米国債の格下げが、なぜ日本の株安につながるのか
「米国債の格下げがなぜここまで日本株の売り材料になるのか、合理的な説明はできない」(8月3日付日経電子版「日経平均2日で1200円安 米国格下げに弱い理由」)
確かにたかだか Fitch Ratings 1社による1ノッチの格下げで日経平均株価が2日間で1300円超、約4%下落したことを合理的に説明することは難しい。
こうしたケースではまず「合理的」考えのベースになっている前提を見つめ直してみることが賢明だ。
「日経平均は昨年末から7月末までで27%上げ、同期間で7%高のダウ平均などを圧倒していた」(同日経電子版)
一つ目は今年に入ってから日経平均が上昇率の面でNYダウを圧倒していたという部分だ。
確かに昨年末比で比べると日経平均の7月末時点の上昇率は27.1%と、7.3%のNYダウを圧倒しているといえる。しかし、運用分野でベンチマークとして使われているのは日本株ではTOPIXであり、米国株ではS&P500だ。
この両者の7月末時点での昨年末比上昇率を比較してみるとTOPIX22.8% vs S&P500 19.5%と圧倒的といえるほど大差があるわけではない。因みに同期間のNASDAQの上昇率は37.1%と、こちらの上昇率は日経平均を圧倒している。
さらにMSCI Japan($ベース)の同期間上昇率は15.1%とS&P500より劣っている。
このように、複数の視点から見ると「日経平均は昨年末から7月末までで27%上げ、同期間で7%高のダウ平均などを圧倒していた」という論理の前提が必ずしも盤石でないことがわかる。