この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば
(藤原道長)
親の苦労 子知らず
満ち足りた"普通”の家族の罪と罰
いや〜この韓国映画特有のゾクゾクする嫌な感じ、たまんない!
ソルソルチャンチャンしてヒエ〜ってなる。
私たちの心をキムって掴んで離さない。
原題と英語題が「普通の家族」"A Normal Family"
これが「満ち足りた家族」になってる邦題
皮肉に満ちていて、久しぶりに邦題のセンスを感じる。
利益優先の弁護士の兄、倫理観優先の小児科医の弟
社会的に見れば、どちらも欠けることのない"普通”の、いやそれ以上の"満ち足りた家族”のように映る。
だが、考え方が異なる兄弟は、母の介護を巡ってもギクシャクしており、月イチの会食で何とか体面を保っているようだ。
その会食の裏で、子どもたちは"ある事件"を起こしていた...。
そこから崩壊していく家族の様が、もうゾクゾクするんですよね。
ソルソルチャンチャンの反転ぶりも見どころだ。
キムキムのバチバチぶりもヒエ〜ってなります。
この二家族の良心(両親)の呵責と葛藤、対立
は、観ている私たちにも判断を迫ってきます。
どうすればいいの?
どうすれば一番いいの?
守るべきものはなに?
親目線で見れば、「親の苦労も知らないで!」ってなるでしょう。
子ども目線から見れば、「子どもの気持ちも知らないで!」ってなるでしょう。
さて、満ち足りた"普通"の家族はどうなるのか。
ぜひ、劇場でその瞬間を"目撃"してください。
呆気に取られて呆然としてしまうかもしれません。
その後味悪さも韓国映画です。
いつまでも望月のような満ち足りた家族はどこにもいないのかもしれません。
傍目にはそう見えても。
それぞれの家族には、それぞれの欠けている部分が必ずあるのです。
「すべての幸福な家庭は互いに似ている、不幸な家庭はそれぞれの仕方で不幸である」
なぜかしらトルストイの言葉を浮かべてしまった私です。
余談
ソル・ギョングとチャン・ドンゴンの異なる兄弟対決は素晴らしかったですね。
私が一番ヒエ〜としたのは、やはりキム・ヒエです。
継母のクローディア・キムさんが一番まともだったのかもしれません。
二人の子どもには「おいーーーー!お前らーーー!」ってなるかもしれません。
韓国のお話かと思いきや、オランダの『冷たい晩餐』という小説が原作なんですね。しかも4度も映画化されてるなんて!
原作の魅力もありつつ、韓国版の脚色力もスゴイんですねえ!