上田準二さんの「お悩み相談」。今回の相談は、話題が脱線しがちな35歳の女性から。初めて披露するエピソードのつもりでも、「前にも聞いたよ」とオチを言われることがよくあるそうです。上田さんは「修飾語を減らす訓練をしてみよう」とアドバイスします。

※読者の皆さまから、上田さんに聞いてほしいお悩みを募集しています。仕事、家庭、恋愛、趣味など、相談の内容は問いません。ご自由にお寄せください。

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悩み:話をうまくまとめられなくて困っています。要点を漏らさず、簡潔に伝えるにはどうすればいいでしょうか?

 話をうまくまとめられなくて困っています。夫と話しているとついつい脱線してしまい、本題がなんだか分からなくなってしまいます。自分では初めてのつもりで披露したエピソードだったのに、「前にも聞いたよ」と先回りしてオチを言われることもしばしば。一方で短く話そうとすると、伝えたかったことを話せないまま終わることもあります。家族ならば笑って許してもらえるのですが、会社でも同じようなことになっていないか心配です。うまい方法がないか、アドバイスをもらえるとうれしいです。

(35歳、女性、会社員)

上田準二:お気持ち、よく分かりますよ。若い頃は僕も同じようなことを言われて、ずいぶん反省したものだよ。今でもお酒が進むと同じような状態になる。人と話をしているうちに、頭の中にあれこれ言いたいことが浮かんできて、それを面白く伝えるにはどうすればいいかを考えていると、ついつい話題が変わっていく。

小笠原啓(日経ビジネス編集):分かります。

上田:例えば、スーパーで黒いリンゴを見つけたとしようか。その事実を簡潔に伝えればいいのに、リンゴは赤色だけじゃなくて緑色や黄色の種類もあるとか、品種によって色素が違うとか、ついつい「うんちく」を述べてしまう。

小笠原:なるほど。

上田:相手が聞き上手だとさらに脱線し、リンゴが育つ地域の日照時間や降水量といったテーマに展開。もともと伝えたかった「黒いリンゴ」の話からどんどん離れてしまう。相談者さんは僕と同じで、サービス精神旺盛なんだろうね。話し相手にもっと分かってほしい、楽しんでほしいと思うからこそ、本題から外れたテーマに寄り道してしまうわけだ。

 夫婦の会話を楽しむのならいいけれど、業務連絡の場合は簡潔に済ませる必要がある。だからとにかく結論から先に話して、その後で説明を加えるという順番にしよう。

小笠原:「結論から話そう」というアドバイスまで、500文字近く費やしましたね(笑)。

上田:おっと、ついつい調子に乗って悪い癖が出てしまった(汗)。

「修飾語」を減らす訓練をしてみよう

小笠原:結婚式のスピーチなどでも、話題があちこち飛ぶ人がいますよね。

1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングス(現ファミリーマート)の代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味はマージャン、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。2019年5月末に相談役を退任。(写真:的野弘路)
1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングス(現ファミリーマート)の代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味はマージャン、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。2019年5月末に相談役を退任。(写真:的野弘路)

上田:そうそう。3分間でも5分間でも、与えられた時間内で完結できるよう、あらかじめ原稿を書いておけばいいのにね。自分の体内時計を過信して、ぶっつけ本番で臨んでしまう。すると、時間をオーバーしているにもかかわらず脱線し続け、いつの間にか10分を超えてしまうことすらあるわけだ。この前なんて……。

小笠原:上田さん!?

上田:そうそう、今日の本題はお悩み相談だった。失礼しました。繰り返しになるけれど、話を簡潔にまとめるには結論から言うのが王道なんだよね。自分が最も伝えたいことを先に述べた上で、相手の理解が深まるように説明を加えていく。これを心がけることでしょう。おそらく相談者さんは、説明した後で結論を述べる癖があるんじゃないかな。それを逆転させる訓練を、ご主人と話しながら積み重ねていきましょう。

 主語と述語さえあれば、大抵の内容は伝えられるはず。可能な限り修飾語を減らすことをイメージすれば、頭の中もクリアになっていくんじゃないかな。

小笠原:前に話したことを忘れてしまい、何度も同じエピソードを繰り返すという悩みについてはどうでしょう?

上田:これは誰にでもあることだよね。僕や相談者さんだけでなく、小笠原君でもそうでしょう。このケースでも修飾語を短く、減らすことが大事かな。結論に至るまでの道筋が長いから、聞き手が飽きてしまって「前にも聞いたよ」という反応になってしまう。話し相手にサービスしたい、楽しんでもらいたいという気持ちは分かるけど、仕事の場面では必ずしも求められていないからね。ところで、結婚式のスピーチで思い出したんだけど……。

小笠原:上田さん!?

上田:そうでした(笑)。結論を先に述べて、修飾語を減らす。僕を反面教師にして、今日から心がけてくださいね。

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本連載「お悩み相談~上田準二の“元気”のレシピ」が本になりました! 反響の大きかった話を中心に、上田さんのアドバイスをぎゅぎゅっと編集して詰め込みました。その数、全35個。どれも読むだけで元気になれるアドバイスばかり。上田さんの“愛”がたっぷりのお悩み相談本となっています。ぜひお手に取ってみてください。

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