東大卒でバイト続きの和彦は、高校の同級生と風呂屋でばったり会ったことをきっかけに、風呂屋で働くことに。しかし、その風呂屋は殺した人の後処理を裏で行っており、和彦も後処理を手伝うことに…。
日常的な非日常。それを何気なく淡々とこなしているのが、ゆったりしていて不気味。この絶妙なバランスで構築されている雰囲気がたまらないです。
ツッコミどころは色々とありますが、それを感じさせない世界観が色濃い。
和彦の人間臭さが良い。自分だけに共有された秘密をもらって喜んだり、同時期に雇用された松本を妬んだり、羨んだり、同級生の彼女にかっこつけたり、緊張を誤魔化したり。すぐそこにいそうな人間あるあるの演技が巧かったです。
社会に馴染めていなさそうな男が、風呂屋の仕事と出会い、戸惑いながらも確実に心が前のめりになっていくのが成長譚として面白かったです。
ちょっと彼女の百合がどういう人間かよくわからなかったです。初めから胡散臭い。
日々の中で足りなかった刺激を与えられる。決して良いものではないが、和彦の中で生の実感を得るものだった。
一瞬の幸せに生きる大切さ。