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「ロシャオヘイセンキ」や「白蛇」で中国アニメの魅力にドはまり中。このシリーズは前作は見逃しており、本作冒頭で一応前作のあらすじみたいのものは描かれるけど正直物語の細かな背景はわからずじまい。仕方なく脳内補正して見続けるしかなかった。
ただそれでもその映像の力に圧倒されるので見ていてスクリーンにくぎ付けになった。おそらくディズニーによるフルCGアニメーションと技術的に大差はないのだろうけど、何故かディズニー作品などよりこちらに惹かれてしまう。「白蛇」なんて本当に映像が美しかった。これだけCGでどんな映像でも再現可能になった時代、たいていの映像を見せられて感心することはあっても感動させられることはない。ただこの中国産アニメにはその独特の映像美というのか、ハリウッド映画とは違う美的感覚を制作陣は持ち合わせているのだろうか。本作も白蛇同様その映像美に感動させられた。ただ技術が高いだけではないなにか感性を揺さぶるものがあるのではないだろうか。
物語も中国で製作されていながらロシャオ同様深いメッセージが込められている。強大な権威を持つ仙人の国。そこでナタは修業を積み仙人の資格を得ることで親友ゴウヘイの体をよみがえらせようとする。しかしそこでの修業は一見人々を惑わす妖怪退治のように見えるが当の妖怪たちは人畜無害な存在。そんな中で人間の姿に化けることができる妖怪の修行場に道場破りに来たナタは彼らに敵意がなく話せば最初から仙人の国に仕える意思があることに気づかされる。なぜそんな彼らを力ずくで屈服させようとするのか、無量仙翁に違和感を感じる。
そしてそんな修行のさなか人質にされていた故郷が滅ぼされ両親の安否も不明となる。これを起こしたのが龍族だと思い込んだナタはゴウヘイを残し龍族への復讐に向かう。ところがそれはすべては無量仙翁が仕組んだ陰謀だった。真の敵は無量仙翁。母を目の前で失ったナタは自身にかけられた封印を解き彼らを撃退するのだった。
仙人の国は世界の覇権を目指す大国の中国やロシア、アメリカの姿を彷彿とさせる。彼らに襲われる妖怪たちは弾圧されてきた少数民族だったり、ムスリムなどの異教徒の姿とも被る。暗に今の世界情勢を描いてるような点も作品としてかなり高く評価できる。中国共産党の検閲に負けず隠れたメッセージを含んだ作品だと言える。
本国中国で大ヒットしたのもうなづける驚異のエンターテイメント作品。国内のスクリーン数の多さから考えても中国での大ヒットはそのまま世界興行収入歴代一位につながるので、その宣伝文句にも偽りないのだろう。ハリウッド映画にしても中国はおいしい市場のはずだが今回のトランプ関税への対抗措置としてハリウッド映画の輸入禁止措置に出るという。ハリウッドにしたら宿敵トランプのおかげで手痛い損失だろう。
今回ぶさ可愛いナタがゴウヘイと体を共有していて、ゴウヘイと入れ替わると美形になるあたりパタリロを思い出して可笑しかったな。でも最後には本当の美形に変身する当たり萌えるんだよな。
あまりに映像が素晴らしかったのでIMAX3Dでの鑑賞を検討中。これは映画ファンとしては見逃せない作品だ。