ここ数年で男女平等を力強く推進し、短期間のうちに「グローバルジェンダーギャップ」のランキングを駆け上がったフランス。本連載「フランスに探る男女連携社会の作り方」は男女の〈連携〉の在り方を同国に学ぶ。
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結婚する理由が分からない
少子高齢化が深刻な日本では、その要因に「非婚化」が挙げられることが多い。
結婚を増やせば子どもも増える、との前提で、自治体レベルで婚活をサポートする話も良く聞く。そしてそのたびに筆者は「本当にそうなのか?」と疑問を抱く。それは筆者が日本より非婚が進み、かつ出生率の高いフランスに住んでいるからだ。
2017年、フランスの新生児出生数は76万9000人、日本は94万1000人。フランスの総人口は日本の約半数だが(6677万人)、年間出生数の差は20万人にも満たない。人口1000人あたりの出生率を見ると、フランス11.5に対し日本は7.5と、フランスに大きく水を開けられている。
一方、同年の婚姻数はフランス23万3000組、日本60万7000組(出典:フランスはInsee統計、日本は厚労省人口動態統計)と、日本の方がずっと多い。人々が結婚しないフランスは、結婚する日本より、子どもが生まれる社会だと言える。
そんなことを、結婚せずに子を持ったフランス人の友人女性に話してみた。まぁね子どもは結婚なしでも作れるからねと笑った後、彼女はぼそりと呟いた。
「というか私、結婚する理由が本気で分からないのよね…」
まずフランスでは、結婚も離婚も日本より手間がかかる。そしてパクス(PACS、連帯市民協約)という、結婚より簡易な制度で成人二人が公式に世帯を作ることができる。税の優遇や各種手当てなど、享受できるものは、結婚でもパクスでも大差ない。
子ども関連の公的支援は「その子の親」だから受けられるもので、親が結婚していようがいまいが無関係。親権は両親の間柄を問わず共同が原則で、嫡出子と非嫡出子の違いも存在しない。結婚には遺産相続や遺族年金の配偶者受給資格などのメリットがあるが、若い人にはあまりにも先のことで、「そのために結婚しよう」という動機になりにくい——そう確認した上で、彼女は言った。
「どんなに愛し合っているカップルだって、明日には別の人を好きになるかもしれない。別れない保証はどこにもないのに、どうして結婚しようなんて思えるの?」
子どもの60%が、非婚カップルから産まれている
かく言う彼女は今、小学生の娘さんと二人住まい。子どもの父親と10年以上ともに暮らしたのち、結婚しないまま2年前に別れた。子どもの誕生と同時にパクスを結び、彼は結婚を望んだが、彼女は拒み続けた。
彼女も彼もフルタイムのサラリーマンで、生活費は完全折半。それでも家事育児の負担は彼女の方が大きく、その疲れから家の中がギクシャクし、共同生活を続ける意味が分からなくなったと言う。
彼女はその会話を、私の回答を待たずにこう締めくくった。
「カップルのバランスが崩れたらいつでも別れられる、やり直せると思うことが、私にはとても大事なの。一緒にいて苦しい相手に縛られ続けるなんて考えられないし、そんな家族の状態が子どもにもプラスとは思えない。だから私はこの先も結婚しないし、一生の家族と言える人は、娘だけでいいって思ってる」