埼玉県桶川市で130年以上続く老舗和菓子店「五穀祭菓をかの」。ヒット商品の開発やSNSなどでのマーケティングで業績不振を立て直した。「六代目女将」を名乗る榊萌美副社長。失敗を糧に経営改善を重ねてきた。
和菓子離れが言われることが多い昨今ですが、「五穀祭菓をかの」は明治20年(1887年)の創業以来、136年間も営業を続けてこられました。をかのの強みはどこにあるのでしょうか。
榊:をかのは地域密着型の和菓子屋です。例えば1歳の誕生日には誕生餅、ひな祭りには桜餅、5月5日には柏餅というように、お子さんの成長とともに、商品を食べていただく機会がすごく多いんです。地域の小中学校からもさまざまな注文を受けています。桶川市に住んでいれば、あまり和菓子を食べなくても、をかのの名前は知っていると答える方は多いと思います。
手土産にされる方、毎月決まって買ってくださる方、法事に利用していただいているお客様もたくさんいらっしゃいます。地域と関わりの深い店であるところが、強みだと思います。
製餡(あん)所から仕入れる和菓子屋さんもある中、あんこなども一から作られていますね。
榊:ほとんどの和菓子は、お店の裏で作っています。仕入れた生餡を使う場合もあるのですが、豆から煮て餡作りから行っているお菓子もたくさんあります。同じ粒あんでもお菓子によって求められる糖度や柔らかさ、粘度はそれぞれ異なりますから。
このように手作りは手間がかかります。その一方で、地元密着であるがゆえに、なかなか価格を上げにくく、やればやるほど苦しくなってしまう状況はずっとあったと思います。
ヒット商品で大失敗
そんな状況下で、榊さんは大学を中退、20歳で家業を継ぐ決心をされたそうですね。そう思ったのはなぜでしょうか。
榊:誰かの役に立つ仕事に就きたいという思いがあり、最初は教師を目指していましたが、人の役に立つ仕事は他にもあります。目的が変わらなければ手段が変わってもいいのかなと思い直しました。
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