11月23日、全国大会に出場した大分県日出町の小学生バレーボールチームで、男性監督の体罰問題が発覚した。バレーボール連盟は被害女児やその保護者への聴取をせずに体罰なしと認定したが、スポーツ少年団が調査し、監督は6カ月の公式試合出場禁止処分を受けた。
実は、その一方で、このバレーボールチームの保護者で「体罰の事実を外部に漏らさないように」と保護者全員に誓約書へ署名することを迫っている人がいたという。スポーツ指導での暴力を容認するばかりか、親が暴力を隠蔽しようとしたということだ。
ジャーナリストの島沢優子さんは、自身も筑波大学女子バスケットボールで全国優勝経験があり、自身も2人の母。教育現場とスポーツの現場を長く取材してきて、講演会も行っている。スポーツの現場では時折そのように「親も暴力に加担する」ようなシーンが見られるという。子どもの主体性を重んじているように「思い込んでいる」親たちの姿とは。
大人次第でスポーツは毒にもなる
スポーツは人を成長させるものだ――。
そう言ったのは、サッカー日本代表の監督を務めたイビチャ・オシムさんだ。
ところが、大人の対応次第でスポーツが毒になることもある。いや、大人が「毒にしてしまう」と言ったほうがいいかもしれない。
「子どもにサッカーなんかやらせるんじゃなかった」
電話口でそう言って泣かれたことがある。
少年サッカーの保護者である母親Yさんから相談を受けたときのことだ。
サッカーのクラブチームに所属する中学1年生の長男に対する、父親の尋常ではない過干渉が問題だった。夫はサッカー未経験者だが、息子の少年団でボランティアとしてコーチをしていたという。
・小学生時代から「スタメンで出られないならサッカーを辞めろ。プロを目指さないならやる意味がない。親が高い金を出す意味がない」と暴言を吐く。
・試合や練習後に帰宅すると「ダメ出しミーティング」。
・「サッカー選手になる努力が見られないなら」と標的を勉強に切り替え、6年生の途中でサッカーを辞めさせて中学受験をさせた。しかし無理に難関校を受けさせたため不合格となり、公立中学に通っている。
それでも、長男は父親に対し一切逆らわない。今は公立中学校のサッカー部に参加している。