『海に眠るダイヤモンド』なぜ神木隆之介は「一人二役」だったのか…近年まれに見る「骨太ドラマ」を読み解く

※盛大にネタバレするので、未見の方はぜひ最終話まで見てからお読みいただきたい。 

まったくの赤の他人なのに一人二役

日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』は近年では珍しい骨太なドラマだった。長崎県の端島(通称「軍艦島」)を舞台に個人の記憶とともに社会が忘却してきた炭鉱の歴史が掘り起こされ、スケールの大きな作品となった。過去と現代が交錯する複雑な構造を持つ本作で、現代を生きるホストの玲央と端島で過去の時代を生きる荒木鉄平を、神木隆之介が一人二役で演じたことも話題となった。

豪華なキャストも話題を呼んだ『海に眠るダイヤモンド』(TBSホームページより)
 

本作は、いづみ(宮本信子)が大きな看板に載った自分の顔写真に飲み物を投げつけるホストの玲央を見て、「私と結婚しない?」と持ちかけるところから始まる。突拍子もない台詞だが、かつて愛していたけれど結ばれなかった荒木鉄平の面影を、いづみが玲央に見出したことが後でわかる。そこから玲央はいづみやその家族と深く関わり、ドラマを牽引していくことになる。

視聴者は当然のことながら、鉄平に似ているという玲央の正体をさまざまに考察しSNSを賑わせた。ドラマ内でも、いづみの息子・和馬(尾美としのり)は玲央がいずみの血縁ではないかと疑い、DNA鑑定を行う。鑑定の結果がシロとわかれば、今度は昔の恋人・鉄平の血縁ではないかなど、さまざまな憶測がドラマ内外で飛び交った。

ところが最終話で、鉄平が映った8ミリフィルムの映像が映し出されると、玲央は鉄平にはさほど似ていないことが明らかになる。玲央はいづみとも鉄平とも関係のない、赤の他人だったのである。

にもかかわらず、端島で展開される過去パートの鉄平は、なぜ玲央の顔で登場するのだろうか。また、玲央はなぜ他人とわかってもいづみに寄り添い続けたのか、そしてどのように鉄平の失踪の真相に辿り着くことができたのか。ここでは、それらの謎を解いた上で、本作で重要な役割を担う鉄平の日記の意味を改めて考えてみたい。

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