今すぐにキャラメルコーン買ってきて そうじゃなければ妻と別れて という短歌に感じる情念
今すぐにキャラメルコーン買ってきて そうじゃなければ妻と別れて
佐藤真由美「プライベート」より
- 作者: 佐藤真由美
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2005/10/20
- メディア: 文庫
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その結果卯野さんはご自身のブログに記事として取り上げてくれたのですが、それを読んでやはりちょっと言い足りなかったという思いがムクムクと湧き出てまいりましたので、Twitterでは足りなかった部分の補足をしたいと思います。
短歌と解釈「今すぐにキャラメルコーン買ってきて そうじゃなければ妻と別れて」 - nerumae
@4leafclover7 @macchauno
キャラメルコーンの幼稚性と離婚を迫る女の性の対比がたまらんですな
— ドボン会 会長(禁煙中) (@dobonparty) 2014, 4月 17
今すぐにキャラメルコーン買ってきて そうじゃなければ妻と別れて
この短歌は女性が妻のある男性に対して言い放っているシーンなのですが、ではその際の状況はどういうものなのか?
短歌の中にはそれを示唆する表現は一切書かれていませんので情景はすべて読者に委ねられています。
では私はどのようなシチュエーションを思い描いたのか?
情事の済んだ後はいつも男はそそくさと準備を初めて家庭に帰ってしまう光景を思い浮かべました。
男は情事さえ終わってしまえばとたんに妻の待っている家に帰りたくなります。とはいいながらも露骨に帰りたいとは言い出せない部分もあり二人の間には微妙な空気が毎回漂います。お互い気がついていながらそれには触れません。
男の微妙な心の機微を女性は感じ取りそこに嫉妬や妻への憎悪、男への不満、それらの感情が複雑に絡み合った状態にいつも耐えていたのだと思います。
普段は物分かりのいい女として振舞っているものの、ある日いつもと同じように情事が終わり男はタバコを一服しています。
このタバコが吸い終わると男はおもむろに下着を履き、靴下を履き、スーツを着て女の部屋を出て行って本来の家庭に帰ってしまいます。
いつもならその一連の男の姿を何も言わずシーツにくるまったまま眺めていた女が突然言うのです。
今すぐにキャラメルコーン買ってきて そうじゃなければ妻と別れて
キャラメルコーンという男女の情事には到底相応しくない子供っぽいお菓子。
それをいきなり不倫男に買ってこいと言うアンバランス感。
それが出来なければ妻と別れろと言うエキセントリックな発言。
論理的とは真反対のむしろ狂気さえ感じるような上の句と下の句との対比。
チャーミングさと冷酷な女の両面性。
不倫という不安定な恋愛に溺れる不安定な女の性。
いままで耐えてきたのに思わず出てしまったキャラメルコーンを買ってきて欲しいというわがまま。
それに引きずられるように出てしまった本心。
隠していたものがせきを切ったように流れでてしまったシーンを思い描きました。
女は早口だったと思います。そして言い終わった後に涙を流すのです。
隠していた自分を出してしまった自己嫌悪に苛まれてむせび泣くのです。
そして男は女を残して部屋を出ます。
近所のコンビニでキャラメルコーンを買って女の部屋のドアノブに引っ掛けてそのまま立ち去ります。
五七五七七という短い世界の中でこれだけのことを想像させるのだから短歌というものは凄いし佐藤真由美さんの才能に感服しました。
勉強不足を露呈するようで恥ずかしいのですが佐藤真由美さんのことを全く知りませんでした。
短歌の世界に対してあまりにも無知な自分でしたが、今回をキッカケに佐藤さんの歌を読んでみようと想います。
- 作者: 佐藤真由美
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