【特別企画】

「“新生”バーチャファイター」はどう変化する? コンセプトムービーをバーチャプレイヤーが考察

現実に迫るモーション、観戦が盛り上がる演出に期待が膨らむ

【New VIRTUA FIGHTER Project】

発売日・価格:未定

 かつて平成時代に社会現象を巻き起こした3D格闘ゲームの元祖「バーチャファイター」。その新作への動きが昨年末から慌ただしくなっている。2024年12月13日に開催されたゲームの表彰イベント「The Game Awards 2024」にて、「バーチャファイター」の完全新作の開発が明らかになった。

VIRTUA FIGHTER is back!という衝撃の文字。昨年11月には現在最新作に当たる「バーチャファイター esports」の大規模バランス調整が行なわれたほか、「バーチャファイター」シリーズにおいては初めてSteamでの販売となる「バーチャファイター 5 R.E.V.O.」が発表されたが、それから間髪を入れずこの衝撃のニュースである。これには筆者も驚きを隠せなかった

 そして2025年1月7日、YouTubeの「バーチャファイター 公式」チャンネルにて、新たな動画が公開された。内容は、「バーチャファイター」の主人公、結城晶と思われるキャラクター同士の対戦風景を映した「バーチャファイター」完全新作の開発前コンセプトムービーである。

【『New VIRTUA FIGHTER Project』開発前コンセプトムービー】

 今回はこの公開されたコンセプトムービーから既存の「バーチャファイター」からどのような変化が見られるかを、初代「バーチャファイター」からプレイを続けている筆者の目線で解説していく。

 なお、この動画の概要欄には「※こちらは本開発開始前のコンセプト動画です。実際のゲームプレイ、キャラクターとは異なります。」との記載がある。動画にて表示されているキャラクター名やバトルシステム、演出等が製品版と一致するとは限らないことを承知して閲覧していただきたい。

新生バーチャのテーマは「イノベーション」と「リアリティ」。ガードモーションからそれが感じられた!

 プロジェクトのプロデューサーを務める山田理一郎氏は、2024年12月13日に公開された「バーチャファイター」シリーズの今後の展開を発表する配信番組「VF Direct 2024」において、「『バーチャファイター』完全新作は『イノベーション』と『リアリティ』を重視している」とコメントした。時代の「イノベーション」と「リアリティ」への挑戦をし続けてきたシリーズのDNAを踏襲しつつ最新作を作っていくことが“NEWバーチャファイター”に必要だと述べている。

 最初に、この「リアリティ」がわかる部分を追いかけていこう。まずは現在の最新作である「Virtua Fighter 5 R.E.V.O.」から、キャラクターガイド「結城晶」の動画を見ていただきたい。

【Virtua Fighter 5 R.E.V.O. キャラクターガイド『結城晶』|Legacy VIRTUA FIGHTER Project】
このスクリーンショットは上記の動画の23秒辺り。晶が対戦相手の影丸の肘打ち攻撃をガードしているときの挙動を良く頭に入れて欲しい
これがコンセプトムービーにおける防御時の挙動である。相手の攻撃を防御したときの挙動を見比べて欲しい

 歴代の「バーチャファイター」シリーズでは、攻撃をガードした際、「カコッ」というような金属音のような音とともに相手の攻撃をブロックする挙動をしていた。

 それが最新作では本当に腕と腕がぶつかったような効果音とともに、防御するというよりかは「いなす、捌く」といった動作へ変化している。これは山田氏の述べていたイノベーションとリアリティを重視した演出変化だと考えられる。

 また、3D格闘ゲームらしい特徴として、攻撃を被弾して地面に横たわっているときにも、相手からの追撃が行なわれる点が挙げられる。なので「バーチャファイター」では受け身というシステムを使って追撃を回避するのだが、今までのモーションは無敵時間が発生しているかのように攻撃をすり抜けていくように見えていた。

 だが、コンセプトムービーでの受け身による追撃回避のシーンを見てみると、相手の上からの攻撃をしっかりと確認して回避しているような動きとなり、不自然さが減っているように感じた。

道着姿の晶と思われるキャラクターが相手からの踏みつけを回避しているシーン

 また細かい点だが、黒い着物のようなキャラクターが同じく晶であれば、ダウン中の相手への追撃(「バーチャ」ではダウン攻撃と呼ばれる。ダウン中の相手にのみ出せる攻撃)が変わっていることも驚きであった。過去作では姿勢を低くしてげんこつのように相手を叩いていたダウン攻撃が、踏みつけへ変更されていることとなる。そのため、既存のダウン攻撃より当たったら危ない追撃だ! というイメージが感じられた。

 初代「バーチャファイター」の開発に携わっていたセガ・AM2研に在籍していた鈴木裕氏は、あるインタビュー記事にて、「バーチャファイター」の社内テストで社員が「イテッ!」と叫んだことを話しており、ゲームをプレイしていて強い反応が出たことは喜ばしいことだと述べていた。「NEWバーチャファイター」でも、「バーチャファイター」の原点であるリアリティさを違った形で表現しようとしている。筆者は今回のコンセプトムービーを視聴して、この挑戦的な大幅なモーションチェンジに驚かされた。今回の「バーチャ」は“モーションが現実に迫っている”のだ。

スピーディーな攻防がバーチャの魅力。しかし追加されたのは「遅さ」!?

 筆者が知り合いに「バーチャファイター」の魅力を伝える際に、必ず最初に言うことは「超高速の読み合いが楽しめること」だ。ただ、それによる弊害も伝える。それは「高速すぎて対戦者同士にしか、読み合いがどう回っているかわからないことがほとんど」ということだ。

 「バーチャファイター」には2D格ゲーではあまり見られないシステムとして、「打撃技と投げのつかみ動作がぶつかった場合、たとえ先に投げモーションが発生していても打撃技にカウンターヒットを取られてしまう」というものがある。後手に回る不利フレームの状態でも、投げ技を読んだら思い切って打撃技を打つことがある。

 ただ、「バーチャファイター」シリーズは攻撃がノーマルヒットなのかカウンターヒットなのかの判別が非常に難しい。現在の最新作、「バーチャファイター esports」では攻撃がヒットした部分が一瞬光り、その色が白みのかかった黄色ならばノーマル、赤色ならばカウンターとなるのだが、光る時間は僅かであり、ゲーム展開の速さから確認しづらい。双方が正確なヒット確認から行動を選んだのか、それとも決め打ちで行動したのかを第三者が判別することはまず不可能だろう。

 しかし、今回の動画では明らかに大きな攻防が起きたときには若干の「間」が用意されていることにお気づきだろうか? 動画の21秒あたりの動きに注目していただきたい。

3D格闘ゲームには奥行きの概念があるものがほとんどである。「バーチャ」シリーズも、縦軸をずらして攻撃を回避するシステムが「2」から実装されている。「バーチャ2」では一部キャラの特権だったが、「3」からは共通システムとして軸をずらす移動が可能となった

 このスクリーンショットも一見すればただの3D格闘ゲームの軸移動による回避シーンにしか見えないが、この場面で攻撃を“しゃがんで回避しながら軸をずらしている”というのは画期的である。大抵3D格闘ゲームでの軸移動は、立ったまま軸をずらすだけで攻撃を回避している。このあたりにもリアリティを感じられる。そしてさらに注目すべきは、このシーンで少しスローがかかった演出になっていることだ。

 同様に、長い演出が意図的に組み込まれていると感じるのが動画の最終盤のシーンである。

この場面では攻撃を回避して一撃を加えたあと、追撃の蹴りで相手を吹き飛ばしている。このような技は晶にはなかったので衝撃を覚えた

 このスクリーンショットのシーン、最初に紹介したダウン追撃の前に蹴りをヒットさせダウンを奪ったシーン、軸移動回避をしたシーンには共通点がある。それは「シュウウウウウウ!」といった効果音とともにゲームスピードが一時的に遅くなっているのだ。

 「バーチャファイター」ではこのような演出が入ることは今までなかった。あるとすれば「バーチャファイターキッズ」における各キャラに指定された技をヒットさせると連続でそのシーンがリプレイされる演出が近いだろうか?それぐらいで、基本「バーチャファイター」は攻撃を回避してもカウンターヒットしてもゲームスピードが落ちることがない。それがこのゲームが「高速じゃんけん」とも言われる要因である。

 しかし、それはゲームの敷居の高さや、プレイヤー以外の第三者から見ると何が起きているかわからないという弊害を生んでいたのだ。高速じゃんけんが速すぎるが故に、コンボ始動技をヒットさせてもとっさの判断が間に合わず、コンボレシピが頭の中で真っ白になったり、いつもならやらないパンチ連打でコンボが終了してしまった! という経験は「バーチャファイター」プレイヤーなら誰しも経験しているはずだ。

 しかし、このような演出が組み込まれれば、少しの間様々な思考が出来ると筆者は考える。例えば大ダメージ重視のコンボを選ぶべきか、それとも起き攻め重視のコンボにするか? またはステージの位置関係を考えて壁コンボを狙うべきか? といった戦術的思考を行なう余裕ができる。同様に被弾したプレイヤーも、このあと来るであろうコンボ、起き攻めに対する対応を考える余裕ができ、結果として今までより深い読み合いを楽しめるのではないだろうか。

 そして昨今はeスポーツブームにより、「格闘ゲームを観戦する」という趣味を持つ人々も増えている。そういった人々がゲームをプレイしていたことがなくても「これは大きな一撃が入った場面なのだろう」と本能的に理解できるのは重要だと考える。

 「ストリートファイター6」であれば、インパクト返しが決まればスロー演出が入るし、「鉄拳8」ではお互いの体力が僅かになって攻撃が交錯するような場面ではスーパースロー演出となる。このような「観る人に訴えるシステム」は令和の格闘ゲームにおいては決して欠かせない要素だと筆者は考える。「NEWバーチャファイター」では、この点も考えられて開発されているのでは? と筆者も興奮と共に笑みがこぼれた。

細かい点だが追撃後の演出も注目。動画は、蹴りで吹き飛ばした相手に1P側のキャラクターが走り込み、密着状態で構えて終了する。今までの「バーチャ」であればコンボを決めた際の位置調整はプレイヤーの操作次第であったが、接近戦になるよう強制的に移動するのであれば、新しい「バーチャ」の駆け引きのポイントになるのは間違いないだろう

 ちなみに「バーチャファイター」シリーズは今まですべての作品でリングアウト決着を実装している。どんなに体力が残っていても、リングから転落した時点で敗北なのだ。なので、このような強制移動のシステムがあるのならば、位置取りの駆け引きはどうなるのだろうか? リングアウト決着は今作でも実装されるのか? 続報が気になるところである。

新生バーチャファイターで令和の「格闘ゲーマー異種格闘技戦」に期待が膨らむ

 「ストリートファイター4」がリリースされた当時、アーケードでの格闘ゲームコミュニティに特殊な現象が発生した。それは2D、3D、「ギルティギア」や「KOF」といった格闘ゲームの垣根を越えて、様々な格ゲープレイヤーが「スト4」をプレイしたことだ。さながら「格闘ゲーマー異種格闘技戦」の開戦であった。

 「バーチャファイター」新作のニュースにより、かつての強豪プレイヤーも湧き立っている。例えばセガ公式大会にて優勝し、「豪傑」の称号を獲得しeスポーツ界ではカメラマンとしても活躍している大須晶氏や、ウメハラ氏のライバルとして名を馳せた「ヌキ」ことオオヌキ氏もカムバックを示唆するようなポストをX上で行なっていた。また、現在「ストリートファイター」シリーズのプロシーンで活躍している板橋ザンギエフ氏、ふ~ど氏もルーツは「バーチャファイター」にあるプレイヤーであるので活躍を期待できるだろう。また、「ストリートファイター」が主戦場で、3D格闘ゲームのプレイ経験がほとんどないプロゲーマーのX上のポストでも「バーチャファイター」新作への参戦を仄めかすような発言が見受けられる。

 当然「バーチャファイター」界での知名度ならウメハラ氏にもひけを取らない「バーチャ神」ちび太氏や、夫婦で現在も精力的に「バーチャファイター」コミュニティに貢献し続けているホームステイアキラ氏、山田哲子氏夫婦といった古参プレイヤーの参戦も間違いないと言える。

 古豪が「10年早いんだよ!」と貫禄を見せつけるのか、それとも新たなスターが「10年遅いんだよ!」とそれを弾き返すのか? すでに筆者は、「バーチャファイター」の完全新作で繰り広げられるであろう新たな戦いに胸を躍らせている。