イエローキャブ/日産・NV200タクシー 2013年11月撮影
Google検索でイエローキャブの写真を見ていて、そういえば昔イエローキャブ仕様のNV200タクシーを見た記憶があるなと、整理してみて発掘しました。この車両、銀座のニッサンクロッシングで撮影したものですが、まだこの時は日産ギャラリーだったような気がしなくも……。同一個体か不明ですが、日産が保有していた北米仕様のNV200タクシーは現在、石川県にある自動車博物館に寄贈されているようです。
ということで、偶には日本のタクシーから離れて、アメリカ・ニューヨークのタクシー事情を触れてみようと思います。
まず、NV200がイエローキャブに選出された経緯はニューヨーク・タクシー・オブ・トゥモローという、2009年に行われた次世代イエローキャブ車両を決めるコンペで日産が勝ち取ったところから始まります。
このコンペは次世代のイエローキャブ車両を決め、実質独占する権限を手にするもので、他はフォードとトルコ初のカルサンというメーカーが勝ち残っていました。
正直、今見ても勝ち残った3車種はあまりパッとしないというか、個人的にはイマイチに感じていたものです。
このコンペが行われた2009年当時、記憶が正しければニューヨークを走る、イエローキャブの8割近くが純アメリカンフルサイズセダンとしては最後の車種となった、フォード・クラウンヴィクトリア。
尤も、この時点で2011年までにニューヨークのタクシーの全車両をハイブリッドカーに置き換えるという当時の市長の方針もあって、フォードのエスケープハイブリッド他、プリウスやカムリハイブリッド、シエナハイブリッドなど、とにかくトヨタが増えてきた時代です。思えば、この時点で既にアメリカ車のタクシーはほぼ消えゆくも同然だったのかもしれません。
さて、私はNV200タクシーがニューヨークを走る、というニュースを知ったのは確か2011年の秋頃だったと記憶してます。当時、まだまだ主力だったクラウンヴィクトリアを置き換えるのがNV200。正直デザイン的にもあまり優れてるとは思っていなかった上、アメリカのタクシーを代表するイエローキャブのすべてが日本車になる……あまり好意的には受け取れなかったのを覚えています。
2013年から2018年にかけて順次、イエローキャブを置き換える。
当初、そういう話だったのですが、2013年にニューヨークの裁判所でこの契約を無効とする判決が下ります。
この時点でまだNV200タクシーは導入されておらず、リーフでちょっとした実証実験はしていたようですが、それも大分限定的だったようです。
この判決がすべてを狂わせた……というわけでもなく、2010年代折り返しの時点でUberやLyftといった「ライドシェア」の台頭、2016年のトランプ大統領一期目などの影響に加え、実際に使用したドライバーからかなり不評だったこと。
また、電気自動車での導入も検討されていたはずが、実際に導入されたのはガソリンモデルだったこともあり、そこもまた、NV200タクシーが敬遠される要因になったように思います。この時点で既にハイブリッドカーに対する印象が非常に良かった上、アドバンテージが大きかったのだと思います。
最終的に2014年から2017年頃まではNV200と一部の車椅子対応のハイブリッド車”のみ”の採用をしていたものの、2018年には現在の状況を鑑みて、という前置きの上、NV200を含む約30車種を使用可能車種に加えた事で独占契約はなかったことになりました。
そしてニューヨーク以外、NV200タクシーを採用する地域は皆無で、翌2019年にはなんとアメリカにて生産終了。日本でも2021年にタクシー仕様は生産終了しました。
時勢も、車も良くなかったといえばそれまでですが、あまりにも呆気ない幕引き。
しかもやはり耐久性の問題は尾を引いているようで、割と早い段階からタクシー車両としては淘汰されているようで。なんだか複雑な気持ちになります。
それにしても、日産自体の余力の問題があるとは言え、これの後の日産のタクシー車両が出て来ないのには色々と考えさせられるものがあります。
蛇足ですが、「アメリカの顔」と呼んでも差し支えないであろう、フォード・クラウンヴィクトリア。そのイエローキャブですが、一昨年時点で最後の1台だった1F88号車が昨年の3月末で引退。11月には先代のトヨタ・シエナに置き換えられていました。
最後の1台となった車両は現在、イタリア・ミラノで新しいオーナーに引き渡され、タクシー時代とほぼ同じ装備を施され、第二の人生を送っています。
では、今のニューヨークを走るイエローキャブの主力は?
答えはRAV4とカムリ。トヨタのハイブリッドが非常に強いようです。シエナも居ますが、車椅子モデル前提の為か、RAV4やカムリ程ではない印象です。
エスケープとトランジットコネクトでフォードもなんとか頑張っていますが、やはりトヨタを前にすると台数は減るようで。思えば、トランジットコネクトも以前はタクシー仕様が存在しましたが、それも2020年で生産終了していますし、現在の北米には「タクシー」と銘打たれている車両が売られていません。それだけアメリカでタクシーという乗り物の存在感が薄くなった証左なのだと思うと、寂しい限りです。