただ残念ながら、到着空港での荷物の優先引き渡しサービスはない。

成田空港第2ターミナルでチェックイン
成田空港第2ターミナルでチェックイン
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スクートビズは専用カウンターで混雑知らずだった
スクートビズは専用カウンターで混雑知らずだった
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ビジネスというよりプレミアムエコノミー感覚

 チェックインを済ませたあと、保安検査・出国審査を済ませて搭乗ゲートへ。フルサービスキャリアのように保安検査場の優先やビジネスクラス利用者向けのラウンジはないが、スクートビズ利用者は優先搭乗できる。

 スクートはLCCでは珍しく最新鋭のボーイング787型機を導入しているが、成田-台北-シンガポール線では大きいサイズである375人乗りのボーイング787-9型機を使用。スクートビズは2-3-2の座席配列で35席設置されている。

 シートは黒の本革張りで、シートピッチは約96センチ確保。シート幅は56センチで、座ってみるとビジネスクラスというよりもプレミアムエコノミーに乗っている感覚。少しでも広い空間を確保したい人は、足元が広い最前列を予約するとよい。リクライニングは8度までと大きく倒れるわけではないが、エコノミークラスに比べると快適だ。

787-9型機のスクートビズの座席配列は2-3-2で35席
787-9型機のスクートビズの座席配列は2-3-2で35席
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シートピッチは約96センチ
シートピッチは約96センチ
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シート幅は56センチ
シート幅は56センチ
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ビジネスクラスというよりもプレミアムエコノミーに近い感覚
ビジネスクラスというよりもプレミアムエコノミーに近い感覚
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機内食の事前予約が可能

 席に座ると客室乗務員から水が配られ、機内食の確認とドリンクのオーダーを聞かれる。スクートビズは機内食1食分とワンドリンクが含まれており、フライト予約時にリクエストできるのだ(事前にオーダーをしていない場合には機内販売メニューから選べる)。ドリンクは機内でビールやワインなどアルコール類を含むメニューから好きなものを注文可能(2杯目以降有料)。

スクートビズの機内食。照り焼きチキンライス(成田-台北)
スクートビズの機内食。照り焼きチキンライス(成田-台北)
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甘酢魚のライス添え(台北-シンガポール)
甘酢魚のライス添え(台北-シンガポール)
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ドライラクサ(シンガポール-台北)
ドライラクサ(シンガポール-台北)
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 機内食の確認が終わり、全員の搭乗が完了して台北へ向けて出発。離陸してからシートベルトサイン消灯後、他社ではあまり聞かれないアナウンスが流れた。エコノミークラスからスクートビズへの有料アップグレードの紹介だ。価格は80シンガポールドル(約6500円)。スクートでは、空席がある場合には機内でもアップグレードを受け付けるのだ。

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 そして機内サービスがスタート。オーダーした機内食が各席に運ばれる。何度かスクートを利用している筆者がいくつか食べたなかでお気に入りが「てりやきチキン」。ご飯との相性もよい。ただビジネスクラスといってもLCCなので、フルサービスキャリアでいうとエコノミークラスレベルの機内食という印象だった。ボリューム的には十分腹いっぱいになるが、余裕があればほかのメニューもチャレンジしてみるべし。クレジットカードでの支払いも可能だ。

 客室乗務員に聞いたところ、人気があるのがカップラーメン。なかでもトムヤムクン味が一番人気ということで早速注文。1個5シンガポールドル(約400円)だったが、たしかに機内で食べるカップラーメンはうまかった。

トムヤムクン味のカップラーメン。スクートの機内で一番人気だという
トムヤムクン味のカップラーメン。スクートの機内で一番人気だという
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自前の端末でエンターテインメントを楽しむ

 機内の設備はどうだろう。LCCでは各座席にシートテレビは装着されてないのが一般的だが、スクートでは自分のタブレットやノートパソコンを使い、機内Wi-Fiを活用して「スクートTV」にアクセスすれば、動画コンテンツを見ることが可能(日本語のコンテンツは少ない)。ただ、スマートTVはエコノミークラスでは有料、スクートビズでは無料となっている。

 また筆者が便利だと思ったのが、機内インターネット接続サービス。エコノミークラス、スクートビズともに有料だが、自分のノートパソコンやタブレット、スマートフォン(機内モード状態)でインターネットに接続できるのだ。筆者も実際に機内で使ってみたが、動画コンテンツの再生に時間を要したり途中で止まったりしたこともあったが、ウェブサイトの閲覧やメールの送受信(添付メールを含む)、LINEやFacebookのメッセンジャーでの文字や写真のやり取りもスムーズにできたのだ。ノートパソコンで測定したところ1.3Mbps、スマートフォンでは5.3 Mbpsだった。

スクートビズならタブレットやスマートフォンなどから機内エンターテインメントに無料でアクセスできる
スクートビズならタブレットやスマートフォンなどから機内エンターテインメントに無料でアクセスできる
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速度も機内という環境を考えれば十分に満足
速度も機内という環境を考えれば十分に満足
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ウェブサイト閲覧やLINEも問題なし
ウェブサイト閲覧やLINEも問題なし
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 ネット接続料金は1時間プラン、3時間プラン、24時間プラン、そして5Mbpsまで速度が制限されるライトプランの4つから選べる。値段は以下の通り。成田からの利用であれば、台湾便なら1時間プランか3時間プラン、バンコク便なら3時間プランか24時間プラン、経由便で最終目的地がシンガポールまでなら24時間プランがおすすめだ。

・1時間プラン 11.95USドル(約1260円)
・3時間プラン 16.95USドル(約1780円)
・24時間プラン 21.95USドル(約2300円)
・ライトプラン 5USドル(約530円)(20Mbpsまでで速度は低速になる)

 日本発着のLCCで機内インターネットが唯一使えるのがスクートなのだが、機内エンターテインメントがなくてもネットで友人などとメッセージをやり取りすることでフライト時間が短く感じられた。また各席にシート電源も備え付けられているので、電池が切れる心配もない(シート電源サービスはスクートビズでは無料であるが、エコノミークラスでは5シンガポール(約400円)と有料)。電源が有料というのも、エコノミークラスのみとはいえLCCらしい課金システムだ。

シート電源はスクートビズだと無料で使えるがエコノミークラスは有料
シート電源はスクートビズだと無料で使えるがエコノミークラスは有料
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 また、ネット接続速度が低速だが、わずか5USドル(約530円)で利用できる「ライトプラン」も使ってみた。64kbpsでのこのプランのホームページ閲覧や画像などのやり取りは正直厳しいが、LINEやFacebookのメッセンジャーで文字のみのやり取りであれば特段の問題はない。使用用途限定なら利用する価値は十分にあると思う。

 そうこうしているうちに、あっという間に約3時間のフライトで台北到着。台北で降りる人も、シンガポールまで向かう人も全員降機することになり、シンガポールへ向かう人は通路でトランジットカードを受け取ったあと、再度保安検査を受けて出発ゲートへ向かって搭乗開始を待つことになる。7月21日にスタートしたバンコク便就航によって、同じ路線を就航するタイ・エアアジアXとの競争も激しくなることが予想される。どちらにしてもバンコクへの路線網が増えることでスクートを利用する機会は増えそうだ。

(文・写真/鳥海高太朗=航空・旅行アナリスト、帝京大学理工学部航空宇宙工学科非常勤講師 編集/日経トレンディネット

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