事業急拡大組も仕切り直し組も ネットスーパー、顧客争奪戦の勝者は?

小野 貴之 (ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長)
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大手ネットスーパーが体制を仕切り直し

 長年にわたり試行錯誤を続けてきた小売業のネットスーパーが新展開を迎えている。

 富士経済の予測によると、2025年のネットスーパーの市場規模は3710億円。2年前、23年との比較で22.0%増となるという。

 コロナ禍で急拡大した需要に対応すべく、ネットスーパー運営各社はここ数年、対応エリアの拡大、品揃えの拡充などを推進してきた。イオン(千葉県/吉田昭夫社長)グループの「Green Beans(グリーンビーンズ、23年7月にサービス開始)」をはじめ新規参入も相次いだこともあり、市場は堅調に拡大していく見通しだ。

 そうした中、直近はネットスーパーの体制を仕切り直す動きが相次いでいる。大きく注目されたのが、イトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)のネットスーパー営業終了、そして新デリバリーサービスの開始だ。

 同社は24年12月、センター出荷型と店舗出荷型で展開していた自社ネットスーパーの営業を終了を発表。以前から協業するONIGO(東京都/梅下直也代表CEO)と資本業務提携を締結し、店舗出荷型による新サービスを25年2月から開始する。

注文商品をカゴに入れるONIGOの従業員
直近はネットスーパー大手が自社の体制を見直す動きが相次いだ。イトーヨーカ堂はクイックコマースのONIGOと資本業務提携し、25年2月より店舗出荷型の新サービスを開始する

 西友(東京都/大久保恒夫社長)と楽天グループ(東京都/三木谷浩史会長兼社長:以下、楽天)もネットスーパー事業を仕切り直す。両社は店舗出荷型とセンター出荷型を組み合わせた「ハイブリッド型」のネットスーパーを展開していたが、23年12月に合弁を解消。24年9月から、西友は店舗出荷型、楽天はセンター出荷型をそれぞれ単独運営するかたちで再始動している。

 アクシデントに見舞われたイズミ(広島県/山西泰明社長)もネットスーパー事業を大きく方針転換した。24年2月に大規模なシステム障害が発生し、ネットスーパーも休止に追い込まれた同社。復旧後は、送料モデルから定額制へと大胆にモデルチェンジしている。

 そのほかの大手ネットスーパーは自社サービスを順調に拡大中だ。

 イオングループではGreen Beansの開始から1年半が経過した。現在までに対応エリアを順調に拡大中で、26年と28年にそれぞれ新センターの開設も控える。イオンリテール(千葉県/井出武美社長)ら事業会社が運営する店舗出荷型ネットスーパーも好調だという。

 食品スーパー(SM)との協業による提携ネットスーパー、直営のセンター出荷型ネットスーパー「Amazonフレッシュ」と、2つのネットスーパーを展開するアマゾンジャパン(東京都/ジャスパー・チャン社長)も存在感を増している。

 同社は24年6月、従来は「Amazonプライム」会員だけだったネットスーパーの利用を非プライム会員にも開放。24年9月には、リテールパートナーズ(山口県/田中康男社長)と新たに協業することを発表し、提携SMは5社に増えた。

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記事執筆者

小野 貴之 / ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長

静岡県榛原郡吉田町出身。インターネット広告の営業、建設・土木系の業界紙記者などを経て、2016年1月にダイヤモンド・リテイルメディア(旧ダイヤモンド・フリードマン社)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属し、小売企業全般を取材。とくに興味がある分野は、EC、ネットスーパー、M&A、決算分析、ペイメント、SDGsなど。趣味は飲酒とSF小説、カメラ

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