2014.08.24

成果に応じた新たな賃金制度導入へ
政府の成長戦略の目玉 「歯止めなき長時間労働」の懸念も[残業代ゼロ]

労働者の賃金制度が変わろうとしている。ガンバロー三唱をするメーデー中央大会の参加者=東京都渋谷区の代々木公園で4月26日

働いた時間ではなく仕事の成果に応じて賃金が決まる新たな制度の導入が決まった。経済界の意向を強く受け、首相官邸が6月末に閣議決定した成長戦略の「目玉」政策だ。対象者の枠組みは「少なくとも年収1000万円以上」で「職務の範囲が明確で高い職業能力を持つ人」。だが、労働者側にとっては「残業代ゼロ」で歯止めのない長時間労働を強いられるとの懸念は根強く、制度の詳細を詰める厚生労働省の審議会ではスタートから意見は真っ二つに分かれた。政府は来年の通常国会に労働基準法改正案を提出する方針だが、議論が難航するのは必至だ。

現在、日本の労働基準法では労働時間を「1日8時間、週40時間」と定めており、それを超えて残業すると、役員や部長などの管理監督者を除いて残業代を支払うように義務づけられている。だが、田村憲久厚労相や甘利明経済再生担当相ら関係閣僚は6月11日、職種や年収要件に該当する対象者であれば労働時間規制の適用から除外し、成果に応じて賃金を支払う新制度を導入することで合意した。導入企業は労使が合意して本人も同意すれば対象となり、労働時間を自由に決められることになる。ただし、残業代は支払われない。

これと類似した仕組みには、2007年に第1次安倍政権が導入を目指した「ホワイトカラー・エグゼンプション」がある。当時は年収要件900万円以上で管理職手前の総合職を想定したが、「残業代ゼロ」法案と世論の反発を受けて断念した経緯があった。それにもかかわらず、再び同様の「残業代ゼロ」が持ち出されたのは、経済界の意向が強く働いたためだ。

日本は先進国の中でも労働時間が長く、時間当たりの生産性が低いとされる。しかし、少子高齢化で人口減少が進み働き手も減少する中、経済の活力を維持して企業の生産性向上を図るためには、効率良く柔軟に働ける仕組みが必要との考えが経済界にある。

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